小規模マンションの建替えを実現するには?事例も紹介

更新日:2024年2月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

都心には、高経年の小規模マンションが多くあります。その中には、老朽化等から、再生が必要なマンションも多数あると思われます。しかし、小規模マンションの再生には固有の課題があります。
本記事では、小規模マンションの建替えを実現するためのポイントや事例について、マンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。

小規模マンションに固有の課題とは?

――小規模マンションに固有の課題について教えてください。

まず、小規模マンションについて公式な定義はありません。当社では30戸以下のマンションを小規模マンションに分類しており、その前提でお話しします。

課題としては大きく2つあります。

1つ目は、区分所有者が少ないため、少人数の非賛成でも建替え決議が不成立になるリスクがあることです。建替え決議は「区分所有者の5分の4以上」かつ「議決権の5分の4以上」で成立します。つまり、20戸のマンションであれば5人の反対で不成立になるため、大規模マンションよりも1票の持つ影響が大きくなります。

■単棟のマンションを建替える場合の要件

2つ目は、推進体制の問題です。小規模マンションでは、予算や業務の負担から、理事会での再生検討が難しい場合があります。一般のマンションでは、理事会とは別に、専門委員会で検討するケースがありますが、小規模マンションでは、理事会とは別の組織を立ち上げることも難しくなります。

――課題を踏まえ、建替えの検討を進める際のポイントを教えてください。

一般のマンションであれば、検討の初動期は理事会や委員会によって、自走することも考えられますが、小規模マンションでは、上記の理由から、早めに事業協力者等のサポートを受けることが現実的だと思われます。

小規模マンションの建替え手法は?

――小規模マンションの建替えで事業手法を選択するポイントは?

建替え事業の進め方としては、マンション建替円滑化法(※1)による権利変換方式と等価交換事業の2つがあります。

マンション建替円滑化法による権利変換方式(組合施行)の場合、区分所有者が参加する建替組合が事業の主体となります。権利変換計画等については、建替組合の決議に加え、行政の認可を得る必要があり、そのための手続きや時間が必要です。また、住戸の面積に制限があり、再取得する区分所有者が最低5名(理事3名、監事2名)必要です。
一方、等価交換事業では、所有権を一旦デベロッパーに移転し、デベロッパーが主体となって事業を進めることになります。区分所有者全員がデベロッパーと契約する必要がありますが、行政の認可が不要なので事業期間が短縮できる可能性があります。また、再取得する区分所有者の人数や、住戸面積についての制約はありません。
区分所有者数が少ない小規模マンションでは等価交換事業も有効な選択肢となりえます。

※1:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」

■マンション建替円滑化法、等価交換事業の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
権利変換計画とは?権利変換手続きの流れや内容もわかりやすく解説

小規模マンションで建替えを行った事例は?

――小規模マンションで建替えを行った事例を教えてください。

当社が参画した事例では、四谷コーポラスがあります。四谷コーポラスは日本初の民間分譲マンションでした。耐震性の不足が確認され、建物と設備の老朽化が進み、排水管の漏水が多発していたことから、再生が必須な状態でした。28戸の小規模マンションで、良好なコミュニティが維持されていましたが、区分所有者の高齢化が進んでいました。
管理組合では、再生手法として建替えを選択し、高齢化が進んだ区分所有者一人ひとりへの適切な支援を評価していただき、当社が事業協力者に選定されました。事業手法としては等価交換事業を選んだこともあり、当社の参画から4ヵ月で建替え決議の成立、建替え決議から5ヵ月での着工という短期間での建替え事業となりました。

■建替え前後の延べ床面積と総戸数
建替え前 建替え後
延べ床面積 2,290平方メートル 3,980平方メートル
総戸数 住戸28戸 住戸51戸

■四谷コーポラスの建替え事業について詳しくは下記のページをご覧ください
四谷コーポラス建替え事業 | 建替え実例集 | 旭化成マンション建替え研究所

――小規模マンションで考えられる他の選択肢はありますか?

立地に恵まれたマンションの場合、区分所有建物以外への建替えを前提にしたマンション敷地売却制度の利用も選択肢になると思われます。
他にも隣接地との共同化による建替えが考えられます。共同化によって敷地面積を増やす、敷地を整形化することなどで、より大きな建物の建築が可能になる場合があります。

当社が参画した、隣接地との共同化による建替え事例としては、ビレッタ朝日があります。ビレッタ朝日は10階建ての民間分譲マンションで、従前マンションは容積率を使い切っており、敷地も不整形であったことから、建替えによる床面積の増加が見込めない状況でした。当社が事業協力者として参画し、隣接地5区画との共同化による建替えを実現しました。

■ビレッタ朝日の建替え事業について詳しくは下記のページをご覧ください
ビレッタ朝日建替え事業 | 建替え実例集 | 旭化成マンション建替え研究所

小規模マンションでは、固有の課題があると同時に、複数の選択肢が考えられます。最適な選択肢はそれぞれのマンションによって異なるため、まずは専門家に相談することをお勧めします。
マンション建替え研究所では、無料のセミナーやオンライン相談も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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