築50年のマンションはあと何年住める?問題点や再生方法を解説

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

現在、ご自身の所有しているマンションが築50年を超えている場合、今後何年くらい住み続けられるのか、安全性はどうなのか、気になることが多いのではないでしょうか。
本記事では、築50年を超えるマンションの懸念点を整理した上で、マンションの寿命や今後の選択肢について紹介し、マンションを所有し続けたいと考えている人へ築50年マンションの再生方法について解説します。
なお、本記事では便宜上、築年数が50年を超えたマンションのことを築50年マンションと表現しています。

築50年マンションの懸念点と課題

築50年マンションの懸念点について整理します。大きくは老朽化・陳腐化と耐震性の3点です。
さらにこれらの懸念点を解決するために、再生を検討するにあたっては、区分所有者の合意形成が難しいという課題もあります。詳しく見てみましょう。

老朽化・陳腐化している

築50年マンションの懸念点としてまず挙げられるのが、老朽化・陳腐化です。
築50年マンションが建設されたのは、分譲マンションが一般化した1970年代です。適切に管理されているマンションもありますが、多くのマンションでは老朽化が進み、建物の防水(屋上)と外壁の剥落や、給排水管からの漏水などで安全性や生活に支障が出てくる可能性があります。

■老朽化した外壁の例

老朽化とあわせた懸念点として挙げられるのが、現在の生活様式とは合わない陳腐化です。今の新築マンションとは異なり、天井の高さは低く、床の厚みも薄いため、上下階の音が伝わりやすい構造である可能性があります。構造に関する事項以外にもオートロックが設置されていないなど、セキュリティにも不安があります。
さらに、エレベーターがない、共用部や室内に段差がある、車いすが通れないなど、バリアフリーが確保されていないといったことも特徴です。

耐震性に不安がある

1981年以前に建てられたマンション(旧耐震マンション)は、現行の法律が求める耐震性が確保されていない可能性があります。
国土交通省も、「住宅・建築物の耐震化について」という文書にて、古い耐震基準で建てられた建物についてはまず耐震診断を実施し、耐震性が不十分な場合は耐震改修もしくは建替えを検討するよう推奨しています。

■耐震基準の確認方法について詳しくは下記の記事をご覧ください
新耐震基準はいつから?マンションの耐震基準の確認方法を解説

管理組合としての合意形成が難しい

上記のような老朽化や耐震性への不安といった課題を解決するためのマンション再生の実施には管理組合としての意思決定が必要ですが、そのためには、さまざまな状況やマンションの将来についての考えを持つ区分所有者の皆様が納得するための合意形成が肝要となります。
例えばファミリータイプのマンションの場合、新築当時は実際に購入した区分所有者が家族で住んでいることが多く、居住者の構成はどこも似通っています。しかし、同じマンションが築50年ともなると高齢化が進み、区分所有者は居住せずに賃貸になっていたり、空き家になっていたりします。
高齢を理由に変化を望まない居住区分所有者がいる一方で、賃貸している区分所有者は建物の現状への関心が薄いなど、区分所有者の考えがバラバラであることは珍しくはありませんし、相続や売買によって区分所有者を把握できていないケースもあります。

築50年マンションを再生し、快適なマンションとして再生するためには超えなければならないハードルがあることを認識しておきましょう。

築50年マンションの寿命は?

築50年マンションの懸念点について振り返りましたが、実際のところ、あと何年くらい住めるものなのでしょうか。法定耐用年数や建替えを行ったマンションのデータといった情報をもとに、マンションの寿命について考えてみます。

法定耐用年数ではマンションの寿命を測れない

鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションの法定耐用年数は47年となっていますが、法定耐用年数は本来、税法上の減価償却を算出することを目的に定められているだけで、マンションの物理的な寿命とは直接的な関係がありません。

建替えをしたマンションの多くは築40~50年で実施

マンションの建替えは、その多くが築40~50年で実施されています。
「マンションの竣工年から建替え物件が竣工するまでの期間」を調べた東京カンテイの2020年調査「マンション建替え寿命・面積変化」によれば、全国で一番多かったのは「築40年以上50年未満」の34.4%でした。
建替え理由にはさまざまありますが、多くは築40~50年で実施されていることを鑑みると、この年数で前述のような老朽化・陳腐化・耐震性など何かしらの問題を抱えているため、ほとんどの築50年マンションでは、何もせずにそのまま住み続けることは難しいと考えられます。建替えを含めた再生について検討する時期といえるでしょう。

では、築50年マンションにはどのような再生の選択肢があるのでしょうか?次項で詳しく解説します。

築50年マンション、再生の選択肢

老朽化や耐震性が問題となる古いマンションの将来性はどのように考えるべきなのでしょうか。ここからは築50年マンションの再生の選択肢について解説します。
築50年マンションの管理組合としての再生の選択肢としては「改修」「建替え」「マンション敷地売却(※)」の3つです。

※マンション敷地売却には「特定要除却認定」が必要です。

耐震改修を実施する

改修(共用部分の変更)には増築や共用部の変更、耐震改修等があります。本記事では耐震改修について説明します。
耐震改修は地震の揺れに対して弱い部分を補強することです。
耐震診断を行い、マンションの耐震性に問題があると診断された場合に、新耐震基準で建てられた建物と同程度の耐震性を確保するために行います。

耐震性が不足しているマンションにおける耐震改修には、マンション管理組合総会での決議が必要です。耐震改修の場合、耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)の特例によって特別決議ではなく普通決議で実施可能です。
しかし、区分所有法の規定により、特別な影響を受ける区分所有者の承諾は必要です。例えば、ベランダにブレース(筋交い)を設置する場合、該当する区分所有者の承諾がないと、工事は実施できません。

■ブレース(筋交い)の例

新しいマンションに建て替える

マンション建替えは、現在のマンションを解体し、新しいマンションを建てることです。
建替えを決定する方法については、全員合意による方法と区分所有法に定める建替え決議による方法がありますが、いずれの場合もさまざまな考えを持つ区分所有者の皆様から必要な同意を得ることは容易ではありません。建替え合意後の進め方には、マンション建替円滑化法による権利変換方式と等価交換方式があります。それぞれの方式にはメリット・デメリットがありますので、そのマンションや管理組合の状況に応じた選択が必要です。

■建替え決定までの流れについて詳しくは下記の記事をご覧ください
マンション建替え検討のタイミングとは?建替え要件や流れも解説

■権利変換方式と等価交換方式のメリット・デメリットについて詳しくは下記をご覧ください
権利変換計画とは?権利変換手続きの流れや内容もわかりやすく解説

マンション敷地売却制度を利用して売却する

マンション敷地売却制度は、総会の決議によって建物と敷地を一括して売却する仕組みです。
マンション敷地売却制度を利用するには、行政による「特定要除却認定」と「買受計画の認定」を受ける必要があります。その後実施するマンション敷地売却決議は区分所有者数と議決権に加えて敷地利用権の持ち分価格の5分の4以上の賛成で成立します。

■マンション敷地売却制度について詳しくは下記の記事をご覧ください
マンション敷地売却制度とは?制度の概要や敷地売却の流れを解説

現状を把握して、築50年マンションの再生を考える

築50年マンションは老朽化が進み、耐震性にも懸念があります。建物の再生を考えたくても、個人の判断だけではできず、区分所有者の合意を得ることが必要です。再生には、改修や建替え、そして敷地売却といった選択肢がありますが、どの方法を選ぶのが良いかはそれぞれのマンションによって異なり、検討に当たっては管理組合単独では検討を進めることが困難なため、専門家と相談しながら進めることが、結果的にマンション再生の近道となるでしょう。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

築50年マンションの建替え事例

実際のマンションの建替えは個別事例によって条件や事情が異なります。ここでは、旭化成不動産レジデンスが建替え事業に参画した事例の一部を紹介します。

【1953年竣工 宮益坂ビルディング】→【2020年竣工】

築67年!日本初の分譲マンションの建替えを実現

  • ■建替え前 宮益坂ビルディング

    ・建物形状:地上11階 地下1階建
    ・延床面積:7,872.62平方メートル
    ・総戸数:住戸70戸/店舗・事務所44戸

  • ■建替え後

    ・建物形状:地上15階 地下2階建
    ・延床面積:1万4,553.41平方メートル
    ・総戸数:住戸152戸/店舗・事務所37戸

■宮益坂ビルディングの建替え事業について詳しくは下記をご覧ください
宮益坂ビルディング建替え事業

【1956年竣工 四谷コーポラス】→【2019年竣工】

築63年!日本最初期の民間分譲マンションを建替え

  • ■建替え前 四谷コーポラス

    ・建物形状:地上5階
    ・延床面積:2,290平方メートル
    ・総戸数:住戸28戸

  • ■建替え後

    ・建物形状:地上6階 地下1階建
    ・延床面積:2,767平方メートル
    ・総戸数:住戸51戸

■四谷コーポラスの建替え事業について詳しくは下記をご覧ください
四谷コーポラス 建替え事業

【1962年竣工 シンテンビル(左門町ハイツ)】→【2016年竣工】

築54年!建替え前よりも面積減少となったマンションの建替え

  • ■建替え前 シンテンビル(左門町ハイツ)

    ・建物形状:地上11階 地下1階建
    ・延床面積:4,068平方メートル
    ・総戸数:住戸28戸/店舗・事務所1戸

  • ■建替え後

    ・建物形状:地上6階 地下1階建
    ・延床面積:2,767平方メートル
    ・総戸数:住戸51戸

■シンテンビルの建替え事業について詳しくは下記をご覧ください
シンテンビル 建替え事業

関連コラム

新着コラム

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせは

受付時間:平日9:00〜18:00