知っておきたいマンション建替え用語集

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

マンション建替えでは、日常では耳にしない専門用語に接することがあります。
お問い合わせいただくことが多い、いくつかの用語について解説します。

売渡し請求

売渡し請求とは建替え決議や、マンション敷地売却決議が成立した後に非賛成者に対して、行使される権利です。
建替え決議等が成立すると決議に反対や棄権をした、「非賛成」の区分所有者に対して、法律に基づいた「催告」が行われます。
催告に応じた区分所有者は、決議に賛成した区分所有者と同じ立場で、建替えやマンション敷地売却等に参加します。
一方、催告に応じなかった非賛成者に対しては、決議賛成者や建替組合(マンション敷地売却組合)等から、権利を時価で売り渡すことを求める売渡し請求が可能になります。売渡し請求が実施されると本人の同意がなくとも、所有権は売渡し請求者に移転します。

■建替え決議の詳細について詳しくは下記の記事をご覧ください。
建替え決議の特殊性と合意形成活動の重要性について解説

時価(従前資産評価)

時価とは、売渡し請求の際にも用いられる従前の区画の評価額であり、従前資産評価額とも呼ばれます。従前資産評価額は、建替え決議の前提となった事業計画をもとに計算されます。そのため同じマンションでも、建替え後の建物計画(事業計画)が違えば、従前資産評価額も変わります。
時価の計算方法は、事業計画に基づいて従前資産評価の総額が求められ、その後、区画の面積や土地持分(敷地権)の割合等をもとに各住戸に配分することになります。なお、中古売買と違い、リフォームの有無等の専用部分の状態は価格に影響しません。
従前資産評価の総額は、新しい住戸の評価とマンションの床面積で決まります。従前資産評価の総額を大きくするためには、資産価値(商品価値)が高く、床面積が大きい建物計画が必要です。

■マンション建替え事業の経済条件の考え方について詳しくは下記の記事をご覧ください。
マンションを建て替えるタイミングや流れとは?方法と費用も解説

還元率

還元率とは建替えマンションの区分所有者が、追加の費用なく取得できる区画と従前の区画の面積に対する比率のことです。還元率は法律が定めた用語ではありません。マンション建替えにおける還元率は、建替えでの経済条件の指標として用いられます。還元率はパーセントで示され、建替えを前提に評価された資産価格(従前資産評価額)で新マンションの区画を取得する際に、取得可能な区画の面積と従前の区画面積との比率を指します。
例えば、50平方メートルの区画を持つ区分所有者が、新しいマンションで追加の負担なく50平方メートルの区画を取得できる場合、50/50で還元率は100%となります。
従前資産評価で新しいマンションの区画を取得するのであって無償で取得するわけではなく、還元率は固定したものではありません。新マンションの区画は位置や方位で価格が変わりますので、取得する区画によって追加負担なく取得できる面積も変わります。例えば、10階建てのマンションの5階で50平方メートルの区画を取得(還元率100%)できる方も、10階の区画を取得する場合は40~45平方メートルとなることも考えられ、その場合の還元率は80%~90%になります。
上記のような誤解を避けるために「平均」還元率という指標が用いられる場合もあります。平均還元率とは、従前の平均的な区画の所有者が建替え後の平均的な区画を取得する場合の比率です。指標としての意味はありますが、実際の住戸選定で、そのような選択をするケースはあまりありません。

■マンション建替え事業の経済条件の考え方について詳しくは下記の記事をご覧ください。
マンションを建て替えるタイミングや流れとは?方法と費用も解説

転出・再取得

転出・再取得とは、建替えに参加する際の区分所有者の皆様の選択肢のことです。(法律用語ではありません。)建替え事業に参加する(建替え決議に賛成する・決議後の催告に応じる)場合、「区画を取得せず従前資産評価相当の金額を受け取る」(転出)と、「新しいマンションで区画を取得する」(再取得)の2種類の選択肢があります。なお、転出か再取得かの最終判断は建替え決議後になりますので、建替え決議時点で、転出か再取得か、再取得する区画について決める必要はありません。また、区分所有権の帰属(再建マンションでの住戸の選定)については、区分所有法(※)によって「衡平を害しない」ことが求められます。(決議時点では、建替えに参加する区分所有者が確定していないので、建替え決議以前に一部の区分所有者の取得住戸を確定することは「衡平を害する」と考えられます。)
※:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」

権利床・保留床

権利床・保留床とは建替え後のマンションの区画に関する呼び名です。
区分所有者の皆様が取得する区画のことを「権利床」と呼び、それ以外を「保留床」と呼びます。保留床は、事業協力者(参加組合員)等が取得し、その対価として参加組合員が支払う負担金は事業費に充当されます(マンション建替円滑化法(※)による)。通常、区分所有者が先に権利床を選び、残った保留床を参加組合員が取得します。保留床取得条件等については、建替組合と参加組合員が締結する「組合参加契約」で定められます。
※:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」

旧耐震基準

旧耐震基準とは1981年の建築基準法改正以前の耐震性(地震に対する建物の強度)に関する基準のことです。
建築基準法では、建物の耐震性についての規定があります。1981年に定められた現行の基準は「新耐震基準」と呼ばれ、それ以前の基準は「旧耐震基準」と呼ばれています。旧耐震基準の建物は、新耐震基準が求める耐震性を確保できていない可能性があります。旧耐震基準の建物では、耐震診断を実施することで、新耐震基準が求める耐震性が確保されているかの確認が可能です。マンションの場合、国交省は「必要に応じて耐震診断を実施し、専門委員会等において検討している」ことを管理組合の「標準的な対応」としています(※)が、耐震診断の結果は、マンションの資産価値にも影響するので、実施にあたっては慎重な対応が必要です。
※:平成17年 国土交通省「マンション管理標準指針」https://www.mlit.go.jp/common/001080787.pdf P11 より

■耐震基準について詳しくは下記の記事をご覧ください。
新耐震基準はいつから?耐震基準の確認方法とマンション再生の選択肢

建替組合

建替組合とはマンション建替円滑化法による組合施行の場合に建替え決議後に行政の認可を受けて設立される組織です。建替え決議を実施する管理組合とは別の組織で、建替え決議後に「定款」「事業計画」を定め、建替え参加者の4分の3以上の同意を得て、行政に申請し、認可を受けて設立されます。この建替組合が、参加組合員(デベロッパー等)との組合参加契約や建築工事に関する契約を含めた、建替えに関する契約の当事者となります。また、権利変換計画等、建替え事業に関する重要な意思決定は、建替組合の総会での特別決議が必要となり、決議の際の成立要件(議決権と専有部分の持ち分割合)も法律によって定められていますので注意が必要です。

■マンション建替円滑化法について詳しくは下記の記事をご覧ください。
マンション建替円滑化法とは?建替えや要除却認定に関する規定をわかりやすく解説

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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