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マンション再生の基礎知識

マンション建替えの進め方は?

高経年マンションではどんな問題が起きるのか、どんな解決策(選択肢)があるのか。
そして建替えを選んだ場合、どんなステップが必要なのか。マンション建替えの進め方を解説します。

  • 1.再生ニーズの発生
  • 2.管理組合で再生検討
  • 3.建替え推進決議
  • 4.事業協力者の決定
  • 5.建替え決議
  • 6.マンション建替組合を設立
  • 7.権利変換計画の認可
  • 8.施工再建マンション建設工事着工
  • 9.マンション竣工
  • 10.施工再建マンションへの入居

1. 再生ニーズの発生

高経年マンションにはさまざまな課題があります。
代表的なものとして以下があり、管理組合としての対応が必要です。

1. 耐震性の懸念
1981年の建築基準法の改正以前の耐震基準(旧耐震基準)で設計された建物は、現行の建築基準法が求める耐震基準を満たしていない可能性があります。
2. 物理的老朽化
建物の躯体や防水、給排水等の配管の老朽化があります。配管の劣化による漏水が発生した場合は、該当する区画だけでなく下階や周辺の区画にも被害が出る場合があります。
3. 社会的老朽化
建築当時は最新の間取りや設備であった建物も、ライフスタイルの変化や技術の進歩により、陳腐化することで居住性や資産価値の低下を招きます。例えば、天井高さや区画の広さの不足、セキュリティ(オートロック等)・バリアフリー(専用部・共用部の段差等)の不備、断熱性(サッシュ性能や断熱材)や遮音性(床や壁の性能)の不足などがあります。

高経年マンションの課題

  • 1.耐震性の懸念

    • 旧耐震基準新耐震基準の違い
  • 2.物理的老朽化

    • ・漏水事故の原因となる給排水管の劣化
    • ・コンクリートの劣化や鉄筋の腐食による外壁の剥落
  • 3.社会的老朽化

    • ・現在の水準以下の広さ天井高さ床・壁厚さ
    • 防犯対策バリアフリー対応が不十分なマンション

※中地震:震度5強程度、強地震:震度6強~震度7程度
出典:国土交通省HP https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/taishin/jisinnbousaisuisinkaigi/jisinnsiryou3.pdf

2. 管理組合で再生検討

高経年マンションの課題に対応する方法としては、「修繕」(新築時の機能や形状の回復)「改修」(構造・設備の追加・改良)や「建替え」等があります。またマンション建替円滑化法が定める一定の要件を満たした場合には、行政による認定(特定要除却認定・要除却認定)を受けることでマンションと敷地を一括売却する「マンション敷地売却」、団地の一部を分割する「敷地分割」や容積率緩和制度の利用も可能です。
採用する手法ごとに得られる効果や関係する法律も違います。また、修繕・改修が、建物の規模や工事の内容が類似していれば必要な費用も近い数字になることに較べ、建替えの場合はマンションの立地や建築に関する規制(容積率・高さ規制等)、利用可能な制度(マンション建替円滑化法による容積率の緩和特例、総合設計)等の条件によって、区分所有者の皆様の負担(経済条件)も全く違う結果になるので注意が必要です。
改修や建替え等の、マンションの再生では手法ごとに、「建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」)」「マンション建替円滑化法」「建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下「耐震改修促進法」)」等によって規定があり、適用の条件や管理組合集会(総会)での決議成立要件※(普通決議・特別決議)が違います。集会で決議が成立しても、手続きや議案内容等に不備(法的な瑕疵)があれば、決議が無効になるリスクもありますので、該当する法律を理解し、不備なく手続きを進めることが求められます。

※修繕と形状・効用の著しい変更を伴わない改修及び改修は「普通決議」、形状・効用の著しい変更を伴う改修は区分所有者と議決権の3/4以上の特別決議、建替えは区分所有者と議決権の4/5以上の特別決議となります。耐震性能が不足するマンションの耐震改修は「耐震改修促進法」の規定により普通決議による実施が可能です。(特別の影響を受ける区分所有者の個別の承諾は必要です。)

マンション再生の主な選択肢

  • 老朽化や機能低下が比較的軽微で
    設備や部材の修理、取替などで済む
    マンションの場合

    修繕

  • 耐震補強や断熱性の向上など
    建築当初以上のグレードアップが求められる
    マンションの場合

    改修

  • 修繕・改修だけでは
    解決できない問題がある
    マンションの場合

    建替え

  • 耐震性の不足等により
    特定行政庁から除去の必要の認定を受けた
    マンションの場合

    マンション敷地売却

3. 建替え推進決議

マンション再生の検討に当たっては、管理組合としての意思決定が必要な場合があります。再生方針(建替えや改修等)の決定、専門委員会の設置(管理規約によって理事会による設置が認められている場合もあります)、専門家への業務の発注、事業協力者(デベロッパー等)との契約等に関しては総会で承認を受けることが一般的です。
これらを「建替え推進決議」と呼ぶこともありますが、法律が定める決議ではないので、議案の内容や手続きに関して区分所有法による制約はなく、通常の議案と同様の手続き(普通決議、管理規約に別段の定めがある場合を除く)によって承認を受けることになります。また、1回の決議とはせず、意思決定の事項ごとに決議を実施することも可能です。
再生に関する重要な決議になりますので、法律上の要件ではありませんが、区分所有者の皆様から十分な理解を得るために、決議の前には説明会等を実施することが一般的です。

4. 事業協力者の決定

建替え決議の際には、新たに建築する建物の設計の概要や建替えに関する費用の概算額等の「事業計画」が必要になります。建替え決議後に事業計画が大幅に変更された場合には、決議の有効性が問われる事態も考えられるので、事業計画は大変重要ですが、管理組合が単独で作成することは現実的ではありません。事業計画に必要な建物計画・経済条件等の検討については「事業協力者」のサポートを受けながら進めることが一般的です。
事業協力者は管理組合が選定します。事業計画の作成だけでなく、区分所有者への説明や相談などの「合意形成活動」に関してもサポートを受けることが多く、選定に当たっては、実績やサポート内容等も含めた総合的な判断が必要です。(マンション建替円滑化法組合施行の場合、事業協力者は、決議成立後設立される建替組合に「参加組合員」として参加します。)

5. 建替え決議

単棟型のマンション※の場合は、区分所有者数と議決権(通常は管理規約によって定められます。)の4/5以上の賛成で建替え決議が成立します。決議が成立すると、非賛成(反対や棄権)の区分所有者に「催告」が行われ、催告に応じなかった区分所有者の権利は「売渡し請求」によって買い取られることになります。(売買契約と違い、売渡し請求に区分所有者の同意は不要です。)
区分所有法では、建替え決議の2ヶ月前の招集、1ヶ月以上前の説明会の実施、議案の内容、通知すべき事項等、建替え決議に関する手続きが定められており、不備(法的瑕疵)がある場合は、成立した決議が無効になる可能性もあります。
なお、建替え決議時の建物計画や事業計画は概要であり、確定したものではありません。建替え決議後に、建替え参加者の意向を確認の上で、計画を確定します。(建替え参加者や住戸の取得に関する意向が確定していない建替え決議時点で建物計画を確定することは、現実的ではありません。)

※団地の建替えについては別途規定があり、議決権の考え方も単棟の場合とは違います。

6. マンション建替組合を設立

マンション建替円滑化法による組合施行の場合、建替え決議が成立すると、建替え参加者が設立した建替組合が建替え事業の主体となります。(建替え決議非賛成者への催告以降、管理組合は建替え事業に関与しません。)
建替組合は建替え参加者5名以上が「発起人」となって、「定款」と「事業計画」を定め、建替え参加者の3/4以上の同意を得て、行政に設立の認可を申請します。マンション建替円滑化法によって、定款に定める事項が指定され、事業計画は建替え決議に適合した内容であることが求められます。(発起人による、事業計画の恣意的な変更は不可能です。)
デベロッパー等の事業協力者は、定款によって参加組合員と定められ、「組合参加契約」を締結し建替組合に参加することになります。また、建替組合の役員は、上記の発起人とは別に、建替組合成立後に選定します。

7. 権利変換計画の認可

マンション建替円滑化法を利用した建替えの場合、従前マンションの権利は行政の認可を受けた権利変換計画に従い一括で新マンションに移動します。また、権利変換計画は行政の認可を受けることで、区分所有者の皆様の納得を得やすいというメリットもあります。
転出や再取得(誰がどの区画を取得するか)等の区分所有者の皆様の権利の取り扱いは権利変換計画で最終決定します。(建替え決議時点では決定しません。)
権利変換の場合、抵当権の移動も可能ですので、等価交換のように抵当権の抹消(返済)は不要です。また、権利変換はいわば権利の移動であり、名義の変更はできません。建替えを機に親族との共有等を考えている方は、事前に登記の変更が必要です。
なお、権利変換計画は組合員の議決権と持ち分の4/5以上の賛成で(建替組合と参加組合員は除外されます)成立し、その後行政の認可を受け確定しますが、同意しなかった区分所有者の権利は売渡し請求の対象となります。

8. 施工再建マンション建設工事着工

9. マンション竣工

10. 施工再建マンションへの入居

マンション建替えQ&A

マンション建替えには長期間必要?
過去には、建替え決議後の訴訟リスクを避けるため全員合意を目指す等の理由で、建替え実現までに10年以上の期間を要した事例もあったようです。しかし、区分所有法やマンション建替円滑化法等の整備が進められた結果、現在では、建替え決議後の事業の中断や頓挫のリスクはほぼなくなりました。そのため、マンション建替えでは、建替え決議が成立すれば、ほぼスケジュールの目途が立つと言えます。
再生の発意から建替え決議までの期間は、マンションや管理組合の状況によってさまざまですが、年単位での期間を要しているようです。建替え決議は区分所有者数と議決権の4/5以上の賛成で成立します。(区分所有法62条、単棟マンションの場合)4/5の同意を得るためには、さまざまな事情や要望を持つ区分所有者の皆さまに納得していただくための「合意形成活動」が必要であり、合意状況よって、建替え決議までの期間が大きく変わります。
マンション建替えの合意形成活動には、専門知識や固有のノウハウが必要であり、管理組合(区分所有者)だけで進めることは現実的ではありません。信頼できる専門家のサポートを受けることが有効です。
マンション建替えの際に借家契約はどうすれば
建替え決議が成立した場合、決議に賛成せず、その後の催告にも応じない区分所有者に対しては「売渡し請求」によって権利の買取りが可能です。ただし、これらは区分所有者に対する規定であり、借家人の権利には適用できません。(特定要除却認定マンションでのみ実施可能な「マンション敷地売却決議」の場合は、権利消滅期日に借家権も消滅します。)
建替え実現に向け、借家契約を解除するためには貸主(区分所有者)と借主の合意が必要になります。協議の当事者は借主である区分所有者となり、転出に伴う条件(補償等)も含め協議することになります。借家人は区分所有者ではないため、建替え決議の当事者ではありませんが、協議をスムーズに進めるためには、再生検討の状況は共有化しておいた方が良いでしょう。建替えの検討には数年単位の期間を要することが一般的ですから、その間の契約更新時期等に借家人の方と協議することが可能です。また、契約当事者双方の合意があれば「定期借家契約」への切り替えも可能です。定期借家契約であれば、あらかじめ定められた期限で借家契約は終了します。
建替え期間中の仮住まいが心配
居住されている区分所有者で再建マンションへの再入居を希望される方は、建替え期間中の仮住まいが必要です。区分所有法の規定により、決議の招集から決議集会まで2ヶ月以上の期間が必要ですし、建替え決議成立から着工までは一定の期間がありますので、 建替え決議成立前の仮住まいの手配は現実的ではなく、建替え決議成立以降の手配が一般的です。
しかし、高齢の区分所有者を中心に、仮住まい探しや引っ越し等の手配に不安を感じる方も多くいらっしゃいますし、仮住まいに関する費用の目安を確認して、建替えの賛否を判断したい方もいらっしゃいます。区分所有者の方に安心して意思決定していただくためには、事業協力者等による、仮住まいに関する情報提供や契約・引っ越し等のサポートが有効です。
尚、建替えマンションで、再入居を含め、区画を再取得するかどうかの最終的な判断は、建替え決議時点ではなく、建替え決議成立後(マンション建替円滑化法組合施行の場合は建替組合設立認可後30日以内)となります。
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