諸外国の制度について イメージ写真

老朽化したマンションの再生については、①修繕・改修、②同一敷地での建替え、③一括売却という3つの選択肢があります。この中で、基本は①となるわけですが、建物の老朽化が著しく、修繕・改修では対応できない場合の選択肢は、②と③になるわけです。

ところで、今回の制度改正に入る前に、国レベルではマンション再生の制度作りについて様々な議論があったようですが、そうした議論の中で、諸外国の制度の研究もおこなわれていました。本節では、諸外国の制度について少しだけ紹介させていただきます。

まず、フランスやドイツにおいては、建替えや一括売却については特段の制度はないようです。基本的には石造の構造が多く、地震等の可能性も低いことから、かなりの期間にわたり建物が使われるためでしょうか?

また、アメリカやオーストラリア、シンガポールにおいては、建替えではなく、特別多数決により一括売却をできるとする制度があります。

アメリカの場合は、統一コンドミニアム法においても区分所有関係の解消と売却にかかる制度の規定があるほか、各州法においても規定があるようです。ちなみに、決議要件は、統一コンドミニアム法では80%ですが、州法では75%、80%、90%等のケースがあるようです。もっともアメリカでこの制度についての利用状況を専門家等に確認したところ、ほとんど実績はない旨のことでした。

また、シンガポールでは、築10年以内のマンションは90%で、それ以上のマンションは80%で建替えができる仕組みがあります。もっともシンガポールのマンションの大部分は、日本でいう公団住宅(HDB)であり、こちらについては別の枠組みで建替えをしている模様で、前述の規定による建替えは、日本でいう億ションに近い民間分譲マンションについて該当するようです。もっとも、地価高騰や容積率緩和等の影響から、敷地売却例はかなりの数に上っているようです。

逆に、建替えの制度があるのは、法律構成が日本法の流れの影響を受けている韓国です。もっとも韓国も日本の区分所有法に当たる法律で建替えを決議する制度があるようですが、そちらの法律を使った建替え事例は少なく、行政法の手続きで建替えを進める制度があり、その制度を利用した建替え事例がかなりの数に上るようです。