「4団地理事長」座談会

合意形成のポイント

インタビューのポイント①

女性メンバーの力が建替えをスムーズにすることも。

インタビューのポイント②

「談話室」を作ることから始めることで、区分所有者の意見を集めることに成功。

インタビューのポイント③

新しいコミュニティづくりが建替え後の課題。

高齢者、男女、コミュニティ

やはり目立つ区分所有者の高齢化

老朽化したマンションでは区分所有者の高齢化も進んでいるようですが、皆さんの団地では高齢者の方の割合はいかがだったでしょうか

宮子:国領は、ほとんど高齢者ですね。若い方はあまりいらっしゃいませんでした。

大久保:野毛山は、途中で買った方や、親から受け継いだ方もいましたけれども、そういう方もだいたいみんな60代だったんじゃないかなあ。あまり若い人はいない感じでしたね。

星野:池尻も似たような状況でしたね。

多田:私が富士見町に引っ越してきた時に、「わあ、若い方がいらした。」といわれたくらいですから、ほんとうに皆さんご高齢です。調べたら、60歳以上が54%で、いちばん多い層は70歳代でした。

内部居住の高齢者の方は、最初に買われた方々がそのまま住まわれていた、ということだったのでしょうか

多田:そうですね

国領ではいかがだったのでしょうか

宮子:もちろん何人かはいらっしゃったと思いますけれども、外部居住になって貸されていた方もいたので、内部居住の方については、高齢者はそれほど多くなかったですね。

大久保:野毛山の区分所有者は二世が多かったですから、中には40歳ぐらいの方もいましたよ。でも、私も含めそういった方は皆さん外部居住でしたから、内部居住の区分所有者はほとんど高齢者でしたね。

池尻はどうでしょう、内部・外部を問わず、最初から持たれていた方が多かった印象ですけれども

星野:そうですね。抽選の高い倍率をクリアして購入されたせいもあるのでしょうが、内部・外部を問わず竣工当時からの区分所有者の方がたくさんいらっしゃいましたし、理事会でも竣工当時から所有の方が多くいらっしゃいました。そういう意味では、内部・外部を問わず区分所有者の高齢化は進んでいましたね。

国領、調布富士見町では、女性メンバーの力が建替えをスムーズに

今日の参加者は女性二人、男性二人ですけれども、宮子さんと多田さんのところでは、特に女性の皆さんが頑張って進められた印象があります。
宮子さんからは「女性だったのでみんなが支えてくれたと」いうお話もありましたが、やはり女性の役割が大きかったのでしょうか

宮子:その通りですね。高齢の方が多いこともあって、女性の方が何かと受け入れられやすかったのでしょう。理事の中でも女性が多かったのですが、ほんとうに皆さん、よくまとまっていたという感じです。

お家を回られても、話を聞いてもらいやすいっておっしゃっていましたよね

宮子:そうですね。特に高齢者の方には女性が対応したことがよかったと思いますし、だからこそ建替えを実現できたという感じがあります。

野毛山でも、主要メンバーの中にお一人女性の方がいらっしゃいましたが、その方の存在は大きかったのでしょうか

大久保:あの方は、民生委員などもやられていて、人望や信頼が厚かったですからね。そういう女性の方が中に住まわれていたことで、非常に進めやすかった面はあります。その方が、区分所有者からのいろいろな相談に対応してくれましたからね。
男のメンバーは、僕も含めて、みんな外に住んでいるんですよ。そうしたこともあって、面識のない僕らが行ったら話を聞いてもらえないところも、スムーズに進みましたね。

合意形成活動では、女性の力が大切ということ

大久保:そうですね。ソフトに対応する面があるからだと思いますが、女性が伺った方が話を聞いてくれるんですよ。反対とはいっているけど、そうなるまでにいろんな気持ちの動きがあるじゃないですか。女性はそこを聞いてくれるから、話しているうちにコミュニケーションがとれるようになる、そんな役割が大きかったんじゃないでしょうかね。

星野さんのところも、建替え委員会とか理事会に、女性の方がいらっしゃいましたよね

星野:そうですね。池尻では、強硬な反対者の方が女性だったんですよ。そういう意味では、私でなく女性が理事長になられていたら意外とうまく行ったかもしれないですね。(笑)

「談話室」をつくることから始めた調布富士見町

多田さんところは、女性の方が中心になって活動されていた印象でしたが、いかがだったのでしょうか

多田:男性の方がいらっしゃる前でちょっといいにくいですけれど男性はご近所とのコミュニケーションについては苦手という面があると思います。以前に理事長や推進委員長を務められてきた男性の方は「僕には情報があんまり入ってこない」とおっしゃっていました。その方に私は、「それはね、しょうがないんですよ。道を歩いていて、『ねえねえ』って声をかけられるのはたいていおばさんだから、おじさんには声をかけにくいですからね。」って話していました。(笑)
工夫した点としては、集会の場で手を上げて皆さんの前で発言をすることができない方もいると気づいて、「談話室」をつくったんです。団地の茶話会です。「談話室」では、どんな話しでもとにかく話を聞くように努めました。スタッフにも、「こちらから建替えの話は絶対にしないで、ただただお話を聞いてください。」とお願いしましたし、最初の頃は旭化成さんにも「建替えの話になってしまうので入らないでください。」といって、「談話室」にはお呼びしませんでした。
そうして話を聞く時間を積み重ねていくうちに、だんだん建替えの話が出るようになってきました。「これはどうなってるの、教えてちょうだい。」って。それからですね、ここにいらっしゃる杉山さんにも来ていただいて、話をしてもらうようになりました。こういうことは、女性だからできたかなと思います。男性だと、「子供がどうの。病気がどうの。」という話を聞きつづけるのは無理でしょうからね。

談話室はどうやって思いつかれたのですか

多田:ヒントがあったんですよ。ある集会で「いまお困りのことや、こうして欲しいということはありますか。」とお聞きした時に、「ないです、全部お任せします。」と答えられた女性の方がいらっしゃいましてね。けれど、その方に後で伺ったら、「みんなの前では話せない。」ということだったんです。それで、集会で自分の意見を発表するというのではなく、世間話する中で話していただけるようにしようと思いつき、「談話室」をつくりました。

談話室のテーブルに摘んできたお花が飾ってあったり、お茶とかお茶菓子が自由に楽しめるようになっていたり、女性らしいなと思いました。そういう雰囲気なら行ってみようかなって気になりますよね

多田:お花は全部団地の庭の草ですけどね。(笑)

新しいコミュニティづくりはこれからの課題

最後にコミュニティについてお伺いしたいと思います。
建替え前の状況と、その後についてお話いただけますでしょうか。宮子さんからお願いいたします。

宮子:そうですね、国領では以前からお花見会のように季節ごとにいろいろな催しを開いていました。自治会活動も頻繁に行っていて、そうした人の輪はありましたね。

建替え後は新しい方もかなり入ってきたと思いますが、それによって少し雰囲気が変わった感じはありますか

宮子:私は自治会の役員に就いていないのでよくわかりませんが、若い方が多くなったからでしょうか、以前はなかったハロウィンなどのイベントも行われているようです。

いままでと違った新しいつながりができてきているってことなのでしょうね

宮子:そうですね。でも、新しい方の間のつながりに比べると、旧国領住宅の方たちの間でのそうしたつながりは以前に比べ少なくなったように感じます。

野毛山の場合、元々住まわれている方がすごく少なかったということがあるんですけれども、いかがでしょうか

大久保:建替え前は自主管理でしたし、毎月300円とかを集めて、会を開いたりしていました。草むしりや掃除なども、みんなで分担しあってやっていましたから、それなりのコミュニティはあったと思います。建替え後については、私は住んでいないので、残念ながらよくわからないです。

星野さん、池尻はどうでしたでしょうか

星野:そうですね、建替えの前の建物は賃貸率も高かったですし、お互いご挨拶はしますけれども、それ以上のことはなかったですね。

多田さんはいかがでしょうか、調布富士見町はコミュニティがしっかりしていた印象を持っているのですが

多田:実は、建替えが始まるまでは、ほとんど住民間の交流はありませんでした。皆さん出てこられるようになったのは、談話室をつくってからですね。「談話室では皆さんと話せて楽しい。」って、よくいわれました。いまは建設中ですけれども、「談話室は開かないんですか。」って聞かれることがあります。やっぱりそういう場所が欲しいんですよ、みんな。「建替えた後には老人会をつくってほしい。」とか、「パッチワークの会をお願いします。」とか、もういまからいろいろな要望が出ています。
市の方からも高齢者の孤立化対策についてのお話が出ていたりしますので、これからもいろいろ考えていきたいですね。お部屋があって、お茶があれば、みんな集まってきて話の輪が広がるわけですから。
まだ建物ができていないので、どうなるかはわかりませんけれども、皆さんの望みに応えられるようにしたいですね。

それはまたご入居後に、是非お話しを伺いたいと思います。

本日は、皆さん、貴重なお話をありがとうございました。
それぞれのマンションが素晴らしい「まち」と「住まい」になることをお祈りしています。