団地を建て替える方法とは?手順、実例をわかりやすく解説

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

老朽化した団地では、建替えも再生の選択肢となります。複数の棟から成り立つ団地の建替えには固有の課題があり、単棟のマンションとは異なる手続きが必要です。
今回は、老朽化した団地の課題を踏まえ、団地における建替えの進め方や実例をマンション建替え研究所 特任研究員の向田(むかいだ)が解説します。

老朽化した団地特有の課題とは?

――老朽化した団地特有の課題を教えてください。

団地というと公団・公社が建築した賃貸や分譲の住宅団地をイメージされる方が多いと思います。
ご質問は老朽化した団地ということですので、公団・公社による分譲団地を前提にお話しさせていただきます。
旭化成不動産レジデンス(以降、当社)が参画した団地の建替えで最も多く寄せられていた建物の課題は、バリアフリーの不備です。団地は4階または5階建てのものが多く、エレベーターを設置していないケースがほとんどでした。高齢の区分所有者にとって、階段による移動は大きな負担ですし、「買い物等の外出の機会をなるべく減らす」ことや「荷物を数回に分けて運ぶ」等の工夫をしていたという話しも聞いています。
また、高齢化の進行や、空き家の増加も大きな課題です。公団・公社が開発した団地は、勤労者や子育て世代向けの住宅という位置付けで、区分所有者本人の居住が必要でした。結果的に老朽化した団地では高齢化が進みますし、前述のバリアフリーの不備などから区分所有者が転出することで、空き家も増えていきます。かつてのニュータウンもオールドタウン化や過疎化が進むことになります。

――団地の建替えで確認が必要なのはどのようなことでしょうか

法律上の団地の定義は、1つの敷地に複数の建物を建てる「建築基準法が定める団地」と、「都市計画が定める一団地の住宅施設」があります。
団地を建替える場合に、最初に確認が必要なこととして、都市計画法上の「一団地の住宅施設」であるかどうかがあります。「一団地の住宅施設」は道路や公園の整備と同時に建物(団地)の建築が可能になることから、いわゆるニュータウン開発でよく使われた手法ですが、固有の規制がかかっており、容積率(敷地の面積に対して建物の延床面積が占める割合)等が周辺より低く抑えられている場合が多くあります。この制限を解除するためには、新たな地区計画を定める必要がありますが、地区計画は行政が定めるものですので、建替え決議の前提となる建物計画には、行政との協議が前提となります。

――都市計画法上の一団地の建替えの事例について教えてください。

当社が参画した東京都調布市の国領住宅は、都市計画法上の規制により、容積率が周辺に比べ極端に低い数値(周辺の容積率が200%のところ国領住宅の容積率は70%)に制限されていました。この制限を緩和するためには、当時前例がなかった、都市計画法上の「一団地の住宅施設」の解除が必要でした。国領住宅が建替えの検討を始めた当時、都市計画法「一団地の住宅施設」の規制を解除する手続きが定められておらず、建替えの検討は行き詰まっていました。2001年に国土交通省から「都市計画運用指針」、東京都から「東京の新しい都市づくりビジョン」が発表され、行政が地区計画を新たに制定することで、規制を解除する方法が示されました。前例のない手続きであるため、多くの困難を伴いましたが、国領住宅はこの手法による全国で初の団地建替え事例となりました。

■国領住宅について詳しくは下記をご確認ください。
国領住宅建替え事業 | 建替え実例集 | 旭化成マンション建替え研究所

――都市計画法上の規制を解除する必要のない団地もありますか?

はい。「一団地の住宅施設」の指定を受けていなければ、当然解除の手続きは不要ですし、前述のとおり、ニュータウン開発による団地等を除けば、一団地の住宅施設の指定を受けている団地はあまりないと思われます。
例えば、当社が参画した給田北住宅は、一団地の住宅施設の指定を受けていない団地の建替えでした。
ちなみに、マンション建替円滑化法(※)にもとづく容積率緩和の措置を受けた団地として全国初の事例となります。
※:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」

団地を建て替える方法と区分所有法が定める要件は?

――団地を建て替える方法と要件を教えてください。

団地の建替えには、すべての棟(建物)を取り壊して建て替える一括建替えと、一部の棟のみを建て替える部分建替えがあります。ただ、実例として部分建替えの例はあまりなく、全棟一括建替えがほとんどです。
区分所有法(※)が定める団地の一括建替え決議や建替え承認決議については、利用可能な団地について制約があります。区分所有法では、全棟一括建替えは70条の一括建替え決議、部分建替えは69条の建替え承認決議に規定されています。いずれも、団地全体の敷地が区分所有者全員の共有であることが条件ですので、団地であっても棟ごとに土地が分かれている(それぞれの土地は該当する棟の区分所有者のみで共有)などの理由で、団地の敷地が区分所有者全員で共有されていない場合には適用されません。また、一括建替え決議については、上記に加え、団地内の建物がすべて区分所有建物であることも条件になります。団地内に区分所有建物でない建物がある場合には一括建替え決議は実施できません。当社が参画した池尻団地での建替えでは、団地内に区分所有建物ではない店舗が存在したため、一括建替え決議が実施できませんでした。
※:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」

■池尻団地について詳しくは下記をご確認ください。
池尻団地建替え事業

建物の老朽化は基本的に団地全体の課題だと思いますので、改修や建替えなど再生方法についても団地全体で決定する方が自然だと思います。過去の建替え事例でも、震災により団地の一部の棟のみが損傷したケースを除いて、部分建替えを実施した事例は聞いていません。

――マンション建替円滑化法の改正は団地にも影響があるのでしょうか

マンション建替円滑化法の改正により、耐震性の不足などによって「特定要除却認定」を受けることで、団地の敷地を分割する「敷地分割決議」も可能となりました。建替えを前提にこの制度を利用する場合は、一部の棟を除外することで敷地条件が変わるため、新しい建物計画が制約を受け、全体での建替えに比べ、建替えに当たっての経済条件が悪化するケースも想定されますので注意が必要です。

■要除却認定について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
要除却認定マンションとは?認定の条件や認定を受けることによるメリットを解説

団地を建て替える手順は?

――団地を建て替える手続きについて、単棟マンションの建替えと異なる点はありますか?

団地を建て替える手続き(建替え決議)の基本的な流れ(招集手続きや議案の内容等)は、単棟マンションと同様です。ただ、建替え決議の成立要件と議決権の定義は、団地と単棟マンションでは異なります。一括建替え決議は「団地全体の区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成」と「各棟の区分所有者および議決権の3分の2以上の賛成」で成立するため、全体と各棟で集計が必要になります。また、全体の議決権は管理規約の定めに関わらず敷地の持ち分割合となります。

ここまでお話ししたように、団地の建替えには、固有の課題があります。管理組合単独での検討や手続きは現実的ではありません。団地としての課題の確認を含め、まずは専門家に相談することをおすすめします。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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