2025年区分所有法の改正でマンション再生は進む?建替え決議要件等を解説

更新日:2025年6月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

マンション再生を加速するため、区分所有法等の改正案(※1)が国会で可決されました。
区分所有法改正の背景とポイント、注意点を解説します。
※1:「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法案」
報道発表資料:マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法案を閣議決定 ~新築から再生までのライフサイクル全体を見通した取組~ - 国土交通省

区分所有法とは?

区分所有法は、マンションを含む区分所有建物の管理等に関する事項を定めた法律です。正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」です。

マンションは建物の形状から、個人の住戸にあたる「専有部分」と、エントランスやエレベーターなどの「共用部分」に分かれます。区分所有法では、共用部の改修や建替え等の再生に関するルール(決議要件等)が定められています。

区分所有法改正の背景

区分所有法は、分譲マンションが普及し始めた1962年に制定されました。その後、時間の経過とともにマンションを取り巻く状況も変わるため、1983年と2002年に改正されてきました。こうしたなかで、近年は高経年マンションの数が増加しているため、管理不全のものを中心に様々な問題が発生しています。俗にいう「廃墟マンション」のほか、敷地の一部が崩落した事例も発生しています。
こうした社会的要請を受け、マンションで管理等を円滑にすすめるために合意形成を行いやすくすること、また決まったことを進めやすくすることが求められていました。
マンションで管理や再生の意思決定をするためには、管理組合の総会の決議が必要となるので、決議を進めやすくすることが必要です。
また、建物が限界を迎えたマンションについて、再生の選択肢を増やすことも求められていました。既存の「建替え」や「マンション敷地売却」の仕組みだけでは、必要な再生を進めるには不十分であると考えられていました。
さらに、巨大災害の発生頻度が高まっているため、マンションが被災したときの対応を行いやすくする必要性も唱えられていました。

区分所有法改正のポイント

今回の改正法では、マンションの再生だけでなく、マンションの管理も含め、多くの項目で変更があります。
ここでは、マンション再生に関連する項目についてご説明します。
ポイントは大きく3つあります。
1つ目は建替え以外に「建物敷地売却」、「建物取壊し敷地売却」、「建物取壊し」「建物更新」という、再生に関する決議のメニューが新たに加わることです。
2つ目は決議要件の緩和です。
現在「区分所有者総数かつ総議決権の5分の4以上」の賛成が必要な建替え決議(※2)について、耐震性の不足等の客観的事由に該当する場合は、「区分所有者総数かつ総議決権の4分の3以上」に緩和されます。

なお、「客観的事由」とは、現在のマンション建替円滑化法(※3)の要除却認定の基準に相当する5項目と同様です。
(下記参照)
また、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外することも可能になります。
そして3つ目は、建替え決議等が成立すると、賃借人に対して、契約の終了を求めることができるようになることです。
この請求がされたとき、請求があった日から6月を経過すると、賃貸借は終了します。

※2:区分所有法62条(単棟マンション)
※3:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」

■客観的緩和事由に該当するマンションの建替え決議の場合
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区分所有法改正のスケジュールと注意点は?

国会で可決成立した改正法は、2026年の4月から施行されます。
緩和された決議要件や、新たな決議の適用が可能になるのは、法律施行後となるので、法律施行前に招集された建替え決議には適用されないことになります。
また、所在等不明区分所有者については、決議招集前に裁判所の決定を受ける必要があり、時間と費用がかかります。実際に運用が始まってみないと、見通しが立ちにくい事項です。
他にも、区分所有法の改正によって、マンション建替え円滑化法や被災マンション法(※5)等にも影響が出るので、注意が必要です。

※5:正式名称「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」

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記事監修
マンション建替え研究所
2011年4月開設。旭化成が注力してきたマンション建替え等において、検討の初期から合意形成も含めたサポートを実施。
幅広く蓄積してきた情報の集約・分析と課題抽出を行い、定期的に情報発信を行う。
マンション管理士/再開発プランナー/マンション建替えアドバイザー等の資格を持つ研究員が、専門知識を活かして活動。
・管理組合等に対する勉強会やセミナーの実施、行政等主催セミナーでの講演
・国土交通省をはじめ行政からのヒアリングに対応、メディア向け情報発信および取材対応
・建替えノウハウや事例紹介のパンフレット作成、情報分析による「マンション建替え 調査報告書」の定期的発行
所属団体:(一社)不動産協会、(一社)再開発コーディネーター協会、定期借地権推進協議会等
著書:「Q&Aマンション建替えのすすめ方」他

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