被災マンション法とは?法律の内容や被災マンション再生への効果を解説

更新日:2024年3月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

地震によって倒壊したマンションの映像等を見て、衝撃を受けた方も多いでしょう。被災したマンションの再生には固有の課題があります。震災などの大規模災害で被災したマンションの復興を目的とした法律に、被災マンション法(※1)があります。
本記事では、マンションが被災した場合に適用される、被災マンション法の概要や、被災マンション再生の課題について、マンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。

※1:正式名称「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」

被災マンション法とは?

――被災マンション法が制定された経緯について教えてください。

被災マンション法とは、政令によって指定された災害によって建物が全部滅失したマンション(※2)や、大規模一部滅失(価格の2分の1を超える滅失)したマンションの特例について定めた法律です。阪神・淡路大震災後の1995年に制定され、東日本大震災後、2013年に改正されました。

※2:全部滅失の場合、区分所有法は適用できません。

――被災マンション法の対象となる条件を教えてください。

被災マンション法は、東日本大震災や熊本地震等、政令で定められた災害で全部滅失、もしくは一部滅失したマンションが対象です。被災マンションであっても政令で定められた災害以外の場合や、被害の状態が滅失を伴わない場合は適用されません。

被災マンション法の内容は?

――被災マンション法の内容について教えてください。

被災マンション法では、マンションの被災状況によって適用される条項が違います。
マンションが全部滅失した場合、区分所有建物がなくなるため、区分所有法(※3)の適用は受けず、管理組合としての意思決定はできません。区分所有建物がなくなり、敷地の共有関係だけが残るため、民法の原則に基づけば、敷地共有者全員の合意がなければ、マンションの再建や敷地の売却はできません。被災マンション法の適用を受けることによって、敷地共有者の5分の4以上の合意(※4)でマンションの再建や敷地の売却が可能になります。

※3:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」
※4:決議要件や敷地共有者集会の招集等については被災マンション法による規定があります。

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マンションが一部滅失した場合は、区分所有法によって、管理組合集会での意思決定が可能ですが、区分所有法では復旧と建替えに関する規定しかありません。被災マンション法の適用を受けることによって、復旧や建替え決議以外に、5分の4以上の合意でマンションと敷地を一括で売却することや、建物を取り壊しての敷地売却、建物を取り壊すこと(取り壊し後は、全部滅失の場合と同様に敷地共有者にて決定します。)が可能になります。

いずれの場合も、集会の招集に際しては、行方がわからない敷地共有者や区分所有者については、敷地内の見やすい場所への掲示によって、通知することが認められます。

被災マンション法の適用を受ける場合の注意点

――被災マンション法の適用を受ける場合の注意点について教えてください。

全部滅失の場合、区分所有建物ではなくなるため、区分所有法や、管理規約は適用されません。被災マンション法に基づいて、新たに定められた管理者か、敷地共有者が共同で集会を招集し、再建や敷地売却等の対応を決定することになります。
一部滅失の場合は、管理組合として、区分所有法による復旧や建替えか被災マンション法による敷地の売却、建物の取り壊し等を決定することになります。

いずれの場合も、区分所有法に比べ選択肢が増える訳ですので、決定にあたっては、十分な検討と合意形成活動が必要です。
また、被災マンション法の適用には期限があり、政令による指定後、集会による決議まで、全部滅失の場合で3年間、一部滅失の場合は1年間という、時間的な制約があります。

前述の条件や災害後の社会的混乱を考えると、被災マンション法の適用を受けても、被災後の再生の検討は非常に負担が大きいと思われます。老朽化したマンションや耐震性が不足しているマンションでは、災害時のリスクについて組合内で共有することをお勧めします。

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記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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