マンション建替えの合意形成活動とは?流れや進め方のポイントを解説
更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ
マンション再生は管理組合総会の決議で最終決定します。マンションの将来についての重要な意思決定であり、区分所有者の皆さんが再生の選択肢について正しく理解し、納得して意思決定していただくための合意形成活動は大変重要です。今回は、建替えにおける合意形成活動について、流れやポイントをマンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。
マンション建替えにおける合意形成活動とは?
――合意形成活動は、どのように始めればいいのでしょうか。
マンション再生の主な選択肢としては、「修繕」「改修」「建替え」「マンション敷地売却」の4つがあります。(マンション敷地売却には「特定要除却認定」が必要です。)
再生方法は総会の決議で決定しますが、決議の成立には、それぞれ法律や管理規約によって定められた比率以上の賛成を得る必要があります。
■要除却認定について詳しくはこちらの記事をご覧下さい
要除却認定マンションとは?認定の条件や認定を受けることによるメリットを解説
再生方法には複数の選択肢がありますが、築年数が古いマンションでは、耐震性の不足や現在のライフスタイルに合わない間取りなど、修繕や改修では対応しきれない課題があります。これらの課題は建替えによって解決可能ですが、マンションの状況によって、建築可能な建物や区分所有者の皆さんの経済条件が大きく変わりますので、すべてのマンションで建替えによる再生を目指すことは現実的ではありません。つまり、マンションの再生方法には、すべてのマンションに共通の正解はなく、区分所有者の皆さんの意向によって決定することになります。
再生方法について、区分所有者の皆さんに納得して意思決定いただくための合意形成活動では、複数の選択肢を比較検討することから始める必要があります。
■建替えの進め方について詳しくは下記のページをご覧ください
マンション再生の基礎知識 | 旭化成マンション建替え研究所 | 旭化成不動産レジデンス
建替えにおける合意形成の難しさと、活動のポイントとは?
――建替えの合意形成は、修繕や改修の場合などと比べて難しい点はありますか?
建替えは他の再生方法と総会決議の成立要件が違います。
修繕や改修は区分所有法(※1)上の「共用部分の変更」になりますが、形状または効用の著しい変更を伴わないもの(通常の修繕工事等)であれば、区分所有法17条には該当せず、通常は総会参加者の議決権の過半数の賛成で成立します。
改修等、上記17条に該当する場合は、区分所有者総数と総議決権の4分の3以上の賛成が必要です。(耐震性が不足する建物の耐震改修については、耐震改修促進法(※2)によって成立要件が緩和されます。)
一方で、建替えは、「区分所有者総数の5分の4以上」なおかつ「総議決権の5分の4以上」の賛成が成立要件となります。求められる比率が高いことで、合意形成活動の重要性も高くなります。
※1:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」
※2:正式名称「建築物の耐震改修の促進に関する法律」
――建替えの合意形成は何から始めればいいのでしょうか?
前述のとおり、建替えはマンション再生の選択肢の一つであり、すべてのマンションで実現可能であるとはいえません。また、建替えの検討には、デベロッパー等の専門家の協力や費用も必要です。そのため、建替えの検討を始めるに当たっては、再生の選択肢として建替えを検討することについての合意形成から始める必要があります。
建物の現状を把握した上で、修繕や改修と費用や効果を比較検討し、再生の選択肢として建替えを検討することについて、区分所有者の皆さんの理解を得ることになります。具体的な活動としては、説明会の開催や区分所有者の皆さんに建物の現状への不安や希望する再生方法についてアンケートを実施することなどが考えられます。
また、耐震性に不安のあるマンションの場合は、専門家に依頼して耐震性を調査してもらい、耐震性の不足が確認された場合は、耐震補強に必要な費用を見積もり、建替えの際の負担と比較して区分所有者の皆さんの理解を得ることも考えられます。(耐震性の不足が確認された場合は「特定要除却認定」(※1)を受けることで容積率の特例の適用や、「マンション敷地売却決議」が可能となります。)
※1:「特定要除却認定」には耐震性不足以外の認定要件もあります。
■要除却認定マンションについて詳しくは下記の記事をご覧ください
要除却認定マンションとは?認定の条件や認定を受けることによるメリットを解説
――建替えに消極的な区分所有者への対応は?
区分所有者の皆さんにはそれぞれの意向や事情があり、建替えに反対の方や手続き等に不安を感じる方もいらっしゃいます。前述のとおり、マンション再生に絶対的な正解はなく、再生方法は区分所有者の皆さんの意向によって決まります。建替えについての反対も個人の意思として尊重されるべきですが、事業の仕組みや手続き、経済条件等について、正しく理解した上で判断していただくことが必要です。そのため、合意形成活動では、説明会や個別面談等を通じて十分な説明をすると同時に、建替えに消極的な方を含めた、すべての区分所有者の皆さんの意見や要望に対応することが求められます。
――合意形成活動のポイントは?
合意形成活動では、情報を一方的に伝えるだけでなく、区分所有者の皆さんの意見や要望を確認し、必要に応じて事業計画を修正することも考えられます。また、建替えに不安を感じている区分所有者の皆さんをサポートすることも大変重要です。
また、活動内容について透明性や公平性を確保することが必要です。例えば、専門委員会や理事会での検討状況や、説明会での質疑応答について、「ニュース」として区分所有者の皆さんに配布する活動等も有効です。
建替え決議成立後の合意形成活動について
――建替え決議が成立すれば、合意形成は完了となるのでしょうか?
建替え決議が成立しても、建替えの事業内容が最終決定するわけではありません。
建替え決議後には、決議に非賛成の方に対して「催告」が実施され、建替え参加者が確定します。建替え参加者の確定以降に、新しいマンションで区画を取得するか、転出するかについて意思決定していただき、再取得される方は、取得住戸を選定することになります。
また、マンション建替円滑化法(※1)の組合施行の場合は、建替え決議後に設立される「建替組合」による権利変換計画の決議の成立と行政の認可を受けて、建替え事業が正式に始まります。
建替え決議後にも、これらの手続きや意思決定のための合意形成活動が必要です。
※1:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」
■権利変換計画について詳しくは下記の記事をご覧ください
権利変換計画とは?権利変換手続きの流れや内容もわかりやすく解説
合意形成活動を、管理組合だけで進めることは現実的ではなく、コンサルタントや事業協力者等の専門家のサポートを受けながら進めることが一般的です。ただ、初動期の活動については、管理組合の予算を使えない等の制約からお困りのことが多いと思います。
マンション建替え研究所では、無料のセミナーやオンライン相談も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。
- 記事監修
- マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二 - 資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
- 旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート
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