マンション建替えにおいて利用可能な容積率の緩和特例とは?メリットや事例を解説

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

マンション建替円滑化法(※)による容積率の緩和特例は、耐震性不足等の要除却認定マンションの建替えを促すことを目的に制定されました。一方で、容積率の緩和特例が適用されるためには、「要除却認定マンション」に認定される必要があり、実際の適用にあたってはさまざまな条件があります。
本記事では、容積率の緩和特例のメリットや注意点のほか、容積率の緩和特例を利用して建て替えた成功事例などを解説します。
※:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」

容積率が緩和されると、建替え前より大きな建物を建てられる可能性がある

容積率とは、敷地の面積に対して建物の延べ床面積が占める割合のことです。延べ床面積とは、それぞれの階の「床面積」を合計した面積を指しています。容積率は「延べ床面積÷敷地面積×100」で求められます。

容積率の上限は都市計画によって決められていますが、一定の規準を満たせば、その制限が緩和されることがあります。容積率が緩和されれば、より大きな建物を建てられる可能性があります。

※現行の建築基準法では、住宅用途での廊下等の共用部の床面積は容積率の計算からは除外されます。

容積率の緩和特例に関する規定は「マンション建替円滑化法」によるものと「建築基準法」によるものがある

容積率の緩和特例に関する規定は「マンション建替円滑化法」と建築基準法が定める「総合設計制度」があります。
いずれの制度も、要綱(敷地や、新しい建物計画についての条件)が各行政によって定められています。要綱については管轄する行政によって内容が違い、定められていないこともあるため、注意が必要です。

■マンション建替円滑化法について詳しくはこちらの記事をご覧ください
マンション建替円滑化法とは?建替えや要除却認定に関する規定をわかりやすく解説

容積率の緩和特例にはどんなメリットがある?

容積率の緩和特例によって延べ床面積が大きくなることで、建替えにあたっての経済条件が改善し、区分所有者の負担の軽減につながります。

マンション建替円滑化法による容積率の緩和特例を受けるときの注意点

マンション建替円滑化法による容積率の緩和特例を受けるにあたっては、行政が定める要綱に適合することに加え、「要除却認定」を受ける必要があります。

要除却認定を受ける必要がある

容積率の緩和特例はどのマンションでも適用されるわけではなく、まず、マンション建替円滑化法が定める除却の必要性に係る認定(要除却認定)を受ける必要があります。

「要除却認定」は、耐震性や火災に対する安全性の不足、老朽化による外壁の剥落などのおそれ、また、給排水管の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれがある場合や、バリアフリー性能が確保されていないなどの5つの条件のいずれかに該当すると行政が判断する場合に認定されます。認定にあたっては専門家による調査を行い、調査結果をもとに行政に申請します。

<要除却認定マンションの対象となる条件>
・耐震性の不足
・火災に対する安全性の不足
・外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ
・給排水管の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
・バリアフリー基準への不適合

「要除却認定」を受けると、そのマンションの管理組合には除却の努力義務が課され、都道府県知事などが除却を促すように指示を行うこともあります。

■要除却認定について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
要除却認定マンションとは?認定の条件や認定を受けることによるメリットを解説

容積率の緩和特例を利用した場合の建替え手順

マンション建替円滑化法による容積率の緩和特例が適用される場合、マンション建替えはどのような手順で進むのでしょうか。大きく4つに分けて、建替えの手順を見ていきます。

<容積率の緩和特例が適用される場合の建替え手順>

1.要綱の確認
行政が定める容積率の緩和特例の要綱(敷地条件や計画条件)を確認した上で、必要に応じて行政との事前協議を実施し、制度利用のメリットがあるかを確認します。

2. 建物診断等の実施
建物診断等を実施し、要除却認定の対象となるかを確認します。この時点での要除却認定の申請は必須ではありません。

3. 建替え決議を行う
容積率緩和特例を前提とした事業計画にもとづき、マンション管理組合の総会で建替え決議を行います。

4. 建替組合設立後、容積率許可の申請を行う
建替え決議が成立した後、行政の認可を受けて建替組合を設立します。容積率緩和特例の申請は建替組合が実施します。行政との協議や近隣説明等より、建物計画の修正が必要な場合もあります。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

容積率の緩和特例を利用して建て替えた2つの事例

最後に容積率の緩和特例を利用して建て替えた事例を2つ紹介します。

【1968年竣工 メゾン三田】→【2021年竣工】

国内初のマンション建替法容積率緩和特例の適用

1968年に建設されたメゾン三田は、日本で初めてマンション建替円滑化法にもとづき、容積率の緩和特例が適用された事例です。容積率の緩和特例が適用されたことで、大幅な延べ床面積の増加が実現できました。

■建替え前後の延べ床面積と総戸数
建替え前 建替え後
延べ床面積 約6,278平方メートル 約1万3,216.95平方メートル
総戸数 67戸 111戸
  • ■建替え前 メゾン三田

    ・建物形状:地上11階
    ・延べ床面積:6,278平方メートル
    ・総戸数:住戸67戸

  • ■建替え後

    ・建物形状:地上23階 地下2階建
    ・延べ床面積:1万3,216.95平方メートル
    ・総戸数:住戸111戸

■メゾン三田の建替え事業について詳しくは下記をご覧ください
メゾン三田建替え事業

【1971年竣工 飯倉三生マンション】→【2025年竣工予定】

容積率特例許可を取得し、建替えが決定

1971年に建設された飯倉三生マンションは、建替えによる延べ床面積の増加が難しいマンションでした。そのため、まず2021年に「要除却認定」を受けました。そしてマンション建替円滑化法にもとづく容積率の緩和特例を受け、その結果、建替え前と比べると延べ床面積が1.6倍になりました。

■建替え前後の延べ床面積と総戸数
建替え前 建替え後
延べ床面積 1753.20平方メートル 2885.17平方メートル
総戸数 住戸17戸 住戸34戸
  • ■建替え前 飯倉三生マンション

    ・建物形状:地上7階
    ・延べ床面積:1,753.20平方メートル
    ・総戸数:住戸17戸

  • ■外観完成予想CG

    ・建物形状:地上17階 地下2階建
    ・延べ床面積:2,885.17平方メートル
    ・総戸数:住戸34戸

■飯倉三生マンションの建替え事業について詳しくは下記をご覧ください
飯倉三生マンション建替え事業

■マンション建替え研究所についてはこちらをご参照ください
マンション建替え研究所とは

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