築40年のマンションの将来像は?建替えを含めた再生の選択肢

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

所有しているマンションが築40年を超えてくると、気になるのは安全性や不動産としての資産価値ではないでしょうか。建物の将来像を考えると、改修や、建替えなど、再生の検討も必要になってきます。
本記事では、築40年を超えたマンションの問題点を踏まえ、マンション再生について考えられる選択肢を解説します。また、築40年を超えたマンションを建て替えた事例も紹介しますので参考になさってください。
なお、本記事では便宜上、築年数が40年を超えたマンションのことを築40年マンションと表記しています。

築40年マンションの問題点

実際に築40年マンションを所有していると、老朽化等による資産価値の低下や耐震性の欠如への不安を感じることがあるでしょう。以下で説明する問題点にいくつか当てはまる事柄があれば、管理組合としてマンションの再生について検討してみることをおすすめします。

老朽化が進んでいる

築40年マンションの問題点を確認する際、まずは老朽化について確認しましょう。
具体的には、外壁や塗装の劣化、給排水管の劣化によるトイレや台所などの詰まり、サッシの歪み、防水層の劣化などがあります。これらの問題を放置すると、安全性、快適性が損なわれるだけでなく、資産価値の低下にもつながります。

■老朽化した外壁の例

耐震性に不安がある

築40年マンションの問題点を考える上で、欠かせない要素が耐震性です。
建築基準法にもとづく現行の耐震基準は新耐震基準とよばれ、1981年6月1日に施行されました。
工期を考えると、1983年以前に竣工したマンションは旧耐震基準による建物の可能性があるので注意が必要です。
所有しているマンションが旧耐震基準で建築されている場合、耐震診断を受けることで耐震性を確認することができます。耐震診断は設計図面をベースに実施しますが、新築時の設計図面が保管されていない場合は設計図面の復元を含めた作業になるため、時間も必要で費用も高額になります。

■耐震基準の確認方法について詳しくは下記の記事をご覧ください
新耐震基準はいつから?マンションの耐震基準の確認方法を解説

築40年マンションの再生の選択肢

ここまで紹介した築40年マンションの課題を踏まえて、今後の再生方法について考えていきましょう。
築40年マンションの管理組合としての選択肢は「改修」「建替え」「マンション敷地売却(※)」の3つです。
※マンション敷地売却には「特定要除却認定」が必要です。

■要除却認定について詳しくは下記の記事をご覧ください
要除却認定マンションとは?認定の条件や認定を受けることによるメリットを解説

耐震改修を実施する

改修(共用部分の変更)には増築や共用部の変更、耐震改修等があります。本記事では耐震改修について説明します。
耐震改修は地震の揺れに対して弱い部分を補強することです。
耐震診断を行い、マンションの耐震性に問題があると診断された場合に、新耐震基準で建てられた建物と同程度の耐震性を確保するために行います。

耐震性が不足しているマンションにおける耐震改修には、マンション管理組合総会での決議が必要です。耐震改修の場合、耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)の特例によって特別決議ではなく普通決議で実施可能です。
しかし、区分所有法の規定により、特別な影響を受ける区分所有者の承諾は必要です。例えば、ベランダにブレース(筋交い)を設置する場合、該当する区分所有者の承諾がないと、工事は実施できません。

■ブレース(筋交い)の例

新しいマンションに建て替える

マンション建替えは、現在のマンションを解体し、新しいマンションを建てることです。
建替えを決定する方法については、全員合意による方法と区分所有法に定める建替え決議による方法がありますが、いずれの場合もさまざまな考えを持つ区分所有者の皆様から必要な同意を得ることは容易ではありません。建替え合意後の進め方には、マンション建替円滑化法による権利変換方式と等価交換方式があります。それぞれの方式にはメリット・デメリットがありますので、そのマンションや管理組合の状況に応じた選択が必要です。

■建替え決定までの流れについて詳しくは下記の記事をご覧ください
マンション建替え検討のタイミングとは?建替え要件や流れも解説

■権利変換方式と等価交換方式のメリット・デメリットについて詳しくは下記をご覧ください
権利変換計画とは?権利変換手続きの流れや内容もわかりやすく解説

マンション敷地売却制度を利用して売却する

マンション敷地売却制度は、総会の決議によって建物と敷地を一括して売却する仕組みです。
マンション敷地売却制度を利用するには、行政による「特定要除却認定」と「買受計画の認定」を受ける必要があります。その後実施するマンション敷地売却決議は区分所有者数と議決権に加えて敷地利用権の持ち分価格の5分の4以上の賛成で成立します。

■マンション敷地売却制度について詳しくは下記の記事をご覧ください
マンション敷地売却制度とは?制度の概要や敷地売却の流れを解説

築40年マンションが抱える問題を解決し、暮らしの質を高めよう

築40年マンションには、耐震性をはじめとした老朽化に関する問題のほか、資産価値の低下など将来的な問題もあります。再生には、改修や建替え、そしてマンション敷地売却といった選択肢がありますが、どの方法を選ぶのが良いかはそれぞれのマンションによって異なり、検討に当たっては管理組合単独では検討を進めることが困難なため、専門家と相談しながら進めることが、結果的にマンション再生の近道となるでしょう。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

築40年マンションの建替え事例

ここで、築40年マンションの建替え事例をご紹介します。旭化成不動産レジデンスが手掛けた建替え事業により、築40年を超えるマンションが再生された実例です。

【1961年竣工 宇田川住宅】→【2013年竣工】

区分所有者の異なる意見をとりまとめ、全員の賛成で決議が成立
住む人の理想を叶える建替えが実現

  • ■建替え前 宇田川住宅

    ・建物形状:地上7階 地下1階建
    ・延床面積:2,542.07平方メートル
    ・総戸数:住戸16戸/店舗・事務所1戸

  • ■建替え後

    ・建物形状:地上13階 地下2階建
    ・延床面積:6,261.57平方メートル
    ・総戸数:住戸49戸/店舗・事務所1戸

■宇田川住宅の建替え事業について詳しくは下記の記事をご覧ください
宇田川町住宅 建替え事業:渋谷公園通りに面した小規模・複合用途マンションの建替え

【1971年竣工 調布富士見町住宅】→【2015年竣工】

合意形成と自治体との協議を理事会とともに進め
一団地の廃止と公道の移設を実現

  • ■建替え前 調布富士見町住宅

    ・建物形状:地上5階建 5棟
    ・延床面積:約1万470平方メートル
    ・総戸数:住戸176戸

  • ■建替え後

    ・建物形状:地上8階・地上6階 地下1階建 2棟
    ・延床面積:約3万5,060平方メートル
    ・総戸数:住戸331戸・ガーデンカフェ・キッズルーム

■調布富士見町住宅の建替え事業について詳しくは下記の記事をご覧ください
調布富士見町住宅 建替え事業:都市計画法一団地の廃止と公道の移設を実現した建替え

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