マンション建替えで等価交換を選択するメリットと注意点は?事例も紹介
更新日:2024年4月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

建替え決議成立後の事業手法としてはマンション建替円滑化法(※1)による建替えと、等価交換による建替えがあります。
本記事では、等価交換を選択する場合のメリットや注意点、事例についてマンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。
※1:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」
等価交換による建替えの仕組みは?
――等価交換による建替えの仕組みについて教えてください。
マンション建替えの事業手法にはマンション建替円滑化法による権利変換と、等価交換の2つがあります。
等価交換の場合は、区分所有者全員が、土地建物の権利(所有権や借地権)を一旦デベロッパーに売却し、デベロッパーが主体となって建替え事業を行います。再取得を希望する区分所有者はデベロッパーから新しいマンションを購入することになります。
――マンション建替円滑化法による建替えとの違いについて詳しく教えてください。
大きくは3つの違いがあります。
1つ目は、建替え決議以降の事業の主体の違いです。マンション建替円滑化法による建替え(組合施行)の場合、建替えに参加する区分所有者が設立する建替組合が事業の主体となり、行政への申請や、工事の発注等を行います。一方、等価交換の場合はデベロッパーが事業の主体となります。
2つ目は、権利の移動方法の違いです。建替え前の権利が建替え後のマンションに移動するマンション建替円滑化法の権利変換と違い、等価交換では契約によって権利が移動します。抵当権等が設定されている場合、権利変換では、抵当権等も新しいマンションに移動することができますが、等価交換の場合は、抵当権については、返済することで抹消する必要があります。また、権利変換では、建替え前後の権利者や権利の種類は同一である必要がありますが、等価交換ではそのような制約はありません。例えば、権利変換では、借地権を所有権に変換することはできませんが、等価交換の場合は、デベロッパーが地主から底地権を購入することで所有権マンションとしての建替えが可能です。
3つ目は、売渡し請求についての違いです。建替え決議が成立すると、建替えに参加しない区分所有者に対して売渡し請求を実施する(時価相当額の支払いが必要です)ことになります。等価交換の場合は区分所有法(※2)の規定で、建替えに参加する区分所有者か、建替えに参加する区分所有者全員が指定した買受指定者が実施することになりますが、マンション建替円滑化法の場合は建替組合が売渡し請求を実施することができます。
等価交換か、マンション建替円滑化法による権利変換かは、建替え決議前に管理組合で決めることになります。手法の選択にあたっては上記の違い等を確認して判断する必要があります。
※2:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」
等価交換による建替えのメリットと注意点は?
――等価交換による建替えのメリットと注意点について教えてください。
等価交換による建替えのメリットは、大きくは2つあります。
1つ目は、「建替えの事業期間を短縮できる可能性があること」です。
等価交換による建替えではマンション建替円滑化法と違い、組合設立や、権利変換についての認可等の手続きが不要なため、新しい建物の着工までの期間を短縮できる可能性があります。
2つ目は、「建替え後の建物計画について制約が少ないこと」です。
マンション建替円滑化法による建替え後の建物は、必ずマンション(5区画以上の住戸がある建物)でなければいけません。一方で、等価交換による建替えでは、区分所有建物であれば、オフィスビル等に建替えることも可能です。さらに、マンション建替円滑化法による建替えでは、住戸面積は50平方メートル以上という原則があります。(緩和規定もあります。)等価交換の場合は、50平方メートル未満の住戸の計画も可能です。(ワンルーム条例等による制限を受ける場合があります。)
注意点としては、等価交換では、建替えに参加する区分所有者全員がデベロッパーと契約するための手間と時間が必要なことです。そのため、区分所有者数が多い団地や大規模マンションの場合には、マンション建替円滑化法による権利変換よりも時間がかかることも考えられます。
――どのようなマンションが等価交換に向いているでしょうか?
区分所有者数が少ない小規模マンションで、建替えに要する期間を短縮したい場合や、立地特性からオフィスビルや、投資用マンション等への建替えを考えている場合は、等価交換による建替えにメリットがあると思われます。
マンションによって最適な事業手法は異なります。まずは専門家に相談することをお勧めします。
マンション建替え研究所ではマンション再生に係る情報発信の他、ご質問やご相談にもお応えしています。
お気軽にお問い合わせください。
等価交換で建て替えた事例
――等価交換で建て替えた事例について教えてください。
等価交換による建替え事例を2つご紹介します。
1つ目は「四谷コーポラス」です。四谷コーポラスは28戸の小規模なマンションでした。耐震性が不足していることが確認され、老朽化も進み、排水管の漏水が多発していたことから建替えの検討が始まりました。当社の参画から4ヵ月で建替え決議の成立、建替え決議から5ヵ月での着工という短期間での建替え事業となりました。
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■建替え前 -
■建替え後
建替え前 | 建替え後 | |
---|---|---|
延べ床面積 | 2,290平方メートル | 3,980平方メートル |
総戸数 | 住戸28戸 | 住戸51戸 |
2つ目は、「グロリアスマンション」です。1971年に竣工した恵比寿駅徒歩6分という好立地で、店舗・事務所の複合用途の借地権マンションでした。
建替え前の建物は、度重なる雨漏りや排水管のつまりといった不具合が生じていました。安全性の問題からエレベーターは交換されていましたが、老朽化した建物側の原因で、度々停止するトラブルがあったこと等から、建替えの検討が始まりました。
地主が借地契約を解消したいという意向であったことから、管理組合は等価交換による所有権マンションへの建替えを選択しました。
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■建替え前 -
■建替え後
建替え前 | 建替え後 | |
---|---|---|
延べ床面積 | 2,633.06平方メートル | 4,388.79平方メートル |
総戸数 | 住戸43区画/事務所1区画/店舗4区画 | 住戸57戸 |
- 記事監修
- マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二 - 資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
- 旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート
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