マンションの改修と建替えの違いとは?再生方法を検討する際のポイントを解説

更新日:2024年2月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

マンションの老朽化が進むと、修繕では対応できない課題が生じるため、改修や建替えが再生の選択肢となってきます。しかし、改修と建替えのどちらを選ぶか、判断に困ることもあるでしょう。
本記事では、改修と建替えの違いを踏まえ、再生方法を検討する際のポイントについてマンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。

改修と建替えの違いは?

――改修と建替えの違いについて教えてください。

改修と建替えの違いは主に3つあります。
1つ目は対応できる領域の違いです。修繕は、分譲当時の初期性能の回復が目的となりますが、改修は、修繕では難しい不具合の改善や、居住性や資産価値の向上のために行います。しかし、住戸の広さや天井の高さの不足等に対応できないため、今日の一般的な住宅水準(間取りや設備・性能)のすべてを満たすことはできません。
一方で建替えは、改修では対応できない課題も含め、最新の仕様や設備のマンションに生まれ変わることができます。

■経年による老朽化と改修の効果

2つ目は決議要件の違いです。
管理組合の決議は「普通決議」と「特別決議」に分かれます。毎年の予算や理事の選任など、定期総会での議案のほとんどは普通決議で、一般的な管理規約では、過半数の議決権を持つ区分所有者が参加し、参加者の議決権の過半数の賛成があれば成立します。
一方、改修と建替えの決議は特別決議です。
改修は「区分所有者総数かつ総議決権の4分の3以上」の決議で成立します。建替えは、「区分所有者総数の5分の4以上かつ総議決権の5分の4以上」です。普通決議と比べて成立のハードルが高く、合意形成活動が必要となります。

■建替え決議について詳しくは下記のページをご覧ください
建替え決議の特殊性と合意形成活動の重要性について解説

3つ目は、決議後の手続きの違いです。
建替えの場合は、建替え決議が成立すると、決議に賛成しなかった区分所有者に対して改めて建替えへの参加の意思を確認する「催告」という手続きが行われます。催告に応じない区分所有者には、「売渡し請求」を実施することで、事業を進めることができます。
一方、改修については総会決議以外に、区分所有法(※1)によって、特別の影響を受ける区分所有者の承諾を求められます。例えば、耐震改修でベランダに耐震ブレースを設置する場合、該当する区画の区分所有者の承諾を得ないと工事は実施できません。
決議の成立要件だけを見れば、建替えのほうが合意形成のハードルが高いように見えますが、改修が簡単というわけではないのです。
また、一部の改修工事については行政の許可が必要です。耐震改修の場合、耐震改修促進法(※2)により、許可の条件が緩和されますが、それ以外の改修(エレベーターの設置等)について、同様の規定はありません。

※1:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」
※2:正式名称「建築物の耐震改修の促進に関する法律」

■「催告」と「売渡し請求」について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
知っておきたいマンション建替え用語集

再生方法を検討する際のポイントは?

――どのような場合に建替えが選択肢となるのでしょうか。

著しい老朽化等、改修では対応できない課題のあるマンションでは、建替えやマンション敷地売却が選択肢となるでしょう。
なお、建替え決議に際しては、「効用の維持または回復に要する費用」、つまり改修の概算額を示さなければなりません。いずれの再生手法を選ぶ場合も、区分所有者の皆さまに経済条件を示して、合意形成を進めることになりますが、建替え(マンション敷地売却)の場合は、立地等によって区分所有者の負担(経済条件)が大きく変わるため、改修以外の再生のほうが区分所有者の納得を得やすいことも考えられます。

■建替えの経済条件について詳しくはこちらの記事をご覧ください
マンションを建て替えるタイミングや流れとは?方法と費用も解説

■マンション敷地売却について詳しくはこちらの記事をご覧ください
マンション敷地売却制度とは?

改修と建替えの比較を、管理組合だけで実施するのは難しいでしょう。再生方法の検討にあたっては、専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
マンション建替え研究所では、無料のセミナーやオンライン相談も実施しておりますので、お気軽にご相談ください。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

関連コラム

新着コラム

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせは

受付時間:平日9:00〜18:00