建替え決議の特殊性と合意形成活動の重要性について解説

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

マンションを建て替えるためには、区分所有者全員の合意を得るか、区分所有法(※)が定める建替え決議を実施し、法律が定める基準以上の賛成を得る必要があります。
今回は、建替え決議とほかの総会決議との違いと、決議成立に向けた合意形成活動の重要性について、マンション建替え研究所・特任研究員の向田が解説します。
※:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」

建替え決議はほかの総会決議と何が違う?

――建替え決議は、通常の決議と何が違うのですか?

管理組合総会の決議は、通常の議案の場合、招集手続きや議案の成立要件は、管理規約によって定められますが、建替え決議やマンション敷地売却決議等については、区分所有法やマンション建替円滑化法(※1)によって必要な手続きや成立要件が定められています。 国土交通省が作成したマンション標準管理規約(一般的な管理規約は標準管理規約に準じた内容となっています。)では、通常の議案は、総議決権の過半数を有する区分所有者が出席する総会で、出席した区分所有者の議決権の過半数の賛成があれば、成立します。
一方、建替え決議等の法律が定める議案は、4分の3以上の賛成で成立するものと5分の4以上の賛成で成立するものがあります。いずれの場合も、成立のための分母は「総会に出席した区分所有者」ではなく、「区分所有者全員」となり、なおかつ区分所有者の数と議決権の両方で基準を満たす必要があります。(マンション敷地売却では敷地持分価格についての5分の4以上の賛成も必要です。)

建替え決議は、区分所有者数と議決権の5分の4以上(※2)の賛成で成立します。前述のとおり、分母が「総会の参加者」ではなく、「区分所有者全員」となることで成立のハードルは高くなります。そのため、議決権行使にあたっては議案の内容や通知事項について、区分所有者の皆さんに十分に理解・納得をして意思決定していただくための合意形成活動は非常に重要です。

※1:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」
※2:決議要件については、現在、法務省による法制審議会で見直しに向けた議論が行われています。

――成立要件以外で、建替え決議が通常の決議と違うところはありますか?

建替え決議と通常の決議との主な違いとしては次の3つがあります。

1.議案の内容や通知事項について区分所有法による規定があります。
2.総会開催の手順が定められており、招集手続きは決議集会の2ヵ月前までに、通知事項についての説明会は決議集会の1ヵ月前までの実施が必要です。
法律によって求められる議案や通知事項の内容、招集や説明会の手続きに不備があると、建替え決議が成立しても、「無効」になるリスクがあります。
3.建替え決議が成立した場合に、反対や棄権などで決議に賛成しなかった区分所有者に対して、再度の意思確認を行う「催告」が実施されます。催告に応じない区分所有者に対しては「売渡し請求」が実施されます。

■区分所有法について詳しくは下記の記事をご覧ください
区分所有法とは?役割やマンション再生との関係をわかりやすく解説



建替え決議に向けての合意形成活動とは?

――合意形成活動はなぜ必要なのでしょうか?

建替え事業の主体は区分所有者の皆さんですから、建替え決議の前提となる建物計画や経済条件等の「事業計画」は、説明会や個別面談等で区分所有者の皆さんの意向を確認しながら作成する必要があります。事業計画の作成以外にも、区分所有者の皆さんに事業計画の内容を正しく理解していただき、建替えに関する疑問や不安に対応するために実施する合意形成活動は、建替え実現のために必須であるといえます。

■合意形成活動について詳しくは下記の記事をご覧ください
マンション建替えの合意形成活動とは?流れや進め方のポイントを解説

――合意形成活動としての説明会や個別面談の内容は?

区分所有法が定める説明会では、建替え決議集会招集の際に通知した、建替えを必要とする理由や、建替えをしない場合に建物の効用の維持や回復に要する費用等の4項目についての説明が求められます。ただ、法律が定める招集後の説明会だけでなく、議案の内容や建替え決議の手続き等について説明し、区分所有者の皆さんの意向や要望を確認する説明会や個別面談は合意形成活動として大変重要です。

実現性が担保された事業計画の作成や説明会や個別面談等を管理組合が単独で実施することは困難ですので、事業協力者やコンサルタント等の専門家のサポートを受けることが一般的です。

マンション建替え研究所では事業計画や合意形成活動に関するご質問やご相談にもお応えしています。
お気軽にお問い合わせください。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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