投資用(賃貸利用)マンションの建替えを行うときの注意点は?事例も紹介

更新日:2024年4月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

賃貸利用の区画が多いマンションでは、実際にマンションに住んでいる区分所有者は少なくなります。外部居住者は、マンションの老朽化について実感しづらいため、マンション再生に関する合意形成が難しくなる場合があります。
本記事では、賃貸利用が多いマンションの建替えについて、合意形成のポイントや事例についてマンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。

賃貸利用が多いマンションの建替えにおける課題と解決策は?

――賃貸利用が多いマンションの建替えにおける課題を教えてください。

主な課題としては2つあります。
1つ目は賃貸利用の区画が多いマンションでは、区分所有者の多くが外部に居住していることです。賃貸利用の区分所有者には、投資目的で購入した場合と、当初は自宅として利用していたものの転居などの事情により現在は賃貸している場合があります。いずれの場合も区分所有者自身が住んでいないことから、建物の状況への関心が低い場合が多く、再生の必要性を理解してもらうことが難しくなる傾向があります。

2つ目は建て替えるマンションの建物計画に関する課題です。賃貸需要が高いマンションは、都心等で立地に恵まれている一方、容積率を使い切っていることで、建替えによる床面積の大幅な増加が難しく、再取得に伴う負担も大きくなる場合があります。

関連記事

マンションを建て替えるタイミングや流れとは?方法と費用も解説

マンションの建替えを検討するタイミングや建替え決定までの流れ、そして建替えの進め方、費用など、マンションの建替えの仕組みについて解説します。

――課題への対応方法を教えてください。

賃貸利用の区分所有者に再生の必要性を理解してもらうためには、建物の状況と将来のリスクを把握してもらうことが重要です。具体的には、建物や設備の古さから新規の借り手が見つかりにくくなることや、耐震性の不足への対応や設備の更新に多額の費用が必要になることを説明します。
建物計画(事業計画)については、賃貸利用の区分所有者にもメリットを感じてもらえる計画が必要です。
賃貸利用の区分所有者にとっての建替えのメリットは、多くの場合、所有する区画が中古で売却するよりも高い評価(資産価値)を受けることです。資産価値を高めるためには、建替え後のマンションの建物計画が重要です。場合によっては、マンション敷地売却制度の利用によって、区分所有建物以外に建替えることも選択肢となります。

関連記事

マンション敷地売却制度とは?利用のメリットや手続きの流れを解説

マンション敷地売却制度のメリットとデメリット、手続きの流れや事例について解説します。

賃貸利用が多いマンションの区分所有者が建替えで注意することは?

――賃貸利用の区分所有者が建替えで注意することがあれば教えてください。

賃貸利用の区分所有者に認識していただきたいポイントは2つあります。
1つ目は、再取得と転出(売却)の比較についてです。
再取得の場合は、建替え前よりも高額な賃料を得られることで、利回りの向上が期待できます。一方、追加の費用が必要なケースもあり、また、建替え工事中の数年間は賃料が得られないことにも注意が必要です。
転出(売却)する場合は、取得価格との差額によって利益が得られる可能性があります。一方、建替えにあたっての評価では、取得価格やリフォーム費用等は考慮されません。
2つ目は、賃借人の立ち退きに関するリスクです。
建替え決議が成立しても、そのことを理由に、賃借人に立ち退きを求めることはできません。立ち退き料等を含めた、賃借人との交渉は区分所有者が実施することになります。建替え決議前の契約更新の際に、定期借家契約に切り替えておけば、立ち退きのトラブルを避けることができますが、契約の切り替えには賃借人の同意が必要です。

賃貸利用が多いマンションの建替えでは上記の様に、合意形成活動や、賃貸契約に関する固有の課題があります。
管理組合だけで対応することは難しいため、早めに専門家に相談することをおすすめします。

関連記事

マンション建替えの合意形成活動とは?流れや進め方のポイントを解説

マンション建替えにおける合意形成活動の流れやポイントを解説します。

賃貸利用が多いマンションの建替え事例

――賃貸利用が多いマンションの建替え事例について教えてください。

1981年に竣工した「日興パレス白金」は、賃貸利用が中心のマンションでした。建替え決議時点で賃貸利用が全84戸のうち、44戸(店舗含む)と半数以上を占めていました。賃貸利用の区分所有者は多くの方が他府県等、遠方に居住されていました。
合意形成活動では、遠方に居住する区分所有者の方にも当社の担当者が直接伺い、建物の状況を伝えることで、建替えの必要性を理解していただきました。計画面では建替え後のマンションは立地にふさわしい、23階建てのタワーマンションとすることで、資産価値は大幅に向上しました。
建替え決議成立後、非賛成の方にも合意いただき、区分所有者81名全員が建替え参加者となりました。建替え後のマンションの住戸を再取得しない区分所有者の方も多数いらっしゃいましたが、物件の紹介など総合的なサポートを行い、建替え決議後約1年で着工することができました。

  • ■建替え前
  • ■建替え後
■建替え前後の延べ床面積と総戸数
建替え前 建替え後
延べ床面積 5,129.59平方メートル 9,763.94平方メートル
総戸数 住戸83戸/店舗1戸 住戸96戸
関連実例

日興パレス白金建替え事業について詳しくはこちらをご覧ください。

日興パレス白金建替え事業の実績、実例、事例についてご紹介します。

マンション建替え研究所ではマンション再生に係る情報発信の他、ご質問やご相談にもお応えしています。
お気軽にお問い合わせください。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

関連コラム

新着コラム

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせは

受付時間:平日9:00〜18:00