マンションの配管の老朽化に関する課題と対策を解説

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

給排水等の配管には寿命(更新時期)があります。
老朽化すると漏水事故につながり、マンションの場合は近隣の区画に被害が出ることもあります。
本記事では配管の老朽化に関するマンション固有の課題と対応について、マンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。

配管の寿命とマンション固有の課題

――給排水管はどのぐらいの年数で更新が必要なのでしょうか?

一概にはいえませんが、国土交通省の長期修繕計画に関する「ガイドラインP113」によると、28~32年が取替時期の目安とされています。30年ぐらいが寿命と判断してよいでしょう。

――給排水管に事故があった場合、マンション固有の課題があるのでしょうか?

マンションの給排水管は特徴として、住戸内の専用部分と竪管(たてかん)等の共用部分に分かれていることがあります。また、漏水等の事故が発生した場合は下階等の近隣の区画にも被害が出ることもマンションに固有の事情です。専用部分での漏水等は区分所有者が対応しますが、共用の配管での事故は、管理組合が修繕積立金で対応することになります。共用配管での事故で問題になるのが、給排水管の更新を想定していない施工方法がとられているケースです。
通常の修繕であれば、総会の普通決議で実施可能です。しかし、給排水管の施工方法により、現状の給排水管の更新が現実的でない場合には共用配管を外部に設置する等の対応が必要となることがあります。
その場合は、区分所有法(※1)の規定(14条)で、区分所有者と議決権の3/4以上の賛成による特別決議が必要です(※2)。そのため、配管の更新等の抜本的な対策のハードルは非常に高く、対症療法的に個別の修理で対応しているケースが多いと思われますが、そのような対応にも限界があるでしょう。
※1:正式名称「建物の区分所有等に関する法律」
※2:区分所有者については規約で過半数とすることか可能

■共用配管を外部に設置した例

――配管の老朽化では漏水以外のトラブルもあるのでしょうか?

給水管の場合は、老朽化や腐食等による水量の減少や水質悪化の問題もあります。お風呂に水を張るのに何時間もかかったとか、蛇口から濁った水が出たというような例もあるようです。
高経年マンションでは、セントラル方式の給湯や空調設備を採用していることもあるでしょう。セントラル方式とは、地下などの共用部に設置したボイラーや空調施設で全戸にお湯などを供給する方式ですが、1ヵ所でも漏水等が起こるとすべての住戸で設備の利用ができなくなります。また、近年ではあまり採用されていない方式のため、室内機等の部品が調達できないこともあるようです。

配管の老朽化による建替え

――給排水管の老朽化はマンションを建て替える契機になるのでしょうか?

建替え決議の際には、建替えを必要とする理由の通知が必要ですが、多くの事例で給排水管の老朽化や漏水事故が理由に挙げられています。例えば耐震性の不足については、実際に大きな地震が起こらないとリスクを実感できませんので、「耐震診断では問題があるかもしれないが、実際は大丈夫である」とか「これまでの地震でも問題なかったのだから」といった意見を持つ区分所有者の方もいるでしょう。
一方、配管の老朽化による漏水などの被害は誰の目にも明らかです。床が水浸しになれば「緊急事態である」と誰しもが思いますし、近隣の区画にも被害が出ることから、区分所有者間のトラブルにもつながりかねません。給排水管の老朽化は、建替えの理由として納得が得やすいといえます。

配管の老朽化を理由に建替えを行う場合のメリットは?

――給排水管が老朽化したマンションが建替えを行う場合に優遇措置はあるのでしょうか?

2020年のマンション建替円滑化法(※)の改正によって、給排水管の劣化による衛生上の問題も要除却認定の対象となりました。要除却認定を受けたマンションでは、マンション建替円滑化法が定める「容積率の特例」を受けられる可能性があります。建物計画や敷地については、行政の定めた基準をクリアする必要がありますが、容積率の特例によって建築できる延床面積が広くなれば、区分所有者の皆様の建替えに当たっての経済条件の改善が可能になります。
ただし、管理組合が単独で、容積率の特例の可能性を確認したり、行政が定める基準に適合した建物計画を作成したりすることは現実的に難しいでしょう。そのため、まず専門家に相談することをお勧めします。
※:正式名称「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」

■容積率の緩和について詳しくは下記をご確認ください。
マンション建替えにおいて利用可能な容積率の緩和特例とは?メリットや事例を解説

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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