マンション建替えの検討段階で必要な費用とは?行政からの補助金の可能性を含めて解説

更新日:2024年1月#タグ#タグ#タグ#タグ#タグ

マンションの建替えでは、建替え決議以前の検討にも費用がかかります。行政からの「補助金」が利用可能であれば管理組合の負担の軽減につながります。
そこで今回は、建替えの検討にかかる費用や補助金について、マンション建替え研究所 特任研究員の向田が解説します。

建替えの「検討」に必要な費用とは?

――建替えの検討でかかる費用を具体的に教えてください。

建替えの検討で必要な費用の項目としては、「建物計画の作成」「敷地の測量」「不動産鑑定」「コンサルタントへの依頼」等が考えられます。まず、建替え決議では、事業計画が必要となります。その事業計画の作成は建物計画が前提となり、建築士への依頼に費用が発生します。また、設計事務所が建物計画を作るためには、敷地図が必要ですが、敷地図(実測図)がないマンションでは、測量士に依頼する費用も必要です。
建替えを前提としたマンションの評価額について、建替え決議前に不動産鑑定士に依頼する場合もあります。さらに、建替えの検討段階から竣工に至るまでの全体のコーディネートをコンサルタントに依頼するケースもあるでしょう。このようにマンション建替えでは、検討段階でも費用がかかります。
建替え決議までに必要な費用としては数百万円から、場合によっては数千万円という金額になることも考えられます。

建替えの検討にかかる費用の調達方法は?

――これらの検討費用に修繕積立金は使えないのですか?

建替えの検討にかかる費用に、修繕積立金を充当することは可能です。ただし、支出には、管理規約に修繕積立金の使途として「建替えの検討」が含まれていることが前提となります。該当する規定がない場合に修繕積立金を利用するには、管理規約を改正する必要があり、区分所有者数と議決権の4分の3以上の賛成による特別決議となります。そのため、管理規約に該当する規定がない場合は、普通決議で可能な管理費から支出することが一般的です。
また、建替えの実現が不透明な初動期では、支出について区分所有者の皆様の理解を得ることが難しいことにも注意が必要です。

――管理組合が負担する以外の方法は?

多額の費用を管理組合の予算から支出することが難しい場合は、建替えの事業協力者となるデベロッパー等に立て替えてもらうということも選択肢となります。ただし、事業協力者との契約(事業協定等)が前提となります。

建替えで補助金は使える?

――建替えで補助金は利用できるのですか?

結論からいうと、利用しているケースは少ないのが実情です。マンション建替えで利用可能な補助金には「優良建築物等整備事業」の「マンション建替タイプ」がありますが、対象となるのは、建替え決議成立済みの事業ですので、建替え決議前に補助金が支給されることはありません。「優良建築物等整備事業」は、国が定めた制度ですが(要除却認定等、国が定めた条件もあります)、実際の支給は行政(市・県等)が決定します。そのため、国が定めた条件に加えて、行政が定める基準(地域や計画内容)にも適合していることが前提となります。
当社が参画した建替えで補助金の交付を受けた事例としては、「上熊本ハイツ」があります。上熊本ハイツは熊本地震によって被災したマンションであることから、「優良建築物等整備事業(社会資本整備総合交付金)」として、補助金の交付を受けています。ただし、補助金の交付については、地域の行政の決定(予算措置等)が前提となりますので注意が必要です。

■上熊本ハイツの建替えについて詳しくは下記のページをご確認ください。
災害に強いアトラス上熊本 | 旭化成マンション建替え研究所

他にも、建替えに限定した制度ではありませんが、災害時に物資の運搬や避難で使う重要な道路(緊急輸送道路)に面した建物を対象として、耐震診断費用や耐震補強等工事費用への補助金が出る場合もあります。いずれの場合も行政の決定によって支給されますので、制度の有無や内容については、地域の行政に確認する必要があります。

記事監修
マンション建替え研究所 特任研究員
向田 慎二
資格:マンション管理士 / 再開発プランナー / マンション建替えアドバイザー
旭化成不動産レジデンスが参画した、多くのマンション建替えで管理組合をサポート

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