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もっと知りたい“猫”のこと|第9回

猫オーナーが夏季に向けて注意すべきこと

猫の祖先は砂漠に住んでいたということもあり、犬よりも暑さに強いことは事実ですが日本の高温多湿な気候は堪え難いようです。フローリングの上でふにゃふにゃになり伸びきった姿を見かけてたことはないでしょうか。夏場の猫は体を精一杯伸ばし少しでも熱を逃がします。私たちも夏は体調を崩しやすいですが、それは猫も同じです。
今回は特に危険な3つの病気について解説いたします。

熱中症

動物の熱中症は発見が遅れやすく、死に至ることもある危険な状態です。熱中症になりやすい猫の特徴として、鼻の短い品種(ペルシャ、ヒマラヤンなど)、長毛種(メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットなど)、肥満猫、高齢猫などが挙げられます。これらの猫を飼っている方は特に注意しましょう。
猫は犬のように散歩中に熱中症になることはありませんが、室内に閉じ込められた時に発症することが多いです。特に留守番中、予想以上に室温が高くなったり、密室に偶然閉じ込められてしまうと危険です。6〜9月は外出中も愛猫のために冷房を28度に設定しましょう。またトイレのドアなど密室になりうる場所は、出かける前に扉を閉めておきましょう(ドアストッパーは猫が外すので×)。

毛玉症

気温が上がり始める春から夏にかけては猫の毛並みが生え変わる時期です。そのためグルーミングの時に通常よりも多くの抜け毛を飲み込んでしまいます。毛玉が直接腸に詰まって手術が必要になることは比較的稀ですが、嘔吐や食欲不振の原因にはなります。やはり長毛猫の方が毛玉症になりやすいです。長毛猫は毎日ブラッシングを行い、毛の量を調節しておきましょう。そのほかに毛玉を絡め取り、べんと一緒に排泄を促すサプリメント(ラキサトーンなど)もありますので試しても良いでしょう。
どうしてもブラッシングができず毛玉ができてしまう猫はライオンカット、もしくはすきバサミで毛量を減らすレーキングをトリマーさんにやってもらうと良いでしょう。猫の性格にもよりますが、おとなしい猫であればレーキングは30分程で行えます。

ダニ、ノミ、フィラリア

暖かくなると虫が増える季節です。室内飼育でもノミ、ダニがつくことはありますし、犬と同居の猫は必ず予防薬をつけましょう。またあまり知られていませんが、フィラリア症の別名は犬糸状虫といいますが、この病気は猫でも発症することがあります。
猫のフィラリア症も重度の肺炎や突然死を引き起こす危険性があります。フィラリアは蚊が媒介する病気なので、室内飼育でも予防が推奨されます。これらの寄生虫の予防は、スポット剤といって、首筋に垂らすだけで使用できるので、自宅で塗布することもできます。

まとめ

そのほかにも暑さにより体力を消耗し、現在の病気が悪化することもあります。また移動用のキャリーは熱がこもりやすく、通院中にも熱中症になりやすいので注意しましょう。特にカートタイプの地面が近いキャリーは気をつけましょう。キャリーには保冷剤をタオルで巻いて一緒に入れると良いでしょう。暑さに負けないようしっかり対策し、愛猫と一緒に夏を乗り切りましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/