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もっと知りたい“猫”のこと|第8回

猫の健康管理~心拍数や呼吸数の測り方~

愛猫の健康を守る上で、最も基本的で重要な情報であるのが呼吸数や心拍数です。これらは通称バイタルサインと呼ばれ、上記の2個に加えて、血圧、体温の4つを示すことが多いです。猫は体調が悪くても見た目ではわからないことがあるので客観的に数字で健康状態を把握できるバイタルサインは重要です。
今回は自宅で測定できるバイタルサインについて説明致します。いずれの数値も成猫の基準値で、興奮状態だと高く出るので落ち着いているときに測定しましょう。

呼吸数

最も簡単に測定できる項目です。猫の安静時にお腹(図赤丸印)の動きを観察しましょう。15秒間観察し、4倍することで1分あたりの呼吸数を計りましょう。

猫の基準値:1分あたり24〜42回

心拍数

聴診器があればより簡単ですが、なくても心臓に指を当てることで測定することができます。聴診器は安価なものであれば数千円で購入することができます。
解剖学的には左の肋骨の5番目と6番目の間と表現しますが、簡単にいうと肩甲骨の下らへんです。猫の脇に聴診器を入れるようなイメージで心臓の場所を探しましょう。心拍数も15秒間測定し、4倍することで1分あたりの呼吸数を出しましょう。

猫の基準値:1分あたり120〜180回

体温

体温はお尻に体温計を入れてはかる方法と、耳から測定する方法があります。

直腸温
通常の体温計でも測定できますが、先端が柔らかくなっている動物用を使いましょう。またカバーをつけることで清潔に測定することができます。
測定方法はお尻に入れるだけですが、猫はこれを結構嫌がるので誰かに抑えてもらいながら行いましょう。便に触れるなど、直腸と接触していないと、実際の数値より低くでるので注意しましょう。

耳式体温計
鼓膜からの赤外線を感知し体温を測定します。しかし、猫は人と違い耳の中がカーブしているため、うまく測定するにはコツがいります(上手く図れていない場合は低く出る)。
猫の耳は途中で内側に直角に曲っています。耳の形を考慮し、しっかり奥まで入れることが大切です。慣れれば短い時間で、猫が嫌がることなく測定できるのは大きなメリットです。

猫の基準値:37.5〜39.2℃

市販されているペット用直腸体温計

市販されているペット用耳式体温計

おまけ 血圧

(尻尾にバンドを巻き血圧を測っている)

猫も血圧を測定することができますが、自宅で行うのは現段階ではハードルが高いです。
人の血圧計は数千円から購入できますが、動物用血圧計は数十万円しますし、一般向けに販売されていません。海外サイトで廉価版が売られていますが、精度に難があります。動物病院からレンタルすることもできますが、これもまた測定にコツがいるため何度か練習してからでないと正確な数値を得られません。
猫は腕、後ろ足、または尻尾から血圧を測ることができます。

猫の基準値:収縮期血圧 100〜150mmHg

まとめ

自宅で猫のバイタルサインを測ってもらうのは、通常は心臓や肺の病気の猫や抗がん剤治療中の猫などです。しかし日頃からバイタルサインを測定しておけば、早期に病気を発見できる可能性があります。安静時に測ったにも関わらず基準値から大きく離れた数値がみられた場合はすぐに動物病院に相談しましょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/