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もっと知りたい“猫”のこと|第7回

猫の行動の不思議

猫は哺乳類の中でもちょっと変わった動物で、猫にしかない行動がいくつかあります。私たちの行動に当てはめることができないため、そのことが猫が不思議な動物だと思われる要因の1つになっているでしょう。
今回は猫にまつわる不思議な行動の意味を解説します。

ゴロゴロ

猫が喉を震わせて鳴らすことを猫好きの間で「ゴロゴロ」と呼んでいます。英語ではPurring(ピュリング)と呼びますが、日本語の行動学の本では「喉鳴らし」と書かれることが多いです。
この喉鳴らしは、声帯を震わせて鳴らしていると考えられています。普通の声と同時に鳴らすことができるのが最大の特徴で、ニャーニャー鳴きながらゴロゴロも継続して発することができます。

ゴロゴロの意味は諸説ありますが、一般的には機嫌が良いとき、リラックスしている時に鳴らすことから人間の「微笑み」のような感覚に近いと考えられています。
一方で、猫は怪我をした時もゴロゴロと喉を鳴らします。これは自分の回復を早めるためであると考えられています。「病は気から」という言葉もありますが、猫も辛い時にゴロゴロと喉を鳴らすことで精神的に落ち着こうとしているのかもしれません。

フミフミ

タオルやクッション、または人間のお腹などを前足で交互に踏む行動を猫好きの間で「フミフミ」と呼んでいます。フミフミは本来、授乳期の猫がお母さん猫のおっぱいの出をよくするためにマッサージする行動であると考えられています。そのため「ミルキング」と呼ばれることもあります。
人と暮らしている猫はいつまでも子猫気分が抜けず、成猫になってもフミフミが続くのでしょう。これは飼い主さんに対して行う場合は甘えているという意味で解釈して良いでしょう。中には集中しすぎて、ヨダレを垂らしながらフミフミをする猫もいます。

スリスリ

猫が頬や、尾の付け根、頭など体の一部を擦り付けてくる行動を猫好きの間では「スリスリ」と呼んでいます。これは行動学の本では「擦り付け行動」と呼ばれ、1970年代からマーキングに関連した行動ではないかと考えられるようになりました。
実際に猫の顔や尾の付け根からはフェロモンが多く分泌されており、これを交換することでコミュニケーションをとっていることがわかりました。猫にとって嗅覚は非常に大事な感覚です。私たちはお互いの識別に名前と顔をセットで覚えますが、猫はお互いを匂いで記憶していると考えられています。
飼い主さんが脱いだ服の上を好んで座るのも、自分が好きな飼い主さんの匂いがあると安心するからです。猫同士でも友好関係が築かれていると、お互いスリスリし合いますので、人に対して行う場合も好意を意味していると解釈して良いでしょう。

まとめ

いずれもとっても可愛い行動で、猫の機嫌が良いとき、好意的な意思表示として行われます。ただし、「ゴロゴロ」だけは怯えている時や体調が悪い時もあるので、リラックスしていないのにゴロゴロ鳴らしている場合は注意しましょう。
猫はクールな動物といわれていますが、こうしてみると愛情表現が多彩ですね。私たちとは違った方法で気持ちを伝えるので、猫を知っている人でないとなかなか気持ちがわからず、クールだと思われているのかもしれませんね。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/