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もっと知りたい“猫”のこと|第6回

猫を知ろう、猫独特の体の名前

猫と戯れていると、猫の体の不思議なパーツに気がつくことがあるでしょう。猫には猫の解剖学があり、人にはない部分には猫独特の名前がついています。これらの言葉を知っているとちょっと猫に詳しい人になれると思いますので、自宅の愛猫にも本当にあるか確認するのも面白いでしょう。
それでは、猫のパーツについて、いくつかご説明いたします。

プライモーディアルポーチ

愛猫のお腹を見て、たるんでいるなと感じたことはないでしょうか。実は猫のお腹の皮膚は正常でもある程度たるんでおり、これは猫の後ろ足の柔軟性を維持するためだと考えられています。
猫は他の動物に比べて皮膚に余裕がありますが、お腹は特にそれが顕著です。プライモーディアルとは原始的なという意味で、猫は古くからここにポーチ(袋)を持っています。

房毛

耳の先端に生えている毛を房毛といいます。長毛の猫、特にメインクーンは立派な房毛が生えているのが特徴です。
猫は野生環境ではあまり声を発さないため、耳の向きで感情表現をします。そのため房毛が発達したと考えられています。ネコ科動物のカラカルは特に長い房毛を持つ動物として知られています。

うちの猫、ホタテちゃん

カラカル

ウィスカーパッド

うちの猫、カツオくん

口の周りのヒゲが生える部分をウィスカーパッドといいます。ウィスカーは頰ひげを意味しますので、ひげの土台になる部分と解釈することができます。
ウィスカーパッドは一般的にオスの方が大きく、またアメリカンショートヘアーやブリティッシュショートヘアーも大きめのウィスカーパッドが特徴です。

ジョールズ

うちの猫、カツオくん

オス猫でやたらと頬が膨らんでいる猫を見たことはないでしょうか。それはジョールズ(Jowls)かもしれません。
男性ホルモンが働くと頬の皮が厚くなり、また頬にしこりのようなものができます。これはケンカで噛まれる箇所を守るため、あごが発達するためと考えられています。
ジョールズは去勢手術を受けていないオス猫にできます。カツオくんは去勢するタイミングが少し遅かったので、少し頬が膨らんでいます。

手根球

猫の前足の付け根の部分を見てみましょう、4つの指と掌の下にもう1つ肉球があります。これは手根球といって、手の関節を形成する手根骨を守る役割があります。英語ではカーパル(手根の)パッドとなります。香箱すわりをするときに手根球が地面につきます。

香箱すわり

触毛

頬や目の上から飛び出ている太い毛は自分の意識で動かすことができる触毛です。空気のわずかな動きをも敏感に察することができます。触毛は顔の周りだけでなく、先ほどの手根球の周囲にも生えており、獲物が手の脇から逃げるのを感知すると考えられています。年をとると抜けてしまったり、黒かった触毛が白髪になることもあります。

まとめ

学術用語として認められているものから、一般呼称のものもありますが、今回は猫のパーツの名前を紹介しました。
高齢になると、背中など体の外側の皮膚にできものができることもありますので、それが正常な状態なのか不安になることもあると思います。ここに書いてあるものは健康な猫でも見られるものですが、気になる場合はかかりつけの獣医師と相談しましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/