猫同士の相性の見極め方:後編
前回は猫を多頭飼育する際に相性の良い組み合わせと悪い組み合わせについて紹介しました。今回は実際に会わせる時の注意点と、猫同士のポジティブな行動とネガティブについて解説します。
猫同士が初めて対面する時の注意点

猫同士もファーストインプレッションがネガティブなものだと仲が良くなるまで時間がかかってしまいます。新しい猫が来るということは、先輩猫にとっては突然知らない人とルームシェアをしろと言われているようなものです。せめてどんな猫が来るか事前に教えてあげましょう。
猫にとって重要な情報がにおいです。新しい猫が使っていたタオルやブラシなどを先に家に置いて、こういう猫が近くにいるよ、というのを教えてあげることから始めましょう。
その次の段階としては、直接対面させる前に新しい猫は別室で家に慣れてもらいます。これもお互いのにおいを交換するためです。さらにその次の段階で新しい猫をケージに入れたままで対面させましょう。それでも怒らなければ実際に会わせて、徐々に会う時間を増やしていきましょう。
猫同士のポジティブな行動
1.アログルーミング
アログルーミングの「アロ」とは「他者」を示すギリシャ語で、お互いの毛繕いをしてあげる行動をこう呼びます。アログルーミングは猫同士の親和行動の1つで猫同士の絆を深めたり、お互いの体を清潔に保つ目的があります。特に自分でグルーミングできない、耳の周りや頭を舐めてあげることが多いです。

2.猫同士のプロレス
愛猫家の間では「にゃんプロ」と呼ばれたりもします。猫同士のプロレスは仔猫時代にみられる社会的な遊びの1つです。家で飼われている猫は成猫になってもこの行動が残ることがあります。一見、取っ組み合いをしていると仲が悪そうにもみえますが、本気の喧嘩との見極めは以下のポイントをチェックしましょう。
- ウーと唸る、シャーシャー鳴くなどの威嚇行動がない
- わざと倒れて下から組み合わさる
- やられた側も大きな声を出さない
猫同士のネガティブな行動
1.激しい喧嘩
プロレスとの違いは、威嚇行動があることです。上記の唸り声やシャーなどの他に、毛を逆立てる、イカ耳(耳を後ろに背けること)、大きな声で嫌がるなどです。これは一方の猫がプロレスの気持ちでやっていても、その相手が嫌がっている場合も激しい喧嘩に含まれます。こういった行動が出る場合は、部屋を分ける、隠れられる場所を用意するなどの対策が必要です。

2.においへの拒否反応
お互いのタオルを交換した時に嫌がったり、トイレを共有できなかったりするのは相性が悪いサインになります。無理に慣らすことはできないので、トイレを多く用意したり、怖がっている猫のにおいを残す(タオルなどを頻繁に洗わない、など)することが対策になります。
3.元気・食欲の低下
不仲によりストレスが過度になると、オープンスペースに出てこなかったり、食欲が低下します。おとなしくなるという変化は多頭飼育だと見落としてしまいがちですが、特に重度の状態になると体重が減っていってしまいます。そのため日頃から体重を測定するというのは体調の変化を早期に発見できるためとても大切な健康管理といえるでしょう。できれば月に1回、少なくとも3ヶ月に1回は測定しておくと良いでしょう。
年齢や性別などのプロフィールが猫同士の相性に影響しますが、プロフィールは変えようがありません。できることとしては「出会い方」や「飼育環境」の改善です。飼い主の工夫次第で不仲を仲良しまで変えることは難しいかもしれませんが、平和な状態ぐらいまでは持っていけることが多いです。相性がイマイチだと思ったときは1つずつ環境を見直してみましょう。なかなか改善しない場合はかかりつけの獣医師にご相談ください。
山本先生のもっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール
猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/
