動物病院の選び方
猫は私たちの生活に癒しと喜びをもたらしてくれます。いつも元気いっぱいで食欲旺盛の愛猫が突然ごはんを食べなくなったら慌ててしまいますよね。そうなった時のために、事前に動物病院選びを考えておいた方が良いでしょう。
今回は動物病院の種類と、選ぶ際のポイントについて解説致します。
動物病院の種類

動物病院をおおまかに分けると「かかりつけ病院」「二次診療病院」「夜間救急病院」の3つです。このコラムの読者は主にかかりつけ病院、いわゆるホームドクターを探しているかと思います。かかりつけ病院が決まれば、そこと提携している夜間救急病院や二次診療病院を紹介してもらえますので、ある意味セットになっているともいえるでしょう。
中にはかかりつけ病院にプラスして1.5次診療といって、手術や入院治療の一部に対応していたり、夜間診療も実施している動物病院もあります。一般的には都市部では分業、地方部では1つの病院に機能が集約していることが多いです。
動物病院を選ぶ時のポイント
動物病院選びを難しくしている理由は、自由診療のように料金が違うという点でしょう。基本的には料金設定が高い病院ほど、最新の医療機器、良い人材(獣医師、動物看護師ともに)が確保/教育がしやすく、高いレベルの医療が実施可能になります。
中には料金設定が高いにもかかわらず医療レベルが低いと言わざるをえない病院も存在しますが、獣医業界も競争率が高いため自然に淘汰されていくでしょう。
反対に料金設定が低くても、診療技術が高い動物病院ももちろん存在します。ただこのタイプの病院は当然人気のため非常に混雑していることが多いです。現在はホームページに料金設定を載せている病院が増えてきました。受診する前に電話またはネットで確認しておくと良いでしょう。

2つ目はどのくらいの医療レベルを自身が望んでいるかを改めて考えてみましょう。できるだけ人医療に近い水準で、例えばもしもがんになったら手術や抗がん剤などをやってあげたいか。もしくは積極的な医療は希望しておらず、自然に任せ緩和治療にとどめるか。求める医療は飼い主さんによって本当に様々です。
もし積極的な医療を希望しないのであれば、医療機器や優秀な外科医が揃っている分、コストが高い病院はお勧めしません。小型のかかりつけ病院の方が親身に話を聞いてくれることが多いでしょう。また小型や家族経営の病院の方が人の入れ替えが少なく、ずっと同じ獣医師に診てもらえる傾向にあります。
一方で医療レベルが高い病院の方が緊急時にその場で手術に対応してくれるなど頼りになることが多いです。手術に対応できないかかりつけ病院から二次病院へ紹介する場合は日程調整に時間がかかったり、愛猫の移動ストレスも考えなくてはいけません。
キャットフレンドリークリニックとは

病院探しをしているとキャットフレンドリークリニックという言葉が出てくるかもしれません。これは認定制度のことで、国際猫医学会(ISFM)が独自に基準を設定し、それをクリアすることで認定されます。基準の中には猫専用の待合室がある、猫医療に関する勉強時間やセミナー受講歴があるなどがあり、認定されるとより猫に優しい医療が提供できる環境が揃っているといえます。
キャットフレンドリーは高度医療とは別で、「猫に優しい医療」を示します。猫が病院でストレスにならないよう検査をしたり、治療を行う上でも無理な投薬をしないで治せないかを検討していくのがキャットフレンドリーです。キャットフレンドリークリニックのホームページにアクセスすることで自分の地域の認定病院を確認することができます。
まとめ
猫の病院選びは価格や医療レベルにばらつきがあるので、ミスマッチが起こりやすいといえるでしょう。ある方にとっては良い動物病院でも、違う方にとっては悪い動物病院になりかねません。まずは自身の求める医療レベルと予算を参考に検討すると良いでしょう。
最後に、私は猫専門病院をやっていますが、そもそもなぜ猫専門にしたのかは自分が猫を飼っていた幼少期に遡ります。当時飼っていた猫を動物病院に連れていった時に担当した獣医師が猫派で嬉しかった記憶が残っています。自分の猫を診てもらうなら猫派の人にみてもらいたいな、という思いが根っこにあり今に至ります。人と人の相性もありますので、いくつか病院を回って話を聞いてみるのも良いかもしれません。
山本先生のもっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール
猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/
