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もっと知りたい“猫”のこと|第45回

猫用サプリメント

猫にもサプリメントをあげてみたいなと思われている方も多いでしょう。サプリメントとは栄養補助食品と呼ばれ、ビタミンやミネラルなどの栄養素を補助するものや、生薬や酵素などの体の代謝にとって良いとされるものがあります。

猫の代表的なサプリメント

猫のサプリとして有名なのはタウリンではないでしょうか。タウリンというのはアミノ酸の種類で、猫は体内で合成することができないため必ず食事から摂らないといけません。そのようなアミノ酸を必須アミノ酸といいます。
人はタウリンを合成できますので、人にとってタウリンは必須アミノ酸ではありません。このように動物によって必要な栄養素は異なります。猫はタウリンが欠乏すると心臓が大きくなってしまう拡張型心筋症という病気になります。そのため心臓病のサプリなどにタウリンが含まれていることが多いです。

ただし「欠乏すると病気になる」=「多く摂取すると病気にならない」ではない点に注意が必要です。総合栄養食と表記されているキャットフードは、タウリンを含めた必須栄養素は十分量含まれています。現代の飼い主さんは人の食事ではなく、キャットフードをあげる人がほとんどですので、タウリン欠乏性の心臓病というのは、私は獣医師になってからほとんど見たことがありません。

最近では腸内細菌に対するサプリメントがトレンドになっています。ヒト以外では腸内細菌は下痢や便秘だけでなく、肥満や免疫力にも関与して可能性が示されています。腸内細菌系のサプリメントの種類には、善玉菌とされる乳酸菌などを投与するプロバイオティクス、善玉菌の栄養素となるオリゴ糖などが含まれるプレバイオティクス、そして善玉菌から産生される体に良いとされるもの、短鎖脂肪酸などが含まれるポストバイオティクスがあります。

猫用サプリメントの服用する際の注意点

まず必ず猫用のサプリメントを使用してください。人用のサプリメントの中には猫が少量摂取しただけでも致死的なものあります。同様に犬用のサプリメントもあげないでください。現在医薬品を飲んでいる場合は必ず獣医師に確認をしてから与えてください。

またサプリメントは食品にカテゴリーされます。効果の裏付けがある医薬品とは異なりますので、過剰な期待はしない方が良いでしょう。中には少しでも健康になってほしいという飼い主さんの気持ちに漬け込んで非常に高額なものもあります。信頼のできる獣医師に相談して適切な価格なのか、安全性のあるものなのか確認しましょう。

私が効果を実感しているサプリメント

最後に私が効果を感じているものを紹介します。1つ目はサイリウムです。これはオオバコという植物の種子の殻を粉末状にしたものです。便秘の時に与えるとお通じが良くなります。過剰に与えたり、水に混ぜて与えると腸に詰まる可能性があるなど、使用上の注意があります。

2つ目は活性炭製剤のサプリメントです。これは主に腎臓病の時に使用するのですが、腸の中の毒性物質を吸着し、体外へ排出することを助けます。ただし医薬品を使用している場合は、投与期間を30分以上あけましょう。医薬品の吸収にも影響を与えるからです。

まとめ

ちょうどこの原稿を書く少し前に、人間のサプリメントで紅麹が大きな問題になりました。元気になるためのサプリメントで健康被害が出てしまっては本末転倒です。品質管理が徹底するのは企業側の当然の責任ですが、サプリメントは加工品である以上こういったことが起こる可能性があります。本当に必要なものか、今一度考えてから与えましょう。またサプリメントといえど、上記のように注意点が必要なものもあります。説明書をよく確認してから与えましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/