猫の多頭飼育のポイント
猫の1世帯あたりの飼育頭数の平均は1.78頭と報告されています(2023年 日本ペットフード協会調べ)。同様の調査で犬は平均1.29頭でしたので、猫の方が多頭飼育をしている方が多いことがわかります。
猫は本来単独で生活する動物でしたが、ペットとして飼われているイエネコは猫同士でも仲良くなれる社会性を身につけています。そのため、むしろ多頭飼育の方が寂しくないという意見もあります。
ただし、多頭飼育ならではの問題が起こることもありますので、その注意点について説明していきましょう。
猫が仲良く住める環境づくり
最大の懸念点は、猫同士の折り合いが悪く、お互いにストレスを感じてしまうことです。特に成猫同士が新たに同じ家で住む場合は、飼育環境に気をつけましょう。
猫にとって必要な資源である水飲み場、食事、トイレ、休むスペースなどを別々に用意しましょう。猫が社会性を身につけたからといっても、野生時代の名残がありますので常に他の猫と一緒にいるのはストレスになってしまいます。

「トイレの数は猫の数+1」といいますが、正しくは「猫の数+1箇所」です。例えば2頭の猫を飼っている場合は、トイレを1箇所に3個並べるだけでは不十分で、3箇所に分散してトイレを設置した方が良いということになります。同様に食事や水飲み場も、分散させることで、資源の奪い合いを避けることができます。
それ以外には猫同士の視線が合いすぎない工夫をしましょう。例えばキャットタワーを導入しても、その台座とテーブルの高さが一緒だと目が合ってしまいますので、ずらしましょう。猫が休憩するスペースの高さが一緒にならないようにするのがポイントです。高さを変えるのが難しかったり、休む場所が対面になる場所には、目隠し布をかけても良いでしょう。
猫の導入の注意
最初に猫同士を合わせるときも、喧嘩にならないように徐々に距離を近づけていく必要があります。新たに加わる猫は1つの部屋にいてもらい、先住猫は自由に家の中を探索できるようにします(新しい猫がいる部屋には入れないようにする)。その後、場所を交換します。それによりお互いの匂いを交換することができ、徐々に相手を近い存在と認識することができるようになります。
直接会う時は、最初はガラス越し、ケージ越しの方が安全でしょう。徐々に一緒にいる時間を増やしていくと、スムーズに導入ができます。

どうしても相性が悪い場合は、しばらくは別空間で生活するしかありません。部屋を分けるのが理想的ですが、それが難しければケージを使用して物理的に分けます。長いと数ヶ月間、一緒になるまでかかることもあります。
飼育頭数に注意

猫の数は「部屋の数−1」が理想的とされています。例えば2LDKでは、各部屋+リビングで3部屋ありますので、猫の数は2匹までとなります。
同様に猫が増えないよう避妊去勢手術は必ず行いましょう。オス同士、メス同士の多頭飼育でもストレス緩和のため避妊去勢を推奨します。
部屋のキャパシティを超えた多頭飼育、例えば1LDKで5頭などは過剰飼育と呼び、猫の健康と福祉を著しく損ないますので絶対にやめましょう。
多頭飼育のメリット

多頭飼育の良い点としては、猫同士で仲が良いと、留守番中でも寂しくない、また猫同士で遊んでくれるという点が挙げられます。お互い一緒に寝ていたり、グルーミングをし合っている姿は飼い主からみても微笑ましいものです。個々の猫の性格の違いも出てきますので、より猫と生活を楽しめるでしょう。
まとめ
猫の飼い主は、多頭飼育している方が多いです。猫はサイズがそれほど大きくない点や、散歩が不要という点から、1頭でも2頭でもあまり世話の大変さが変わりません。これも多頭飼育の理由の1つでしょう。
多くの場合は多頭飼育でも猫同士で仲良くなりますが、猫の気質をリスペクトし、トイレや食事などは離して設置しましょう。目線が合わない工夫も大事です。
私も現在3匹飼っていますが、家に帰って3匹固まって寝ている姿をみると癒されます。
うまく環境を整えて、猫との生活を楽しみましょう。
山本先生のもっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール
猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/
