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もっと知りたい“猫”のこと|第41回

猫に必要な飲水量とは

猫に必要な水分量の計算方法はいくつかありますが、代表的な2つを紹介します。

① 1日の必要水分量 = 体重 × 44〜66ml
体重4kgの猫であれば176〜264mlになります。

② 1日の必要カロリー量 = 必要水分量
体重4kgの猫は1日の必要カロリー量が238kcalになります。

必要カロリー量はフードのラベルに書いてあったり、以下の計算式で求められます。
安静時エネルギー要求量(RER) = (体重)0.75 × 70 kcal/day、さらに成猫の場合はその1.2倍くらいが必要カロリー量になります。

思ったより多いと感じた方もいるかもしれません。上記の計算はあくまで水分量です。

飲水以外の水分を摂取するルートとして、食事中の水分と代謝水があります。特にウェットフードを食べていると食事中の水分量が結構な割合を占め、食べているフードによって飲水量はかなり変化します。場合によっては、食事中の水分で1日の必要水分量を占め、ほとんど飲水しないこともあります。

代謝水とは食べた栄養素が体内で燃焼される時にできる水のことです。猫の場合1日30mlほどとされます。

1日の水分量 = 飲水量 + 食事中の水分量 + 代謝水

例えば、4kgの猫が1日240kcal食べているとします。その全てをウェットフード(水分量85%、1g/1kcal)とすると、1日の水分量は以下になります。

必要水分量 = ②の計算方法から、240ml
食事中の水分 = 240 × 0.85 = 204ml
代謝水 = 30ml
必要飲水量 = 240 - 204 - 30=6ml
となり、ほとんど水分を摂取しなくても足りていることになります。なので、必ず食事中の水分の割合はチェックしましょう。

水を飲むことの重要性

猫は泌尿器系の病気になりやすいことが知られています。実際15歳以上の猫の9割が腎臓病であり、尿路結石や膀胱炎の発症率も犬よりも明らかに高いです。これは猫の祖先のリビアヤマネコが砂漠で暮らしており、水分をあまり摂取しない習性があり、慢性的な脱水が泌尿器系の病気を起こしているのではないかという説があります。そのため日頃から水分を摂取することで泌尿器系の病気に予防効果があると考えらえています。

水をたくさん飲む分には問題ないのか?

水をたくさん飲むのは、「多飲」と呼び病気のサインとされています。猫で多飲を起こす3大疾患は、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、糖尿病です。飲水量だけで、ドライフードで体重 × 60ml、ウェットフードで体重 × 10mlを超えると多飲とされます。

水を飲まない時はどうしたらいいか?

飲水を促すポイントは7つあります。

  • 常に新鮮な水を用意。基本的なことですが1日2回は交換しましょう。
  • 水飲み場を複数設置。猫がアクセスしやすい場所、静かな場所に設置
  • 容器。プラスチックよりも臭いがつきにくい、陶器やステンレスの方が好ましいとされています。
  • ファウンテン。水を循環させる猫用のウォーターファウンテンが市販されています。特に動いている水を好む猫には、用意してあげましょう。
  • 食事回数を増やす。食事を小分けにした方が、飲水量が増えるという報告があります。
  • 食事をウェットに変える。ウェットフードを与えた方が、トータルの水分摂取量が増えるという報告があります。
  • 水分摂取補助ゼリー。匂いつきのゼリーが市販されています。ほとんどが水なので、食べることで水分摂取量が確保できます。

飲水量をどうやって測るのか?

正確な飲水量を測るには水分の蒸発を考慮しなくてはいけません。そのため、同じ形の器を2つ並べ、片方はザルで覆い、片方はそのままにしておきます。半日後に減った水分量の差を2倍したものが、その猫の飲水量になります。
そこまでするのが手間な場合は、蒸発量込みで〇〇ml減っていました、と獣医師にお伝えください。また多頭飼育の場合は、猫を部屋ごとに分けて、それぞれの飲水量を測りましょう。

ファウンテンを使用している場合は、飲水量を測定するのは難しいです。その場合は飲水量と関係する尿量を測定しましょう。
尿量が測定できる電子トイレや、吸収シートを使うシステムトイレであれば、シートの重量の差を測りましょう。吸収される砂の場合は、尿の回数や固まった砂の大きさをメモして獣医師に伝えましょう。

まとめ

まずは愛猫の必要水分量を計算しましょう。そこから食事中の水分と代謝水を引いた数字が、必要な飲水量です。もしたくさん水を飲む場合は、上記のような疾患が疑われますので必ず動物病院を受診しましょう。
反対に水を飲まなすぎる場合は口が痛かったり、病気で水を飲む元気がないこともあります。猫にとって水分摂取は病気予防のために非常に大事ですので、もしあまり水を飲まないなと感じたら、上の7ポイントを見直してみましょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/