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もっと知りたい“猫”のこと|第40回

猫に必要な栄養素とは

猫の栄養学を語る上で避けて通れないのが、肉食動物と雑食動物の違いです。私たち人間は肉や魚などの動物性タンパク質も食べますが、食べなくても生活できる雑食動物です。ベジタリアンの人が植物からタンパク質を補って生きていけるのは、私たちが真の肉食動物ではないからです。

一方で、猫は動物性タンパク質を摂取しないと生きていけません。そのため肉が必ず必要になります。具体的にはタウリン、アラキドン酸、ビタミンAなどが必須で、これらの栄養素は植物性の食品にはほとんど含まれていません。人間や犬はビタミンAを食事から摂取しなくても、体内で作り出せます。猫はできませんので、食事中のビタミンAなどが不足すると病気になります。

ライフステージごとの栄養学

成長期:0〜12ヶ月齢

体を作るための栄養として、蛋白質、リン、カルシウムなどの要求量が高いです。1歳未満用とラベルされている食事は成長期に必要な要素を満たしています。注意したいのは量です。
4ヶ月齢未満では体重1kgあたり200〜260カロリーが必要になりますが、これは猫の体格からすると信じられないほど多いです。そのため、飼い主さんが自己判断で制限していまい、十分な量が与えられていない猫に稀に遭遇します。
必ずラベルを確認し、猫の体重と月齢に合った食事を与えましょう。

成猫:1〜9歳

最も健康な期間です。どちらかというと肥満に気をつけましょう。
室内飼育、避妊去勢が一般的になるにつれ猫も肥満率が上昇しています。飼育猫の34%が肥満とされており、これはアメリカ人の肥満率にほぼ匹敵します。ダイエット食は高繊維食、高蛋白/低炭水化物などの工夫がされています。成猫期は適正体重を維持することを心がけましょう。

高齢期:10歳以上

高齢期の体の変化として、嗅覚、筋肉量、腎機能、認知機能などが低下します。嗅覚が低下すると食欲がわかないため痩せてしまいます。ウェットフードなど食欲をそそるものを与えましょう。
筋肉量低下には分岐鎖アミノ酸、認知機能低下にはアミノ酸のL-トリプトファンや抗酸化物質などが効果的であり、いわゆるシニア食というのはこれらの栄養素が強化されています。

おやつやフードを選ぶポイント

栄養学はエビデンスが乏しい世界です。例えば、生肉が犬猫に良いという話もありますが、正確な裏付けはありません。むしろサルモネラやトキソプラズマなどに感染するリスクがあり、個人的には推奨できません。
またこれは犬の報告ですが、ドライにした家畜の食道を食べていた犬が甲状腺機能亢進症になったという論文があります。食道に付随して他の動物の甲状腺を多量に摂取したためだと考えられます。
飼い主としてできることはあまり強い意見や思想に流されずに、スタンダートなメーカーから選ぶというのが、ひいては愛猫の健康に有益なのではないかと感じます。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/