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もっと知りたい“猫”のこと|第39回

猫の外耳炎について

外耳炎とは

外耳とは耳の穴から鼓膜までの管を指します。そこに炎症が起きると、かゆみ、赤み、腫れる、痛みなどの症状が出ます。猫の外耳炎は犬よりは少ないものの、耳の病気の中では最も頻度が高い疾患です。主な症状は、耳を痒がる、頭を振る、耳垢が多い、耳垢の臭いが強いなどが挙げられます。

外耳炎の原因

猫の外耳炎の原因で多いものはダニ(ミミヒゼンダニ)とアレルギー性疾患です。この2つが同時に起こっていることもあります。それ以外では真菌感染(マラセチア)、細菌感染、異物、腫瘍や耳道狭窄などがあります。

外耳炎になりやすい猫種

耳が垂れているスコティッシュ・フォールドがなりやすいと思われていますが、事実ではありません。他の猫種より突出して耳の疾患になりやすいのはアメリカン・カールです。アメリカン・カールはその名の通り耳がカール(反っている)している猫種ですが、耳の軟骨が厚く、耳の穴(耳道)が狭くなり、換気が悪いため外耳炎になりやすいので特に注意が必要です。

(アニコム白書2015より。グレーの四角が猫の平均、緑のバーがアメリカン・カールの核疾患の割合)

外耳炎になりやすい時期、環境

外耳炎に限らずですが、アレルギー性疾患は暖かく、湿度が上がると症状が悪化しやすいです。またミミヒゼンダニなどの寄生虫は夏季に活発になりますので、やはり春〜夏が外耳炎になりやすい時期といえるでしょう。環境としては、外に出る猫、多頭飼育環境では感染症が起こりやすいので発症しやすい傾向にあります。

外耳炎の治療

・耳の掃除

耳垢をできる限り取り除き、外耳の通りをよくします。自宅でやる場合は、綿棒などを使用せず、指が届く範囲のみ拭き取りましょう。その際にイヤークリーナー(エピオティック等)を使用すると綺麗に取れやすいです。犬のイヤークリーナーは猫が嫌いな匂いだったり刺激が強いものがあるので、必ず猫用のものを使用しましょう。

・駆虫薬

ミミヒゼンダニが原因の場合は駆虫薬が必要になります。首の根っこにつけるスポットタイプのものが使用しやすいでしょう。ミミヒゼンダニに有効なものとしてレボリューションプラスや、アドボケートという薬が挙げられます。

・抗炎症薬

アレルギー性の外耳炎の場合はステロイドと呼ばれるような抗炎症薬が有効です。プレドニゾロンの内服や、ステロイド入りの外用薬などが使用されます。これらの薬は副作用もありますので、必ず獣医師と相談して使用するか検討しましょう。ステロイドの副作用として内服では胃炎や糖尿病、外用では耳軟骨の変形などが挙げられます。

外耳炎の予防

耳を清潔に保つことが最大の予防になります。耳垢が体質的に多い猫は上記の耳の掃除を定期的に行いましょう。耳垢の溜まるスピードによりますが、1〜2週間に1回拭いてあげると良いでしょう。

まとめ

猫の外耳炎は決して多くはありませんが、アレルギー性の外耳炎は室内飼育でも発症します。アメリカン・カールなど耳が反っている猫種は特に注意しましょう。外耳炎は根本的な原因が解消しないと再発、再燃することがあり、長期間にわたって治療が必要になります。定期的に耳を観察し、異常がみられるようであれば早めに動物病院を受診しましょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/