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もっと知りたい“猫”のこと|第37回

猫も花粉症になるのか?

猫も花粉症になります。花粉症はアレルギー反応の1つで、体内に入った花粉に対して免疫が過剰に反応を起こすことで発症します。免疫は動物種が違っても基本的な働き方は同じため、猫も人と同様に花粉症を発症することがあります。

注意点

ただし、人ほど有病率が高い疾患ではありません。日本人の花粉症の有病率は42.5%という報告があります※1。猫では具体的な有病率に関する報告はないものの、動物病院で働いていてもそれほど頻繁に遭遇する疾患ではありません。

春になると飼い主さんが花粉症を疑って、くしゃみをする猫の来院が増えますが、ほとんどのケースは一時的な症状。無治療で改善するか、猫カゼなどの感染症が原因です。

花粉症がより強く疑われる条件としては、毎年同じ時期に症状が現れる、窓の換気など花粉が侵入するタイミングで症状が悪化する、花粉症と類似する症状を示す病気(猫カゼなど)が否定的である、などが挙げられます。
症状プラスこれらの条件から総合的に判断しますので、自身で診断せず必ず獣医師に相談しましょう。

花粉症の検査

人の花粉症の検査では、血液検査でIgE抗体を測定することで、どの植物の花粉に反応しやすいか、またはパッチテストといって皮膚に直接アレルゲンを塗布して反応をみます。
しかし猫ではIgE抗体を測定できるものの、それほど精度が高くありません。花粉にスギなどの植物の陽性が出ていても症状がない猫、その逆に陰性でも経過から花粉症を強く疑う猫も多々います。

そのため現時点では花粉症の診断には、①花粉と接触することで症状が出る、②花粉を排除すると症状が改善する、という花粉と症状の因果関係を確認するしかありません。

主な症状とこんな症状が出たら病院にという基準

実際に猫のアレルギー性疾患の研究では花粉による皮膚炎、鼻炎、結膜炎などの症状が報告されています。具体的には顔の周りを痒がったり、鼻水、くしゃみなどの症状が出ます。
痒みが強くて自傷が見られる場合や、鼻が詰まり食欲不振に陥った場合は動物病院で一度相談することをお勧めします。
反対に多少くしゃみをしていても元気で食欲がある場合は、少し様子を見ても良いでしょう。

治療方法/自宅で気をつけるポイント

アレルゲンとなる花粉との接触を減らすことが最大の治療になります。猫はマスクやゴーグルを装着することはできませんので、掃除機や拭き掃除をこまめに行うこと、そして窓やドアから花粉が侵入しないようにすることを心がけましょう。
内服の場合はアレルギーの治療と同様であるため、抗ヒスタミン薬やステロイド薬を使用して炎症を抑え、症状を緩和します。

まとめ

確かに猫も花粉症になります。ただし診断方法が確立されていないためどのくらいの割合の猫が花粉症を発症しているかはっきりわかっていません。毎年同じ季節に症状が出る場合は、花粉症を疑います。皮膚の痒みや、結膜炎、鼻炎などの症状が強く出る場合は一度、動物病院で相談してみましょう。

※1:花粉症環境保健マニュアル2022

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/