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もっと知りたい“猫”のこと|第36回

猫が人と一緒に寝る理由

猫はこたつで丸くなる、という歌がありますが、猫は寒くなってくるとお気に入りの暖かい場所を見つけるのが上手です。夏場はそばに寄ってこないけど、冬になると膝に乗ったり、一緒に寝たりする猫もいるでしょう。
今回は猫が好む寝床の環境や、人と一緒に寝る理由を解説します。

猫が好む寝床

冒頭のように、まず暖かいことが条件です。窓際など陽が当たる場所、床暖房の発熱する箇所は特に好まれるでしょう。また猫が直接触れる素材は、タオル地のようなふんわりしているものを好みます。私の猫は飼い主が脱いだシャツの上でよく寝ています。肌触りが良いのと、飼い主の匂いがついているのでより安心するのでしょう。

猫用ベッドというものが市販されていますが、これは案外買っても入ってくれないという話をしばしば聞きます。その多くはサイズが大きすぎることが原因です。猫はジャストサイズで入れる場所を好むので、一見狭そうなぐらいのサイズの方が好むでしょう。もちろん専用のものでなくても籠や段ボールに毛布を敷くだけでも猫は喜んでくれるものです。

場所に関しては、ちょっと高さのある見晴らしの良いところを好みます。私たちはあまり高いところで寝ると落ち着きませんが、猫にとっては他の動物から襲われない高い場所は安全だと感じるからです。キャットタワーがあればベストですが、家が狭くて置けない場合は、棚やテーブルの一部を猫用にあけるだけでも良いでしょう。膝ぐらいの少し高いところでも猫にとっては大きな違いで、私の猫も必ず床ではなく台の上で寝ています。

猫が人と一緒に寝る理由

猫の祖先は単独生活動物なので、野生ではほとんど他の動物と接触することはありませんでした。しかしその中で警戒心の低い、他の動物が近くにいても恐れない個体が人と暮らすようになり今の猫になっています。そのため、現代の猫は社会性が高く、他の猫や人と一緒にいることを好むようになりました。
一緒に寝る理由の1つとしては、触れ合うことでコミュニケーションをとり安心するからだと考えられます。そして2つ目は、冬だけ一緒に寝る猫がいるというのはやはり暖かいからという理由でしょう。

猫と一緒に寝る上での注意すべきこと

寝返りをうった時に潰してしまわないか心配という声もありますが、私はこれまで寝返りで怪我をした猫を診察で見たことはありません。たまたま運が良いだけかもしれませんが、怪我をさせるリスクはそれほど高くないのではないかと思います。
ただし、子猫の場合は話が別です。2ヶ月齢ぐらいだと猫の体重は750gほどで、骨も細いです。3ヶ月齢を超えると1.5kg前後になり、自分で逃げることもできる力がついてくるので、それぐらいになれば安心です。

反対に高齢の場合は、一緒に寝たくてもベッドへの登り降りが億劫になっていることもあります。これは猫のステップとして、途中で経由できる台を置いてあげると良いでしょう。

まとめ

猫が一緒に寝てくれると暖かいだけではなく、こちらも癒されますね。上に乗っかるタイプだと重くて寝づらいのも“猫あるある”だと思います。
反対に絶対一緒に寝ない猫もいます。それは性格的なものなので、愛情が足りていないとか、飼い主さんをあまり好きではないということはありません。猫の個性なので尊重してあげましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/