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もっと知りたい“猫”のこと|第33回

猫のマイクロチップ

猫が脱走、震災などで行方不明になった時、マイクロチップが入っていれば発見される可能性がグッと高まります。
猫の顔や毛色は飼い主さん以外の人からすると似通っており、むしろマイクロチップが入っていないと帰ってくる確率はかなり低いでしょう。
今年からマイクロチップ装着が義務化されましたので、一度マイクロチップについて知っておくべきことをまとめました。

マイクロチップとは

直径2mm、長さ12mm程度の円筒状のカプセルで、専用のマイクロチップリーダーをかざすことで15桁の番号を読み取ることができます。
この番号と飼い主さんの情報を結びつけることで、個体識別と飼い主さんがわかる仕組みになっています。
マイクロチップの寿命は30年ほどあるため、一度入れれば生涯、機能が持続します。

マイクロチップ義務化の対象

令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されました。
誤解されやすい点として、既に飼われている犬や猫に対しては義務ではありませんので、マイクロチップを入れなくても、既に飼っている猫に対しては罰則などはありません。
ただし、今後販売される犬猫には必ず入っていますので、この機会に装着を検討しても良いでしょう。

マイクロチップを入れる方法

動物病院などで獣医師が装着を行います。ワクチンなどの注射よりも若干太いものの、基本的には麻酔などを使わなくても装着することができます。装着自体は普通の注射と変わりませんので、ものの数秒で完了します。
装着後は飼い主さんの情報を日本獣医師会のデータベースに登録することで、手続きは完了します。

マイクロチップの費用

動物病院によって異なりますが、3000円〜6000円程度が多いです。別途登録手数料が、オンライン申請であれば300円、紙申請であれば1000円かかります。

引っ越した場合のマイクロチップの手続き

住所や電話番号が変わった場合は、指定登録機関である日本獣医師会に新しい情報を届け出る必要があります。紙またはオンライン(https://reg.mc.env.go.jp/)で行え、手数料はかかりません。

マイクロチップにデメリットはあるのか

マイクロチップ接種によって腫瘍ができやすくなる、などの風説もありましたが、現在は否定されています。マイクロチップが健康に悪影響を与えることは基本的にはありません。

ただし、MRI検査の際に金属が干渉し、画像が乱れるというデメリットはあります。
MRI検査は脳や脊髄の異常を調べるときに行う検査です。猫はMRI検査が必要な椎間板ヘルニアなどの病気は少ないため、影響を受けることはほとんどありません。

また誤解されることが多いのですが、現在のマイクロチップはGPS機能はついていません。そのため猫の居場所がわかるものではなく、あくまで保護された際にマイクロチップに登録された番号から、飼い主さんに連絡がいく、という機能に限られます。

まとめ

今年から販売目的の動物へのマイクロチップ装着が義務化されたため、今後はほとんどの犬猫が装着されていくでしょう。
飼っている猫にマイクロチップが入っていない場合は、義務ではありませんが、大きなデメリットはないので、私も万が一に備えて装着を推奨しています。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/