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もっと知りたい“猫”のこと|第32回

猫の目ヤニ

大きくて美しい目は猫の魅力の1つですが、目ヤニがついていることも多いです。今回は猫の目ヤニについて、病気のもの、生理的なものの違いなどについて解説します。

なぜ猫の目ヤニができるのか、考えられる病気とは

目ヤニは目に入ったゴミを外に出す働きがあり、剥がれ落ちた角膜や結膜の古い細胞が含まれています。一方で目に炎症が起こったときは目ヤニの量が増えたり、免疫反応で色が白くドロッとしたものに変化します。

目ヤニの原因を大きく分けると、生理的なもの、感染症によるもの、そして炎症性のものがあります。割合としては猫では感染症が一番多いです。
生理的なものは病気ではありませんので、心配する必要はありません。
感染症は猫ヘルペスウィルスや猫クラミジアなどが特に目ヤニが出やすいです。
それ以外の炎症はアレルギー性の皮膚炎や結膜炎によって起こります。

病気が疑われる目ヤニの症状とは

(図1:生理的な目ヤニ)

目の内側(内眼瞼)に涙が溜まって乾いたようにこびりついている茶色の目ヤニは生理的な目ヤニの可能性が高いです(図1)。生理的なものの場合は結膜も赤くなっておらず、目ヤニ以外の症状はありません。

(図2:眼の病気が疑われる目ヤニ)

一方で病気が疑われる目ヤニはドロッと粘性があり、青っぱなのような色をしています。それ以外にも結膜が赤くなっていたり、角膜が傷ついている、目を半分つぶるなどの症状を併発していることが多いです(図2)。

ただし自身で目ヤニの特徴から原因を特定はせず、必ず動物病院を受診し、正しい診断を受けてください。

目ヤニは放置するとどうなるか

特に子猫は注意が必要で、目ヤニを放置すると結膜が癒着して目が開きずらくなったり、目の発達が止まってしまうことがあります。それ以外にも角膜炎が原因だった場合は、角膜が削れてしまう角膜びらん、角膜に穴が空いてしまう角膜穿孔の危険性があります。
病的な目ヤニが疑われる場合は必ず動物病院を受診しましょう。

目ヤニができないようにするには

基本的には目ヤニの原因を治療することです。細菌による感染症であれば抗生物質の点眼を使います。
ヘルペスウィルスのような一部の感染症は持続感染といって、完全に治癒することができないこともあります。その場合は目の周囲を清潔に保つために無理のない範囲で取ってあげると良いでしょう。乾燥しているものは、ぬるま湯につけたタオルを使うと取りやすいでしょう。
生理的な目ヤニの場合は個体差が大きく、全くつかない猫から毎日つく猫もいます。生理的な目ヤニもできないようにするのは困難です。

目ヤニがついた時のケア

上記のようにぬるま湯につけたタオルを使って拭きとると良いでしょう。ふやかすようにじっくりと目に当て、優しく拭いてあげましょう。嫌がる場合は別のタオルで体を巻いて動きを制限したり、おやつをあげながら行うと良いでしょう。
しかし特に炎症が強い場合は、猫が痛がって拭かせてくれないかもしれません。その場合は目を傷つける可能性があるので、無理に拭き取る必要はありません。
目の周囲の洗浄も治療の一環なので、動物病院できれいにしてもらいましょう。

まとめ

目ヤニは、猫では非常に多くみられる症状で、感染症が原因になっていることも多いです。特に子猫はかかりやすく、また重症化しやすいので、症状がみられたら必ず動物病院で相談しましょう。特に目ヤニ以外の症状がなく、茶色く固まっているものは生理的な目ヤニの可能性が高いです。生理的な目ヤニは猫が嫌がる場合は無理にとる必要はありません。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/