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もっと知りたい“猫”のこと|第27回

猫の熱中症

猫は暑さに強い動物であると信じられていますが、確かに犬に比べると熱中症で病院にくることは少ないです。これは猫の祖先がアフリカの砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコだったことと関係しているかもしれません。しかし猫でも密閉された部屋や、水分不足の状態だと熱中症になりやすいので注意しましょう。

猫の体温調節のしくみ

猫の体温調節は基本的に人間と同じで、脳の中にある体温を調節する神経回路(体温調節中枢)が担っており、暑くなったり寒くなったり外気温が変化しても、体温を一定の温度に維持しています。
猫と人間の1番の違いは、汗をほとんど出せないという点です。人間は皮膚の表面で水分を気化することで熱を逃しますが、これができる動物は人間以外では多くありません。

では猫はどうやって熱を逃すかというと、体を伸ばして表面積を増やして熱を放出します。夏場の外猫が日陰のコンクリートの上で伸びて寝ているのは、めいっぱい表面積を増やしているのです。
それ以外にも犬のようにパンティングといって舌を出してハァハァ呼吸することもありますが、猫はかなり状態が悪くならないとパンティングをしません。子猫では運動後にすることもありますが、成猫がしている場合は、熱中症以外にも心臓病や貧血が疑われますので、一度動物病院に相談しましょう。

熱中症対策のポイント

1番の対策はやはり冷房をつけておくことです。人間が心地よいと感じるほど冷やす必要はなく、温度設定で28度前後にしておけば基本的には大丈夫です。
留守番中に気をつけなくてはいけないのが密室にならないことです。トイレや物置などに閉じ込められると、冷房をつけていても密室の室温が上がり大変に危険です。
扉が開閉しないようにドアストッパーなどをつけるのも良いでしょう。
また、冷房の臭いや風が当たるのが嫌いな猫も結構多いので、風量を調節することも大切です。

それ以外には上記のように猫は体を床につけて熱を逃すので「ひんやりマット」を用意してあげるのも良いでしょう。猫用のものが市販されていますが、+わん+にゃん物件の床はフローリングなので、もちろんそこでも大丈夫です。
猫は外出することが少ないですが、病院に行くときは凍らせたペットボトルをタオルで巻いてキャリーに一緒に入れると良いでしょう。またカートタイプは照り返しで温度が上がりやすいので真夏は危険です。ただでさえ病院に行く猫は弱っていることが多いので、少しの距離でもタクシーなどを使った方が安全です。

熱中症の症状

発熱以外に、食欲低下、嘔吐、反応低下、過剰なグルーミングで熱を逃がそうとするなどが挙げられます。
重度になるとぐったりしている、パンティング、心拍が早い、流涎(よだれが出ること)、よろける/歩き方がおかしい、などがあり、これらの症状が出ているとかなり危険です。
動物の熱中症は発見が遅れやすく、命に関わることが少なくありません。

熱中症になった時の応急処置

すぐに動物病院に電話をし、指示を仰ぎましょう。発症した場所や症状によって対応は異なりますが、重度で応急処置が必要な場合は、扇風機やうちわで風を送りながら、氷のうを脇の下や、内ももなど、大きな血管が走っている場所に当てて冷やします。水をかける方法は、猫が驚いて興奮してしまう可能性があるので基本的にはおすすめしません。また冷やし過ぎも危険です。猫の体温は37.5〜39.2度が正常値で、それ以上下げると体が震えたり、血色が悪くなりますので注意しましょう。

まとめ

猫の熱中症はそれほど多くはありませんが、重症化すると命を落とす可能性もある危険な病気です。熱中症にならずとも、夏バテしないように、冷房や対策グッズを上手く使うと良いでしょう。
もし熱中症になってしまったら、慌てず動物病院に連絡し、応急処置をおこないましょう。対応スピードがとても大事な病気なので、日頃から温度や猫の様子を気にかけてあげることが大切です。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/