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もっと知りたい“猫”のこと|第26回

猫の食欲不振

猫は食事に対してこだわりが強く、気に入ったフードでも飽きると、突然食べなくなることがあります。体調が悪くて食欲がないのか、単純に食事が気に入らないのか、困った経験がある飼い主さんも多いでしょう。

食欲不振の基準

食欲不振の基準は明確に決められていません。食べてはいるけど量が減ったという場合は、体重が減少していたら病気の可能性が高いといえるでしょう。
体重の5%以上の減少(4kgの猫であれば3.8kg以下に減る)は病気を疑い、10%以上の減少(4kgの猫であれば3.6kg以下に減る)は病気の可能性が高いといえます。
ですので、日頃から体重を測っておくことが大切です。体重を測る頻度は、成猫であれば月に1度程度で十分です。
また最近ではトイレに体重計の機能がついているものもあり、自動でアプリに記録されるので便利です。

一方で全く食べない、もしくは数口しか食べない場合は体重に関係なく必ず病院を受診しましょう。
3日以上全く食べないと体の脂肪が急速に分解され、肝臓に負担がかかり重症化する危険性があります。

食欲不振になったときの対応

まず食事に飽きている可能性を考え、いろいろなご飯をあげてみましょう。ドライよりウェットフードの方が香りが強く、食欲を刺激します。またフードを猫の体温程度、36〜37度にすると食欲が増すといわれているので、温めてみるのも有効でしょう。
また絶対にこれは食べるという食材やおやつなどがあると良いです。食欲不振になったときに、それを与えても食べないとなると、本当に体調が悪いと考えることができます。
それでも食欲が戻らず、上の基準を満たしている場合は病気の可能性があるので動物病院を受診することをおすすめします。

考えられる病気

食欲不振は極端にいえば何の病気でも起こるため、どの病気かを予測することは難しいです。ただし、猫で慢性的な食欲不振の場合は、慢性腎臓病、歯肉炎、腫瘍疾患、炎症性腸疾患(IBD) 、糖尿病、胆管肝炎などの病気が多いです。
一方で急にパタリと食べない場合は、異物の誤食、急性腎障害、心筋症、膵炎、外傷などが考えられます。これらの診断には身体検査に加えて、画像検査や血液検査などが必要になります。

日々の対策

まずは愛猫がどれぐらいごはんを日々食べているか把握しておくことが重要です。ゆっくり食べる派の猫の場合は仕方ありませんが、フードを出しっぱなしにしておくのは食事量の把握という点では好ましくありません。
そして、やはり体重測定は大事です。「食欲が減ったかも」という理由で来院された猫の中にはむしろ体重が増えていることもあります。これは食べる量が減っても1g当たりのカロリーが高いフードに変更していたり、年齢があがって栄養要求量が落ちて、生理的な範囲内で食事量が減っていた、などの理由が考えられます。

まとめ

食事の飽き以外にもストレスや、気まぐれで食べないこともあり、危ない食欲不振か否かを判断するのは本当に難しいです。これは獣医師であっても外から見ただけではわかりません。
日頃から体重測定に加えて、愛猫のキャラクターや食欲が落ちるタイミング、食事の好みなどを注意深く観察しておきましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/