知りたい

プロが語るお役立ち記事

もっと知りたい“猫”のこと|第25回

猫の社交性~人懐っこい社交的な猫に育てるポイント~

現代の猫はかなり人懐っこくなっており、動物病院に来ても獣医師にスリスリと顔を擦り付けたり、診察室の上でゴロゴロと喉鳴らしをしたりする猫もいます。これは昔の猫では考えられないことであり、長い年月をかけて人に慣れてきました。
しかし人と暮らしている歴史が長い犬と比べると、まだまだシャイで警戒心が強い猫も少なくありません。どうやって育てれば社交的になるのでしょうか。

猫が社交性を身につける期間

動物がコミュニケーションを学ぶ期間を「社会化期」と呼びます。猫の社会化期は生後3〜9週齢の間です。この時期に適切な関係で他の動物と接触がないと、コミュニケーションが苦手な猫になってしまいます。
適切な関係とは、母猫や兄弟猫と遊び、そして人間と触れ合う機会があればベストです。動画サイトなどで猫が本来なら捕食の対象となる小鳥と仲良く寝ている動画が上がっていたりします。これは社会化期から一緒に住んでいて、攻撃の対象にならなくなっているのでしょう。

反対にこの時期を超えると社交的な猫に育てるのは少し難しくなります。人懐っこく育てるためには、この社会化期により長く、多くの人と接触する必要があります。1人の人としか交流がない猫よりも、多くの人に触れられた方が社交的な猫になるという研究結果があります。
ただし怖い体験も影響を与えてしまうため、猫の扱いを知らない乱暴な人や子供などが家にたくさんいるとむしろ人間嫌いになるので注意しましょう。

社会化期を過ぎたら

社会化期を過ぎてからも、多少は環境によって人馴れはします。例えばオフィスで飼われているような猫は、いろんな人が来るため知らない人にあってもそれほど緊張しなくなったりします。私が飼っている猫も自宅に取材が来ることが多く、小さい頃は人嫌いでしたが、最近では来訪者に挨拶するようになりました。
ただし成猫になると猫の性格はある程度固まっているため、いろんな人に会わせると強いストレスになってしまう可能性もあります。外に出すと目をまん丸くしたり、シャーシャー言ってしまう猫は無理にいろんな人に合わせるとむしろ人嫌いが悪化するので絶対にしてはいけません。

猫は大きく分けて社交的なアクティブな猫と、警戒心が強いパッシブな猫に分かれます。アクティブな猫はさらに機会を与えればより人懐っこくなる可能性がありますが、パッシブな猫はトレーニングを積んでも難しいことが多いです。愛猫がどちらのタイプか判断が難しい場合は動物病院の様子から獣医師に判別してもらいましょう。
また成猫になって保護した猫はやはり警戒心が強いことが多いです。この場合もこちらから距離を近づけるのではなく、猫が心を開くのを待ちましょう。

まとめ

以前は、純血種は人見知りの猫が多いといわれていましたが、今ではかなり社交的な猫が増えました。これはブリーダーさんの努力により、社交的な親猫を増やすだけでなく、社会化期に様々なコミュニケーションをとっているからだと考えられます。動物愛護法では生後8週齢未満の販売は禁止されているため、社会化期の大半はブリーダーのもとで過ごすからです。
保護猫の場合はできればこの時期までは兄弟猫や親猫とは離さない方が良いでしょう。保護された時点では他の猫と離れ離れの場合は、面倒見の良い猫が一緒に住んでいると、その猫からコミュニケーションを学ぶことができます。
一方で、ある程度年齢がいっている場合は無理に社交的にしようとすると、余計に反発して悪化する可能性が高くなります。その場合は猫の性格を尊重し、来客を減らすなど、できるだけストレスのかからないようケアしてあげましょう。

特別企画
ブログで話題の猫専門獣医師

山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/