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もっと知りたい“猫”のこと|第23回

こんな症状が出たら要注意① 〜猫の泌尿器疾患〜

動物によってなりやすい病気が違いますが、猫は泌尿器の病気が多いです。泌尿器とは、尿を作る腎臓、そして尿が通る尿管、尿を溜める膀胱、そして体外に繋がる尿道の4つに分かれます。
猫で多い代表的な泌尿器の疾患3つについて解説していきます。

1. 腎臓病

猫といえば腎臓病といわれるほど多い病気で、15歳以上の猫の9割は腎臓病でるという報告もあります。
症状としては尿毒素を排泄する力が低下することによる、倦怠感、食欲不振、嘔吐などがあげられます。
腎臓病は慢性と急性に分かれますが、文字通り徐々に悪化するのが慢性、ある日突然発症するのが急性です。
猫は慢性がほとんどですが、若い猫では急性の可能性もあるので注意しましょう。

残念ながら悪くなった腎臓を治療する方法は現代の医学では確立されていません。人間でも腎機能を失った場合は、透析治療や腎臓移植が必要になります。そのため治療目標は治すことではなく、症状を進行させないことになります。食事療法や腎臓の血流を増やす薬などがあります。
予防することは難しいですが、日頃から水分を摂取して、脱水にならないようにすると良いと考えられています。

2. 尿路結石

猫の尿は臭いが強いですが、それは尿を濃縮して濃い尿を排泄しているからです。しかし尿が濃い分、結石ができやすい特徴があります。
症状は結石ができる箇所によって異なります。
膀胱にできた場合は、血尿や頻尿の症状が出ることが多いです。一方で、尿管や尿道に結石ができてしまうと尿が流れなくなり、急激に体調が悪化することがあります。
尿道の場合はカテーテルで結石を膀胱に戻すことで応急処置ができますが、ガッチリ嵌っていると手術が必要になることがあります。また尿管の場合はカテーテルが届かず、外科的な対応しかできないこともあり、尿道よりも治療が大変です。そのためどこに結石ができたかはとても重要な情報です。
治療方法としてはやはり、手術で取り除くか、膀胱結石などで緊急性が低い場合は食事療法で溶かす方法もあります。
予防方法としては水分をしっかり摂取し、また人間の食事などミネラルが多いものを与えたないことが大切です。

3. 特発性膀胱炎

「特発性」という言葉は原因不明なときに使います。
人間が膀胱炎になる場合には先ほどの結石ができたり細菌が感染してしまったなどの理由があることが殆どですが、猫の場合は尿検査で正常にも関わらず膀胱炎になってしまう特発性膀胱炎という病気があります。これは膀胱炎の原因の中でも一番多く、猫の特徴的な病気です。
症状としては血尿、頻尿などが挙げられます。治療法は確立されていませんが、多くは1週間前後で自然に消失します。水分を摂取することと、尿の刺激を少なくする食事が再発予防になるという報告があります。
原因不明のため予防することは難しいですが、ストレスが関係している可能性が指摘されています。

まとめ

猫にとって泌尿器はとても病気になりやすい箇所といえます。がんや糖尿病など他の病気を治療していても最終的には腎臓病で亡くなってしまうことも多く、若い時からしっかり水分をとって、人間の食べ物を与えないようにしましょう。特別なフードでなくても、キャットフードであれば塩分などは十分制限されています。
また結石は手遅れになると手術が必要なる可能性が高まるだけでなく、命に関わる疾患でもあります。血尿や、頻繁にトイレに行く姿をみかけたらすぐに病院にいきましょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/