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もっと知りたい“猫”のこと|第22回

猫のくしゃみ

クシュンっと子猫がくしゃみをするのは愛らしくみえますが、これって病気なの?と疑問に思ったことはないでしょうか。猫も人もくしゃみをする原因は同じです。
今回は病気の可能性が低いくしゃみと、病院に行った方がいいくしゃみの特徴などについて解説します。

くしゃみの種類

くしゃみの機能には2つあります。1つは寒い時に出るくしゃみで、体温を上げるための生理現象です。鼻の中の体温が著しく下がった時に、体を振動させて体温を上げるためにくしゃみが出ます。
2つめは鼻の中に入った異物を排出するための噴出機能です。埃やコショウなどの刺激物が鼻に入った時に反射としてくしゃみが出ます。また風邪やアレルギー性鼻炎により鼻の中に鼻汁が溜まったり炎症が起こったりするときにも、くしゃみが起きます。

病院に行った方が良いくしゃみ

  • くしゃみ以外の症状が出ている

    鼻汁や結膜炎、発熱、食欲低下など、くしゃみ以外の風邪症状が出ている場合は必ず受診しましょう。
    特に子猫では単純な風邪でも重症化することがあり、対応が遅れると危険です。猫は匂いが食欲を刺激する上でとても重要な役割を担っており、鼻が詰まると食事を全く取らなくなってしまうことがあります。

  • 音がおかしい

    次に異常な呼吸音が出ている場合です。スースーと小さな寝息が聞こえるのは正常ですが、スピーっとなったりブーブー行っている場合はくしゃみの原因が鼻の中の出来物(ポリープなど)だったり、異物が詰まっている可能性があります。

  • 鼻血が出る

    猫は人間のように鼻血が出ることはほとんどありません。どろっとした血だけでなく、鼻汁が薄らピンクに染まっているだけでも異常と捉えます。特に高齢猫の場合、鼻の中に癌ができていることもあるので、注意しましょう。
    例外としてスコティッシュフォールドは鼻血が出やすい猫種です。これは軟骨の変形が耳だけでなく、鼻の軟骨にも起こっているためと考えられています。ただし見た目だけでは分かりませんので、初めて鼻血が出た場合はスコティッシュフォールドでも受診した方が良いでしょう。

猫の咳とくしゃみは似ている

くしゃみをしているという理由で来院した猫が、実際に診察すると咳であることが少なくありません。両方とも吸い込んだ空気を吐き出すという点は同じですが、咳の場合は疑われる病気が変わってきます。
舌を出していたり、ゼーゼーと数秒間続くのは咳の特徴です。見慣れていないと、くしゃみか咳か判断するのは難しいので、動画で撮影して獣医師に確認してもらいましょう。
咳の場合は、猫喘息や感染性気管支炎、肺の腫瘍などが原因としてあげられます。

「逆くしゃみ」とは

「逆くしゃみ」は人間にはない症状です。
通常のくしゃみは空気を吐き出しますが、「逆くしゃみ」は空気を吸い込むのが特徴です。主にブルドックなどの短頭種の犬に多いですが、猫でも起こることがあります。
逆くしゃみの原因は鼻の病気に加えて、喉の病気も含まれるので、若干疑われる病気が異なります。

まとめ

猫のくしゃみは単発であったり、元気で食欲が十分あればそれほど心配しなくていいでしょう。埃が鼻に入っただけだったり、人間のように寒くてくしゃみが出ただけの可能性が高いです。
一方で、青っ鼻のような鼻汁が出ていたり、鼻が詰まっている場合は注意が必要です。特に子猫は心配であれば一度受診しましょう。
くしゃみに対して家でできることは限られます。これからの寒くて乾燥する季節は呼吸器の病気は悪化する傾向にあるので、適度な湿度と温度を心がけてください。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/