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もっと知りたい“猫”のこと|第21回

猫の上機嫌のサインとストレスのサイン

猫は犬に比べると喜怒哀楽が顔に出ないといわれていますが、実際には尻尾や耳などを使って感情を表しています。ただ犬では尻尾を振ることが上機嫌のサインですが、猫では反対に不機嫌のサインだったりと、他の動物と真逆のこともあるので、猫はわかりづらいといわれる所以でしょう。
今回は体の各パーツに分けて上機嫌と不機嫌の特徴を解説します。

人では一番感情が出るパーツですが、猫では評価が難しいことがあります。
猫は顔に対して目の割合が高く、猫の可愛さの特徴のひとつです。一般的に目を細めているときはリラックスしている、大きく開いている時は緊張していると解釈できます。ただし猫が遊びたくて機嫌がいい時にも目を見開くので、目を開いているからといって一概に不機嫌とも言い切れません。
また、いわゆる黒目(瞳孔)の大きさも、緊張するほど大きくなりますが、周囲が暗いだけでも少ない光を取り入れるため大きくなります。
眼だけで判断せず、他のパーツと合わせて評価するといいでしょう。

ストレスが顕著に出るパーツです。猫は耳の筋肉が発達しており180度ぐるりと耳を動かすことができます。
耳を伏せる、いわゆるイカ耳と呼ばれる形は強い緊張を意味しています。イカ耳の猫を触ろうとすると怪我をする可能性もあるので決して近づかないようにしましょう。
一方、おもちゃなどで興味を引くと、ググッと対象物に向かって耳が前に出ます。リラックスしている時は適度に力が抜けていますが、通常のポジションと大きく変わりません。

尻尾

前述のようにバタバタ尻尾を振るのは猫では不機嫌の代表的なサインです。人間の貧乏ゆすりに近い感覚でしょう。長時間抱っこされていたり、撫でているときにこのサインが出たら一旦離してあげましょう。
尻尾をピンと立てるのは好意を表す姿勢と考えられています。この時は上機嫌と考えて良いでしょう。反対に尻尾を後ろ足の間に隠すような姿勢は強いストレスを感じています。また尻尾の毛が膨らんでいるのもかなり強い緊張を意味していますので注意しましょう。
尻尾を体に巻きつけている時よりも、体から離して放り投げている方がリラックスしていると解釈できます。

姿勢

姿勢においては、すぐに走り出せる体勢ほど緊張していると考えられています。座り込むにしても四肢を地面につけて小さくなっている時が、一番緊張度が高いです。
少しリラックスすると香箱座りといって前肢をたたんだ座り方をします。最もリラックスしているのは、横になりお腹を出している姿勢です。お腹という弱点を晒すのはかなり安心して機嫌がいい証拠です。

鳴き声

声色と喜怒哀楽の感覚は人間と近いものがあるでしょう。
やはり機嫌が良いと高い声で「ミャア」と鳴きます。声が高くても不機嫌な場合は語尾に力が入り「ワーオゥ!」というような鳴き方になります。猫は不機嫌だと黙るタイプなようで、病気や怪我をしているとほとんど鳴かなくなります。蛇のような「シャーッ」や、唸り声の「ウーッ」は当然ですが怒りや恐怖を意味しています。

まとめ

長年猫を飼っている方にとっては当たり前のことだったかもしれませんが、愛猫の飼育歴が浅かったり、猫を飼ったことがない方だと猫の機嫌がわからないかもしれません。そんな方が家に遊びに来たときや外で野良猫を可愛がっているときに、どんな時は機嫌がよくて触っても大丈夫か教えてあげましょう。猫のサインを理解すれば、猫は決してポーカーフェイスではないことがわかるでしょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/