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もっと知りたい“猫”のこと|第19回

猫の運動不足解消法

人間でも健康な体型への意識が変わってきています。昔は痩せることに主眼が置かれていましたが、現在はある程度の筋力を維持しながら脂肪を落とすことが望ましいという考えが主流になってきています。いわゆる除脂肪体重(LBM)という、全体重のうち体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓などの総量を示す数値が、自宅の体重計でも測定できるようになり、健康の指標の1つとして定着しています。

残念ながら猫では除脂肪体重や体脂肪率を測定できる機器は開発されていません。しかし体型をチェックするボディコンディションスコア(BCS)という方法を用いて、おおよその体脂肪率は推定できます。
愛猫が太り過ぎかもしれないと思ったら、一度獣医師の触診を受けると良いでしょう。

もしあなたの愛猫が肥満と診断されてしまったら、健康長生きのためにはダイエットすることをおすすめします。
肥満になってしまった猫のダイエット方法については「第11回 肥満になってしまった室内飼育猫のダイエット」で詳しく紹介していますので、今回は消費カロリーを増やす運動不足解消法について解説します。

垂直方向への移動を増やす

猫は体長の5倍ほどのジャンプ力をもっており、そのときに全身の筋力を最大限に使います。そのため猫が日頃からジャンプをしやすい垂直方向への導線を用意してあげましょう。
最も簡単な方法はキャットタワーを設置することです。理想的にはキャットステップといって壁に猫のための通路を埋め込む方法がありますが、賃貸住宅では難しいでしょう。またキャットタワーを置くスペースがない場合は、ソファや棚など高さを段階的にすることで、高いところまで登れるようになります(図1)。

(図1)

積極的に運動させる

実際におもちゃなどで猫を動かしましょう。写真で一部紹介しますが、おもちゃの種類は猫じゃらし以外にもさまざまあります。
「どのおもちゃが良いですか?」と聞かれることがよくありますが、猫の好みは個体差があるので色々と試してみるしかありません。うちの猫達も一匹は羽つきのおもちゃ、一匹は異常なまでにレーザーポインターに反応します。
またおもちゃは高価なものでも激しい猫はすぐに壊してしまうので、安価で沢山入っているものをお勧めします。

猫じゃらし

猫おもちゃ用レーザーポインター

ボール

ボールタワー

若い頃はたくさん遊んでくれたけれども、中年(猫では7歳前後)になって太ってしまった猫は、体が重いのか、おもちゃに見向きもしなくなることもあります。そういう猫は食欲旺盛なことが多いので、ご飯の時間に、ドライフードをバラバラに置いたり、おもちゃみたいに投げて運動させたりするのも良いでしょう。あえて高いところと低いところに交互に置くだけでもかなりの運動になると思います。

同居猫を増やす

猫同士で遊ぶので、1匹飼いよりも多頭飼育の方が猫は運度不足解消になります。ただし猫を増やすことで、デメリットもあるので注意しましょう。
もし愛猫が既に高齢の場合、若い猫がくるとストレスで体調を崩してしまう可能性もあります。また、まだ若くてもすごくシャイ猫は仲良しにできないこともありますので、猫の性格を見極めて判断しましょう。

まとめ

猫の運動不足を解消するのは、もしかしたら自分のことよりも大変かもしれません。猫は集中力が続かないので遊ぶのは1日15分ほどで十分です。
その他の方法としては猫向けの動画(ネズミが動いているものなど、動画サイトで検索するとたくさん出てきます)をテレビで流したり、自力でランダムな動きをする電気式のおもちゃなどもあります。
また食事面ではタンパク質が高い食事を与えると、筋肉量が増え、基礎代謝が上がるという実験結果もあります。ローカーボ(低炭水化物)、ハイプロテイン(高タンパク質)キャットフードも販売されていますので、食事も併用するとより除脂肪体重(LBM)が維持され、より運動効果も高まるでしょう。

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山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/