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もっと知りたい“猫”のこと|第18回

猫の室内飼育に潜む危険な場所

猫は飼いやすい動物であると巷ではいわれていますが、初めて飼った方は行動範囲の広さや、何度でも遊ぼうとする好奇心に驚くことでしょう。猫は体長の5倍程度はジャンプすることができるため、人間が届かない冷蔵庫やエアコンの上に登ってしまうこともあります。また人や犬が食べても大丈夫なものでも、猫だけは中毒になってしまうものもあります。
今回は家の中に潜む危険を解説しますので、これまで長く猫を飼って来た方も一度復習を兼ねて家の中をチェックしてみましょう。

キッチン、火の元

猫は基本的に火を怖がりますが、沸騰した鍋やフライパンに足を入れてしまい火傷をした猫が来院することがあります。
火傷は広範囲に及ぶと治療期間が数ヶ月に及ぶことや、場合によっては手術が必要になることもあります。雷など大きな音が鳴った時に慌てて火傷をしてしまうことがあるので、キッチンに近づけないようにすることが大切です。
火を使っていない時も、キッチンに近づいたら霧吹きで水をかけるなど、嫌なことが起こると猫に学習させておくとよいでしょう。
キッチン以外ではアイロンの匂いを嗅いで鼻を火傷し、髭が焦げてしまった猫を見たことがあります。大事にはいたりませんでしたが、アイロンが倒れてしまうと危険です。

またタマネギやニンニク、香辛料なども摂取すると中毒になってしまうことがあります。それ以外にも手羽先などの骨付き肉も猫が喉につまらせるため、ゴミ箱を漁らないよう注意しましょう。
またワイングラスなどの割れやすい食器を留守番中に猫が触って壊してしまうと口に入れたり、怪我をすることがあります。これらのものは、必ず戸棚や引き出しにしまっておきましょう。

室内での怪我

猫は関節が柔らかく、バランス感覚も優れているため骨折することは犬に比べて稀です。それでも猫が骨折する場合は、アクシデントが絡んでいることがあります。
多く見られるのは、ジャンプした先に布が置いてあり、滑って布ともつれながら落下して骨折してしまうケースです。その他にもキャットタワーの故障で落下したり、細いみぞに足が引っかかって、猫が自分で無理に抜こうとして折れてしまうこともあります。特に大柄な猫は負荷がかかりやすいので、注意しましょう。

それ以外には、脱走による怪我があります。猫は空中で姿勢を正し、足から着地することができます。そのため「数十階から落ちた猫が生きていた!」という類のニュースが話題になることがありますが、実際には2〜3階から落下して骨折することもあります。むしろ、中途半端な階数から落下した方が姿勢を正す時間がないため、怪我をしやすいという意見もあります。
窓・ベランダ・玄関周辺に猫が近づかないよう、また猫がいるときは開閉しないよう気を付けましょう。

猫にとって危険なものの管理

人間の薬やサプリメントは量が多いだけでなく、人では安全でも猫では微量でも危険なものもあります。例えば、抗酸化作用のあるサプリメント「α-リポ酸」は、どこのドラッグストアでも簡単に手に入りますが、猫が一定量摂取すると急激な低血糖を起こし、急死してしまいます。
薬やサプリメントは戸棚にしまい、猫がいたずらしても開かないようにしましょう。

花や観葉植物にも猫に対してだけ強い毒性を示す植物があります。その代表がユリ科植物で、花弁だけでなく茎や花粉だけでも急性腎臓病を起こす危険性があります。植物を飾る前に、猫に対して危険がないか必ず確認しましょう。

まとめ

猫は基本的に運動神経がよく、警戒心が強いので自分で危険を回避します。しかし中には不運が重なり、怪我や中毒になってしまう猫がいます。
猫目線にたって、家の中に危険な場所がないか一度チェックしてみましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/