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もっと知りたい“猫”のこと|第16回

猫に芸を覚えさせることはできるのか?

芸達者な犬に比べて、猫は芸を覚えないといわれます。事実、犬に比べるとお手や、ハウス(ケージに戻ること)ができる猫は圧倒的に少ないでしょう。
そもそも犬というのは昔から集団行動をしていた動物で、集団の中でのコミュニケーションに長けています。
一方で猫は単独生活動物ですから、コミュニケーションは少ないですし、誰かに褒められたから嬉しいという感覚はありません。それが自立性や媚びない性格の根本になっており、猫の魅力でもあるのですが。

しかし世界には猫のサーカスというものもあり、猫が芸を覚えることは実は可能です。その1つの方法がクリッカートレーニングというものです。
クリッカーというのはボタンを押すとカチッとなる簡単な構造のものです(写真)。この音が合図となり、猫とコミュニケーションをとります。
クリッカーは常に同じ音がなることが重要なので、カチッとなるボールペンでも代用可能です。

トレーニングをするには何かご褒美がなくてはいけません。上記の通り、猫は褒めても全く喜びません。猫の最大のご褒美は、美味しいおやつです。猫が思い通りの行動をしたら素早くクリッカーを鳴らし、おやつを一口、これを繰り返します。
ただし最初から”お手”のような難しい行動を要求しても成功しません。猫にお手を覚えさせるには、まず猫の鼻の近くに手をかざし(ペンを持ってかざしてもOK)、鼻が触れたらクリッカーを鳴らしておやつを与えましょう。そうすると猫は手に触れることと、クリッカーの音と、おやつがもらえるという関連性を学習します。

第二段階として、かざした手に猫の手が触れた時にクリッカーを鳴らしおやつをあげてください。そして徐々に人間の手を猫の足元の方に移動させて、お手の動きに近づけていきましょう。その様子を動画でご紹介しているので、ぜひご覧ください。(動画は最後にあります。)

1日10分でもいいのでこれらの動きを繰り返していると、猫も芸を覚えることができます。実際に猫がハイタッチをしたり、障害物をジャンプで飛び越えたりしている動画がインターネット上にたくさん投稿されています。某CMの呼び鈴をチーンと鳴らす猫も、鳴らす行動と音、そしておやつをもらえるということを結びつけている点ではクリッカートレーニングと同じ原理です。

クリッカートレーニングは単純に芸を覚えさせるだけでなく、猫の運動不足解消にもなります。また環境の変化が少なくなりがちな室内飼育猫にも良い刺激になり、飼い主さんと良好な関係を築くツールにもなるでしょう。

最後に、うちの猫のクリッカートレーニング中の動画を載せておきます。まだまだお手の段階ですが、手に触れるとおやつがもらえるところまでは覚えてきました。
クリッカートレーニングには向き不向きがあるようで、落ち着いていて集中力がある猫の方が向いています。うちの猫だと動画のハモちゃんが一番得意です。

小学生の夏休みの自由研究としてクリッカートレーニングを愛猫にマスターさせたという話も聞いたことがあります。
みなさんも愛猫と一緒にクリッカートレーニングをしてみてはいかがでしょうか。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』https://nekopedia.jp/