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もっと知りたい“猫”のこと|第14回

犬と仲が良い猫について

動画サイトやSNSで猫と犬が仲良くしている姿を見かけたことはないでしょうか。猫派でも犬派でもなく両方好き、犬と猫を一緒に飼いたいという方も増えています。
猫という動物は数千年にわたり単独狩猟動物として1匹で生きてきたため、本来他の動物と慣れ合うことはないはずです。ところが現代の猫は犬だけでなく、本来捕食の対象となる鳥類やハムスターなどとも仲良くしていることがあります。なぜこのようなことが可能になったのでしょうか。

猫にも成長の過程に社会化期というものがあります。社会化期とは文字通り社会に順応するための期間です。この期間に人と接触が少ない猫は、成猫になってからも人を怖がるようになったという研究結果があります。大人になって保護された猫が人を怖がるのは、社会化期に人と接触しなかったのが原因です。大人になってから性格を変えるのが難しいのは猫も同じということです。
猫の社会化期は2〜7週齢の間であると考えられています。現在の動物愛護法で子猫の展示、販売を生後8週齢以降に延ばす運動が行われていますが、これは社会化期に兄弟や親猫と過ごすことで、社交性を高め将来の問題行動を減らす効果があるのではと考えられているからです。

つまり猫が生後8週齢未満の時期に、犬など他の動物と一緒に生活していると仲良くなる可能性が高くなります。ただし、ハムスターや鳥など本来猫の獲物になる動物は8週齢未満では攻撃する可能性があるので、一緒にすることは避けましょう。
一方で、上記のようにブリーダー、またはペットショップから猫を購入した場合はすでに社会化期が終わっています。なので、犬と仲の良い猫が少ないのではないかと考えられます。

しかし、最近では社交的な猫が増えてきています。以前は野良猫として人の生活圏の周囲で暮らしていた猫たちが家の中に入るにつれて、より人や動物を恐れない猫が生存競争で有利になり生き残ってきたためと考えられています。
そうした社交的な猫は8週齢を超えて初めて犬と遭遇しても恐れず仲間のように接することがあります。今後も人にとって飼いやすい猫の需要は増えると考えられるので、ますます猫は社交的になっていくでしょう。将来的には犬と猫は仲が悪いという風説がなくなるかもしれませんね。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/