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もっと知りたい“猫”のこと|第13回

猫と暮らす上で早春に気をつけること

2月中旬から3月にかけては早春と呼び、徐々に温かくなり日が長くなり始めます。この時期は猫の体内にも変化が現れます。
冬の被毛が生え変わる時期ですので、抜け毛が増えてきます。抜け毛は毛玉の原因になりますし、飲み込んで詰まってしまうと大変です。特に長毛種は注意が必要で、この時期はいつも以上にブラッシングをしてあげましょう。
あまりに抜け毛が多い場合は、水が嫌いでなければ一度シャンプーをしても良いでしょう。お水が怖い猫でもスプレーで毛を濡らしながらブラッシングすれば毛が舞いにくくなるので幾分らくになります。

春は、ノミやダニなどの寄生虫が活発になる時期でもあります。
犬はフィラリアの予防が広く認知されていますが、猫もフィラリア症を発症することはあまり知られていません。フィラリアは犬糸状虫とも呼ばれ、「犬」と付いているのが原因かもしれません。
猫のフィラリアは犬ほど発症率は高くありませんが、呼吸困難を起こし命に関わることもあるので、近年では予防することが推奨されています。予防は飲み薬ではなく、スポット剤と呼ばれる背中に垂らすタイプもあるので投薬も簡単です。

最近では、猫も花粉症になる可能性が指摘されています。
花粉症というと人では鼻水や目のかゆみが主な症状ですが、猫ではアレルギー性皮膚炎のように皮膚が赤くなる症状が強く出ます。猫花粉症は気づかれないことが多いですが、花粉の飛ぶ時期だけに症状がでる、または悪化する場合は花粉症の可能性があります。
人の花粉症ではスギ花粉が有名ですが、猫はそれ以外の植物にも反応する場合が多いです。また、初夏や秋に限定して症状がでる猫もいます。

さらに、春は猫にとって繁殖シーズンになります。
猫は日の長さによって性ホルモンが調整されており、日照時間が増えると発情がはじまります。私のブログでも、毎年この時期になると発情について書いたページのアクセスが急増します。
猫は発情していても出血することがないため、外見からは分かりにくく、ゴロゴロ床に体をこすり付けたり、甲高い声で鳴くなどが発情のサインです。1歳未満でも妊娠することがあるため、もしまだ避妊手術をしていない場合は動物病院に相談しましょう。

また、この時期は子猫を保護して新しい家族が増えることも多いと思います。保護した子猫は、必ず動物病院で全身のチェックを受けましょう。
外から来た猫は感染症をもっている可能性が大きいため、感染の可能性が否定されるまで先住の猫と一緒にしないようにしてください。特に猫エイズウィルスや猫白血病感染症は、外見では全くわかりませんし、感染してから検査結果に反映されるまで、3週間以上かかるので注意が必要です。

※ご入居後に新たにペットを飼育される場合やペットをさらに増やす場合は、必ず飼育前に「ペット飼育申請」を行ってください。

まとめ

抜け毛、発情、新しい家族、感染症、花粉アレルギーなど暖かくなるのは嬉しいですが、春にも気をつけるポイントはいくつかあります。夏や冬ほど危険は少ない時期ですが、気を抜かず愛猫が元気で健康に過ごせるよう気をつけましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/