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もっと知りたい“猫”のこと|第12回

猫と暮らす上で冬に気をつけたいこと

年末が近づき、寒さが本格的になってきました。犬猫の動物病院はフィラリア予防や狂犬病予防接種の春夏が繁忙期で、冬は比較的診察が落ち着いているのが一般的です。しかし当院のような猫専門病院では季節に関わらず来院数は一定であることから、冬場も病気になる猫が多いことがわかります。

冬に気をつけたいこととしてまず浮かぶのが、室温管理だと思います。ふかふかな被毛とは裏腹に、猫は寒さに弱い動物だといわれています。現在の日本猫の祖先はエジプトに住んでいたリビアヤマネコだとされ、暖かい環境で暮らしていたためでしょう。毛布や猫テントなどを設置し、熱が逃げない工夫をすると良いと思います。
暖房をつけるのであれば20〜22℃に設定にしておけば、猫にとっても家計にとっても無理のない設定になります。その他には、昔ながらのこたつ、最近の床暖房はやはり猫人気が非常に高いようです。
しかし、石油ストーブなどは十分に注意してください。猫がストーブを倒さないようにすることはもちろん、近づきすぎて自分のヒゲを焦がしてしまうことのないようにしましょう。

暖房をつけると乾燥も気になります。猫は乾燥に強い動物ですが、鼻炎や喘息の持病がある猫は症状が悪化しやすいので、加湿にも力を入れましょう。適切な湿度は、人が快適だと感じる40〜60%で大丈夫です。

また、この季節は猫の体にも静電気がたまります。静電気対策も、やはり始めは湿度を高めることです。湿度が35%以下になると静電気が発生しやすくなるといわれています。あまりにひどい場合は静電気除去首輪、スプレーが市販されていますので試してみると良いでしょう。

冬になり寒さが厳しくなると、猫も飲水量が減り、泌尿器系の病気になりやすいといわれています。実際に統計学的なデータはないものの注意が必要です。特に膀胱結石が尿道に詰まると救急で手術が必要になることもあり、とても大変です。夏場同様に飲み水をこまめに交換し、複数の場所に水飲み場を設置しましょう。
また、冬場は寝ている時間が増え、運動量が下がるため肥満にも注意しましょう。肥満の危険性は過去のコラムでも触れていますが、糖尿病や膀胱炎は肥満になるとリスクが高まることが知られています。

冬場は普段近寄ってこない性格の愛猫でも布団に入ってきたり、寒くて室内で過ごす時間が増えると自然と猫との時間も増えたり、愛猫家にとって嬉しい季節でもあります。しっかりと猫の冬対策をして、元気で健康に過ごしましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/