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もっと知りたい“猫”のこと|第1回

私が猫専門病院を開いた理由

近年は猫ブームともてはやされていますが、私が学生の頃は犬派が多かったと記憶しています。獣医学部でも犬、そして馬や牛などを扱う授業が多く、決して猫は主役ではありませんでした。
当時から将来は猫専門病院をやりたいと先生や先輩に相談しては「まずは犬猫両方を学べる病院で修行してはどうか」「猫だけでは経営的に厳しいのでは」とアドバイスされていました。それでも今の道に進んだのは、昔から自分の猫を診てもらうのであれば、猫が好きで獣医師になった、そして猫に詳しい獣医師が良いと思っていたからです。

基本的には様々な動物を診察する職業ですが、猫についてのみ学び続けることが許されるのは猫専門病院しかありません。それは私の人生の1つの目標である、猫についてもの凄く詳しい人”猫親父”になるためには欠かせない条件でした。これは自分がおじいさんになった時に獣医学的な猫の知識はもちろん、猫にまつわる歴史、文化にも詳しくなっていたいという意味です。

猫の魅力

猫専門病院を開くほどに猫に惹きつけられた私ですが、なぜ猫が魅力的なのかは未だに説明するのが難しいです。
大きな瞳や、肉球、ふわふわな被毛なども猫を語る上で外すことはできません。ただそれだけでなく、私は猫に何か特別なものを感じます。自分のペースを守り、迎合しない生き方は憧れるものがありますし、静かな歩き方や視線からは知性を感じます。
ただ可愛いだけではないプラスアルファが猫の魅力だと思います。

現在の猫と人の暮らし

すでに多くの先進国で猫は犬を抜き、飼育頭数No.1になっており、日本でも時間の問題だといわれています。
今では人の生活にうまく順応している猫ですが、その道のりは決して穏やかではありませんでした。西洋では魔女の使いとして認識され、悲惨な扱いを受けたこともありました。
猫は犬と違い、長い間単独で生活してきた動物です。そのためネズミ捕りとして一部で重宝されましたが警戒心が強く、人に懐きませんでした。しかし人の生活する場所の近くで暮らす一部の猫に変化が起こり、人を恐れない猫が現れました。それが人と猫の共生の始まりといわれています。
徐々に友好的になってきた猫ですが室内で飼育されるようになったのはここ20〜30年のことです。かつて猫の歴史で短時間にこれほどまで生活環境が変化したことはありません。

環境が猫に与える影響(寿命なども含めて)

人と暮らすようになり、猫の生活環境はガラリと変わりました。室内には猫エイズなどの感染症や、交通事故の危険性がなく、それまで10歳ほどだった平均寿命が16歳を超えました。
一方で室内飼育では、運動不足やストレスに関係する病気が増えてしまいました。猫は糖尿病になりやすく、やはり肥満だとリスクが高まります。そのほかにも猫は人よりも五感が発達しており、人間には気にならないことでもストレスを感じているかもしれません。
これからさらに猫の寿命を伸ばすには、猫にとって豊かな室内環境を用意してあげることが大切だと感じます。そのためには猫のことを知ることが重要です。
次回は猫の性格と特徴について解説しますので、一緒に学んでいきましょう。

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山本先生もっと知りたい“猫”のこと

山本宗伸先生プロフィール

猫専門病院『Tokyo Cat Specialists』院長・獣医師
授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫の魅力にはまり、獣医師になることを決意。獣医学生時代から猫医療の知識習得に力を注ぐ。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。著書「猫のギモン!ネコペディア」。国際猫学会ISFM所属。日本大学獣医学科外科学研究室卒。ブログ『猫ペディア』http://nekopedia.jp/