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【特別企画 第1弾 】ペットの食育(後編) / ペット栄養コンサルタント 奈良なぎさ先生

ペット栄養コンサルタントとしてご活躍されている奈良なぎさ先生に”ペットの食育”に関する特別コラムをご執筆いただきました。
今回は「犬の食育に関する基礎知識」、次回は「猫の食育に関する基礎知識」をお届けします。

奈良なぎさ先生

猫の食育とは?

前回は、犬の食育とは「犬が健全に生きていくための食の知識習得、選択および実践を可能にする『飼い主さんを育てること』」であり、そのために必要な基礎知識についてお話しました。猫の食育も「食」に関する基礎知識は同じですが、犬とは異なる「猫だから」のポイントがあります。この違いを知ることが猫の食育では最初の一歩であると同時に、現在起きている問題解決の糸口にもなります。

猫はどんな食べ物が好きなの?

どんな食べ物を食べるのかを「食性」、どんな食べ物を好むのかを「嗜好性」と言います。本来、食性や嗜好性は、その生体の生理的要求にかなうものを選択できるように体はできています。そのため、完全肉食動物である猫は、肉、魚など動物性たんぱく質に含まれる脂肪の臭いを好み、アミノ酸の味に嗜好性が高いのが一般的です。
犬よりも炭水化物を必要としないことから、猫は甘みを感じる味覚はほとんどありません。ところが、最終的な嗜好性は「経験」により決定されるため、甘いもの好きの飼い主さんからおすそ分けをもらったりしていると甘い物も食べるようになります。しかし、実際に猫が好んでいるのは甘さではなくそこに含まれるバターや卵のにおいや味です。
糖質からのエネルギーは皮下脂肪になりやすいため、おすそ分けをするなら味のない加熱調理をした肉や魚、卵などが本来の食性には適しています。

キャットフードの選び方で注意することは?

現在市販されているドライフードはすべて「総合栄養食」で主食に適しています。ところが、ウェットフードにはそれ以外に、「一般食、副食、栄養補完食」といったものがあります。
総合栄養食がそのフードと水だけで猫の健康が維持できるように栄養バランスを考えられているのに対して、これらのフードは嗜好性を重視して作られています。
たんぱく質と水分が多く脂肪が低いのが特徴で、猫の必須栄養素やエネルギー不足を生じるリスクがあるため、主食には適していません。おやつやトッピングとして利用しましょう。

ドライフードを食べた直後に吐き戻すのはなぜ?

猫の胃は犬のように食いだめはできません。一度にたくさん食べすぎるとは吐き戻すのはこのためです。
猫の本来の食性では「少量頻回」。しかも、夜行性なので、明け方に空腹になります。
このようなことを考えると、朝、昼、夕方、寝る前、明け方といったように1日分の食事を4~5回に分けて与えるのが体のしくみにかなっているのではないかと思います。
もちろん、1日2回で問題がない場合はそのままでも構いません。日中や早朝は自動給餌機を利用すると留守中も安心ですし、飼い主さんの睡眠不足の解消にも役立ちます。

うちの猫、好き嫌いが激しいのはなぜ?

飼い主さんが「猫の好き嫌い」と考えているだけで、食べない猫が正しい判断をしている可能性があります。
その一つの理由として考えられるのが「フードの酸化」です。ペットフードには酸化防止剤は入っていますが、それでも開封後は酸化が進みます。特に表面は袋の開け閉め時に空気に触れて酸化しやすい環境にさらされています。袋の底の方からフードを取り出したものを与えると食べるようなら酸化が原因です。
開封後のフードは袋の口をしっかりと締め、そのままフードストックに入れて密封するなど保存方法に気をつけてみましょう。

水をあまり飲まないけどどうしたらいい?

猫の体は水分のリサイクルの効率が高くできているため、喉の乾きを覚えにくい特徴があります。
しかも、ドライフードを主食としている猫の大半は水分摂取不足です。飲んでいると思っても必要量は確保できていないのです。
猫に水分摂取を促すには、猫の狩猟本能を利用し循環式や噴水式の給水機を利用する、水温をあげるなどが役立ちます。
また、ひげが皿のヘリに当たるのを嫌うため広めで浅い給水容器が良いでしょう。設置場所は複数置くのも効果的ですが、トイレのそばに置くのはNGです。

まとめ

このようなこと以外にも、猫は個体差が大きいという特徴があります。単に「猫だから」が通用しないことも多いのです。愛猫をよく観察し、愛猫から学び健康で長生きができる食育を心がけてください。