
旭化成専属獣医師の私「佐々木亜子」がペットに関する疑問や相談をその道のプロに直接聞きに行く訪問対談企画「プロの考え、プロのこだわり。」ペットに関する素朴な疑問や役に立つ情報を、獣医師としての視点を交え専門家の先生にお伺いします。
第3回目となる今回は、ペット栄養コンサルタントとして動物病院向けに「ペットベッツ栄養相談」を主宰している奈良なぎさ先生と、「犬猫の栄養管理」について、様々なお話をさせていただきました。
第3回 ペット栄養コンサルタント 奈良なぎさ先生 × 獣医師 佐々木亜子
テーマ『犬猫の栄養管理』
- 佐々木
- 先生はペットの栄養コンサルタントをされているということですが、どのようなきっかけでこのようなお仕事を始められたのでしょうか。
- 奈良
- 自分が飼っていた犬がある時ドッグフードを食べなくなってしまったことがあり、なんで食べないんだろうと疑問に思ったことがきっかけで、ペットの栄養学に興味を持ちました。
ただ、その頃まだ日本ではペットの栄養学は発達していなかったので、ニューヨークに行って資料を探したりして勉強しました。
- 佐々木
- すごい行動力ですね!
ところで、そもそも手作り食と市販フード、どちらがおすすめなのでしょうか。
- 奈良
- 結局のところ、飼い主さんが何をどこまでできるのか、ということだと思っています。
どれだけお金をかけられるのか、手間をかけられるのか、勉強できるのか…。私は、お仕事が忙しい方にはドッグフードを、ご自身に余裕があって食事に興味がある方には手作り食を勧めています。
食事作りは毎日のことなので、飼い主さんにストレスがかからないことがとても大事です。
- 佐々木
- 食事は継続することが大切ですからね。
- 奈良
- そうです。一度その食事を与えたからと言って体に変化が出るものではないですし、継続しないと、本当にその子にその食事が合っているかの判断も難しいです。
理想的には3ヶ月~1年くらいかけて、排便状態や血液検査をしながら経過観察していけると良いと思います。

- 佐々木
- 市販フードでも大きく分けて「ウェットフード」と「ドライフード」がありますが、使い分けのポイントはありますか。
猫は飲水量がもともと少ないので、ウェットフードの方が良いと思いますが、いかがでしょうか。
- 奈良
- その通りだと思います。一般的にドライフードよりもウェットフードの方が“高タンパク・高脂肪”のことが多いので、特に猫には適していると思います。尿石症の既往歴がある場合などで、水分を多めに摂りたい時にもウェットフードが向いています。
ただ、ウエットフードの中には水分量が多い商品があり、そのような場合は水分でお腹いっぱいになってしまい必要なエネルギーや栄養素を確保できていなことがあります。そのため、少食の子にはドライフードを与えた方が良いですね。それと、ウェットフードは酸化防止剤が入っていないことが多いので、開封したら早めに食べなくてはいけなかったり、コストや使い勝手の面で難しい部分もあります。

- 佐々木
- なるほど。
おやつについてはいかがですか?選ぶポイントがあれば教えてください。
- 奈良
- 主食がどういうものかによって選ぶと良いです。メインのフードが低タンパクなら、タンパク質源のおやつをあげて補ったり、高タンパクのフードなら野菜とか炭水化物とか別の栄養源のものを与えるようにして、食事全体のバランスを意識することが大切です。
注意したいのが「歯磨きガム」です。健康目的に与える飼い主さんが多いと思いますが、意外と糖類が多く含まれるので、カロリーが高いものが多いです。歯に良いからと言って与えていても太ってしまうことがあるので、与える量には気を付けてほしいです。
- 佐々木
- 普段からフードやおやつの袋に書いてある栄養成分の値を気にすることが大事ですね。

- 佐々木
- ところで、先生は猫には手作り食はあまり勧めないと伺いましたが、嗜好性の問題でしょうか。
- 奈良
- そうですね。猫は1才までに嗜好性が決まると言われていて、その期間に色々な種類の食べ物を経験していない猫は、そのあと別のフードや手作り食に変えることが難しいことがあります。
- 佐々木
- 犬は何でも食べる子が多いので、手作り食にもトライしやすい、というわけですね。
手作り食で使う食材を選ぶポイントは何ですか?
- 奈良
- 「与え慣れているもの」で作ることが大切です。新しい食材にチャレンジするときは、少量あげてみて、その後の体調や翌日の排便状態を観察しながら、その子にとって大丈夫な食材なのか確認していくことが必要です。
- 佐々木
- 昨今、ペットの肥満も問題になっていますね。
ダイエット用フードを使う飼い主さんも多いと思いますが、注意したいことはありますか。

- 奈良
- 犬の場合は何でも食べる子が多いのでダイエット用に切り替えやすいのですが、猫は嗜好性の問題があるので少し難しいです。猫は、犬みたいに元のフードに少量ずつ混ぜる方法だと元のフードも食べなくなってしまうことがあるので、元のフードとは別のお皿に新しいフードを用意して、それぞれの量のバランスを少しずつ変えていく方法がおすすめです。
ただ、なかには急激なダイエットをさせてしまう方がいて、それが原因でペットが体調不良になってしまうことがあります。健康に無理のない減量ができるように、動物病院で減量計画を組んでもらうといいですね。
- 佐々木
- ドライフードをふやかして、カサ増しするのも一つの方法ですね。
- 奈良
- そうですね。もともとドライフードを食べている子は水分量が足りていないことが多いので、ふやかすことで水分摂取も促せるし、満腹感も与えられるので、ダイエットの方法として良いと思います。
- 佐々木
- 普段から太らないように気を付けた食生活・生活習慣にすることが大切ですね。

- 奈良
- 1-2週間に1回体重を測ったり、日々の運動を定期的にさせてあげることも大事だと思います。
人間もそうですが、太りきってから痩せるのはとても大変です。
- 佐々木
- 最後に、飼い主様へ伝えたいことはありますか。
- 奈良
- 理想としては、エネルギー量を自分で計算をしてフードやおやつの調節をしてほしいと思います。
あと、「その動物がどういう動物か知ること」も大切です。例えば、猫の場合は猫が本来好まない愛情方法で接触することでストレスになって脱毛してしまうこともあります。
それと、日々できることとしては「自分のペットをよく観察すること」です。よく携帯電話をしながら犬の散歩をしている方もいますが、歩いている様子からも健康状態の変化に気づくこともあります。日々観察することで、早期に異常などに気付き、それをきっかけにもっと愛猫・愛犬について知ってほしいと思っています。
- 佐々木
- ありがとうございました。

手づくりおやつ、ごはん レシピ

納豆ボール
材料
6個分 1個≒7kcal- 鶏ムネ……30g(生)
- 納豆………5g
作り方
- 包丁で鶏ムネ肉をたたきミンチ状にしてから6等分にする
- 納豆をスプーンでつぶし6等分にする
- ①で②を芯にして包み団子状にする
- 小さな鍋に水を1cmほど加え沸騰したところに③をいれて蓋をして3分蒸し煮にする
ワンポイント
鶏肉を丸めるときは手のひらを水で濡らすとお肉が手につくことなく表面が滑らかなお団子に成型できます。
低下カロリーで良質な蛋白質が得られるおやつです。刻んでお湯を加えてスプーンでつぶせば即席スープにも!

シンプル手作りゴハン
材料
体重5kg、運動量中程度の犬の1食分 約145kcal- ごはん………………50g
- 鶏モモ肉皮なし……40g(生の重さ)
- ブロッコリー………15g
- ミニトマト…………1個(15g)
作り方
- 鶏モモ肉は、黄色い脂肪を取り除き、少ない目の水から蒸し湯でにして細かく刻んでおく
- なべに湯を沸かし、ブロッコリーとへたを取り除いたミニトマトを加える
- ミニトマトはすぐに取り出し、皮をむいて細かく刻む
- ③が終了したらブロッコリーも取出しもみじん切りにする
- 下準備したすべての材料をゴハンとませる
ワンポイント
簡単で一時的な手作り食は、食べなれた食品で少な目に作ると消化器問題などを心配することはないので暗視です。
鶏肉を蒸しゆでした残ったスープは、ごはんと混ぜる、またはお湯を少し足して食後のスープにすると口の中もきれいになります。