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【特別企画 第1弾 】ペットの食育(前編) / ペット栄養コンサルタント 奈良なぎさ先生

ペット栄養コンサルタントとしてご活躍されている奈良なぎさ先生に”ペットの食育”に関する特別コラムをご執筆いただきました。
今回は「犬の食育に関する基礎知識」、次回は「猫の食育に関する基礎知識」をお届けします。

奈良なぎさ先生

犬の食育とは?

「食育」とは「健康に良い食事を与えること」と考えてしまいがちですが、農林水産省では『食育とは生きる上での基本で、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てること』と定義しています。
このことを「犬の食育」に当てはめて考えると、それは単に健康に良い食事を与えることだけではなく、犬が健全に生きていることができる食の知識の習得、選択および実践を可能にする「飼い主さんを育てること」といえるのではないでしょうか。

「犬の食育ができる飼い主さん」を目指して”5つの知る”からスタートしてみましょう。

①「食」と「健康」の関係を知る

「食べもの」には生きるために必要な6種類の栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、水)とエネルギーが含まれています。そして、それぞれの栄養素には、からだに対して特徴的なはたらきがあり、これを「生理作用」といいます。
たとえば、便秘には食物繊維を増やしますが、下痢をおさえたいときには食物繊維を減らすといったようなことです。そのため、何をどれだけ、どのように食べるかが健康状態に影響を与えるのです。
まずは自分で食べるものに含まれている栄養素やその働きと健康状態の結果を確かめてみると愛犬への応用がしやすくなります。

②「ヒトに適した食事、犬に適した食事」を知る

ヒトまたは犬に「適した食事」とは、それぞれの「食性にあった食事」です。
「食性」とは、「何を食べるか」ということで、ヒトは雑食、犬は雑食寄りではありますが肉食です。肉食動物は雑食動物と比べ、短時間で消化吸収ができる食べ物が食性に適しています。
そのため、穀類、イモ類、豆類や野菜、果物のように食物繊維やでんぷんを多く含む食品を与えすぎると、栄養吸収障害、軟便や下痢を生じます。食性の違いにより、効率的に消化吸収できる食品は異なるのです。
異常が起きる場合は量を減らす、与えるのをやめるようにしましょう。

③「どれだけ与えてもいいのかを」を知る

ペットフードやおやつをどれだけ与えてもよいのかは、体重ごとの給与量が表示されているため目安となる量が分かります。
しかし、野菜や果物、肉などの一般食品の目安量が分からないため、与えすぎてしまうことが多いようです。
与えすぎの目安はやはり排便状態です。野菜や果物の与えすぎは黄色い軟便に、肉の与えすぎは黒っぽく臭い軟便になります。
良かれと思って与えた食べ物で健康を害しては意味がありません。排便状態に異常がない程度にあげるようにしましょう。

④「食べたものがからだにあっていたのか」を知る

犬に適した食べ物であったとしても、今までに食べたことのない食べ物は消化不良を起こすことがあります。初めての食べ物は少量で与え、翌日の排便状態を確認。排便状態に問題がなければ量を増やしてあげてみます。食べてからおなかがゴロゴロする、嘔吐、下痢などを起こす場合はその食べ物が体に合っていないので与えないようにしましょう。

⑤「食の引き算」を知る

健康を考えるか犬さんほど「足し算の健康管理」をする傾向が高いように感じます。栄養素は不足でも過剰でも健康障害を生じるため、同じ目的のサプリメントなどを複数併用した結果、期待した効果が得られないばかりか軟便や下痢、食欲不振を生じているケースがみられます。
使用目的を明確にし、同じ目的のものは一つに絞る、効果のないものは除去するといった「引き算の栄養管理」で本当に必要なものが見えやすくなります。

まとめ

食育には、食べるものだけでなく、体から排泄される便や尿のチェックも大切だということが分かっていただけたでしょうか?愛犬が安心してその尊い命を預けることができる食育上手なパパやママを目指してください!