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わが子の将来を考える|第9回

猫のシニア期について:後編
気をつけたいシニア猫の病気

後編では猫のシニア期・ハイシニア期に気をつけたい病気と、シニア期を迎える猫のために注意したいことを紹介いたします。

高齢・老齢期に気をつけたい病気

ここからは、シニア期、ハイシニア期に気をつけたい病気を確認していきましょう。
まず、シニア期の猫では、嘔吐、下痢、胃腸炎の他、慢性腎臓病などの病気にもかかりやすくなるため、要注意です。

◎慢性腎臓病(腎不全)

猫の慢性腎臓病(腎不全)は、腎機能が徐々に低下していく進行性の病気です。
高齢の猫によく見られ、10歳以上の猫の約30~40%がかかると言われています。
残念ながら、腎臓は組織が一度壊れると元に戻すことはできない臓器です。
急性腎臓病は早期発見できれば回復することもありますが、慢性腎臓病を治す治療はありません。

治療は残っている腎機能を長持ちさせて、病気の進行を遅らせることが中心になります。 腎臓に負担をかけない低タンパク・低リンの食事を与える食事療法や、場合によっては投薬、透析などが行われます。

▶慢性腎臓病の主な症状

  • 多飲多尿
  • 色の薄いおしっこをする
  • 便秘
  • 嘔吐、下痢をしている
  • 体重が減った
  • 元気がない
  • 口臭がひどくなった
  • 被毛にツヤがなくなった

一見すると老化と変わらない特徴ではありますが、その裏に慢性腎臓病が隠れている可能性があることを覚えておきましょう。

また、13歳以上の猫の約2割で、「甲状腺機能亢進症」という疾患が見られると報告されています。
猫の「甲状腺機能亢進症」とは、首の所にある甲状腺という組織から、過剰に甲状腺ホルモンが分泌されることにより、体に様々な障害をもたらす病気のことです。
猫が急によく食べすぎるようになった、食欲が旺盛になったというときには注意が必要で、特に食べているのに痩せてきた、というような場合には、甲状腺機能亢進症や糖尿病、認知症など病気が隠されている可能性があるとされています。

他にも、

  • 関節炎(関節に痛みが出てきた)⇒高い所に登れなくなる
  • 若い頃には上手に吐けていた毛玉が吐けなくなった⇒食欲がなくなる原因にもなる
  • 肥満⇒運動量が減って体重が増えると関節への負担も増える原因となる
  • 視力と聴力の問題⇒物にぶつかることが増えた、反応が鈍いといったことが見られる
  • 歯周病⇒歯抜け、歯根部分で歯が溶けるといった歯肉疾患などの歯の問題

などの問題が挙げられます。

また、高齢になると出るのが「認知症」です。
しかし、猫では15歳程度で認知症症状を疑わせる行動をするものはとてもわずかで、18歳くらいから認知症が見られるようです。
猫の平均寿命が12~18歳と考えると、多くの猫が認知症になる前に何らかの病気で亡くなってしまうと言えるでしょう。

シニア期を迎える猫のために

ご紹介してきたように、シニア期・ハイシニア期を迎える猫たちは、様々な問題を抱えるようになります。
まずは定期的な健康診断を受けることで病気の早期発見、早期治療に努めること。
身体機能の衰えから、それまで出来ていたことができなくなってもくるため、例えばキャットタワーであればステップの段差を低くしてあげたり、食事も、口腔内の状況に合わせてウェットフードを取り入れてみたりすると良いでしょう。

また、高齢になるともともと少なかった水分補給量がさらに少なくなることがあります。
このことが腎臓へさらなる負担をかけることにも繋がります。
水は新鮮なものを用意すると同時に、冷たい水ではなく温いものを用意したり、いつも寝ている場所やリラックスすることが多い場所の近くに水飲み場を用意したりするなど、あまり動かなくても水分補給できる環境を整えてあげると良いでしょう。

固いごはんを食べにくくなってしまった猫に与えるウェットフードは、水分補給という点でも最適なごはんでもあります。
ぜひ取り入れてみてください。

私たちの気づき一つで、シニア期・ハイシニア期の猫たちの生活はがらりと変わります。
健康に長生きしてもらうためにも、年齢にあったフォローをしていきましょう。

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佐藤 麻衣氏プロフィール

一般社団法人 全日本動物専門教育協会
動物介在福祉士 教師
家庭犬訓練士 教師
SAE認定 犬猫行動アナリスト 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士 専任講師
SAE認定 愛玩動物介護士アドバンス 専任講師
SAE認定 犬の健康生活管理士 専任講師

長年動物の専門学校で教鞭をとり、犬のトレーニングや動物介在福祉活動などに従事。
現在は専門学校や大学、国内初の官民協働PFI刑務所の職業訓練プログラムに於いてトレーニング技術を教え、一般の飼い主に向けても資格取得に向けた講座やペット防災など様々なセミナーで活躍。